第43話 シャワーと下着の日

 暑い日が続く中、今日もトキとツチノコはパークパトロールとしての仕事に精を出し、汗だくになって帰宅した。外でかいた汗が乾かない間に浴室に隣接された脱衣所に移動する。

 手を洗ったり腕時計を外したりと、帰宅してからの諸々を済ませながら軽い会話を交わす。


「シャワー、どっちが先にします?」


「ぐちょぐちょで気持ち悪いから早く浴びたいな……」


「それならツチノコ先でいいですよ?」


「いや、気持ち悪いのはトキも一緒だろ?」


 二人ともそれぞれの作業をしながら会話していたのでそれまで目を合わせていなかったのだが、ツチノコの一言にトキが思わず声の主の方に向く。ツチノコは逆にそれが不思議で、きょとんとした顔を返す。


「……一緒にってことですか?」


 二人のお風呂はいつも一緒である。とはいえ、シャワーが二つあるわけではない。いつもだったら片方が先に流して湯船に入り、もう片方はその後でという形になる。しかし、シャワーを浴びるだけで湯船に湯を張っていない場合はそうもいかない。普通に考えたら順番である。


「アパートの時にもあの狭いシャワールームで浴びてたから大丈夫じゃないか?」


「あの時こそ大変だったじゃないですか!二人でぎゅうぎゅうになって……」


「まーまー、あの時も楽しかったしいーじゃんいーじゃん」


 ツチノコは笑ってみせるが、トキはまだ乗り気じゃない様子。トキとしても嫌なわけではないが、ちょっとした疑念がある。


「えー……ツチノコ、また私のことペロってしたりとかしませんか?」


「……ペロ?って……?」


「ほら、昨日、『トキの汗おいし』って」


 トキが昨夜の出来事を思い浮かべながら、赤面する。ツチノコもストレートに夜のことを掘り返されて恥ずかしくなってくる。


「……」


「……」


 ツチノコがそそくさと服を脱ぐ。下着姿になってから、勝手にトキの服もスルスル脱がせていく。ぽいぽいと下着も洗濯機に放り込み、トキの手を引いて浴室に入り、ドアを閉める。この間約一分。トキが「あえあえあえ」と抗議する暇すら与えない。


「ほ、ほらツチノコ?そんなに近づくとヌルって」


「私は気にしないから大丈夫」


「わ、私もツチノコだからいいですけどぉ……」


 シャーっと、身も心もさっぱりさせました。








 そんなわけで汗を洗い流し、背中の水気をお互い拭き取ってから汗でびちょ濡れになった下着の代わりに新しい下着を着るというとき。

 下着はそれぞれ別にして保管してあるのだが、トキが今日取り出したのはツチノコが見慣れないものだった。


「トキ、そんな黒い下着持ってたっけ……?」


 真っ黒で、レースがかかっている下着。映画化した某RPGの「えっちなしたぎ」を想像していただくとわかりやすいかもしれない。


「この間買ったんです!」


 嬉しそうにその下着を着用し、ツチノコの前でくるくる回ってみせるトキ。ツチノコはその様子をまじまじ眺め、顎に手を当てる。キリッとした顔つきに良く似合うポーズだ。


「トキ」


「はい?」


「……そんな格好してると、私が持たない……」


 かっこいいポーズのツチノコの顔からは鼻血が一筋垂れていた。


「ふふ、そんなに刺激的でした?」


 すり、とトキがツチノコに擦り寄る。ツチノコはまだ何も着ていないので、トキの素肌とそれを僅かに隠す薄っぺらな布地の感覚がよく伝わってくる。


「ほら、このパンツとかどうですか?実はひとサイズ小さいのを買ってしまったみたいで……こんな言い方もなんですが、ちょっと食い込み気味でして」


 その僅かな布地をツチノコの太ももに擦り付けるトキ。ツチノコが申し訳なさそうに俯き、そのトキに訊ねる。


「えっと……初めて着てて楽しそうなところ申し訳ないんだけど、ひっぺがしていい?」


「へ!?ダメですよ、まだ夕方なんですからオイタなんて!」


「じゃあ脱がさないから、染みつくっちゃってもいい?」


「こ、コラ!だいたい昨日の今日なんですから、そんな……あ、ちょ、ご飯の支度だけでも先に……!」


 昨日に引き続きちょっとした臨時運行、これがH常です。

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