第29話 プレゼント相談の日
※久々の更新ですね!!今後は更新頻度が上がると思われますが、四月から高校生なので、もしかしたらかえって忙しくなってしまうかも・・・!?んひぃ・・・とりあえずよろしくお願いします
三月も残すところ一週間となった、ある日のこと。
トキとツチノコは、いつも通りパークパトロールとしてパークの見回りに精を出していた。
「暖かくなってしましたね〜、もうすぐ桜でしょうか」
「日も伸びたしな。桜が満開になったら、花見しないか?」
「いいですね!」
そんな話をしながら、空から地上を見て回る。今日はパトロールの人数が少なく、回る範囲が広くて大忙しだった。
夕方になって、二人でパトロール事務所に帰ってくる。家に帰る前に、今日の報告をしなくてはいけないのだ。
「はぁ〜、今日はなんだか疲れちゃいました・・・」
ツチノコがホワイトボードに、帰ってきた時刻を記入している間に、トキは事務所に置かれているソファにボスンと腰掛けた。ぐったりと姿勢を崩している。
「たくさん飛んだもんな、お疲れ様」
「ごめんねー、ライオンさんが急用だなんていうものだから・・・」
ロバが眉をひそめた笑いを見せながら、両手を合わせてトキ達に謝る。ツチノコは「大丈夫大丈夫」と答えたのだが、トキはふにゃんとしてしまっていた。
「はい、トキちゃん」
トキの座っている前に、淹れたてのあたたかな紅茶を出すロバ。その隣に、まだ座っていないツチノコの分も用意される。パトロール隊員たちへのこういったささやかなサポートもロバの仕事である。
その向かい側に、もう一つティーカップが置かれる。ロバも、トキとツチノコに合わせてひと休みするということなのだろう。
そうして、先に座っていたトキも含めて三人でテーブルに着く。それと同時に、トキの頭がツチノコの肩にかくんと乗っかる。
「あれ?トキ?」
ツチノコの呼びかけに返事はない。代わりに、すやすやと寝息を立てる音だけが返ってきた。ロバからみたら、そのトキが目を閉じているのがわかる。
「ん〜、トキちゃん寝ちゃってるね。ロバは平気だから、そっとしておいてあげたら?」
ロバがそう笑うので、ツチノコも「そうする」と笑って返す。しかし、そっとしておくと言ったのにツチノコはそのトキの頭に手をかけた。そのまま、肩からずるりと落としてツチノコ自身の太ももにぽすんと乗せる。ツチノコは一切トキの方を向かずに、一瞬にして膝枕の姿勢を作ってのけた。おそらく慣れているのだろう。
(トキかわいい・・・)
トキはそんなことが起きたのを知ってか知らずか、気持ちよさそうな顔を浮かべていた。
「ごめん、トキの分も紅茶淹れてくれたのに」
「ふふふ、いいのいいの」
頬に手を当てて、もう片方は手首からお辞儀するようにさせながらロバがにこやかに返す。そして、目線をツチノコの膝の上のトキに移して、また微笑んだ。
「膝枕なんていいなぁ、いつまでもラブラブだね」
「最近は何をするにも『積極的すぎ!』って叱られるんだよ。『ありがたみがなくなっちゃいます!』なんて言うんだから・・・」
「あんまり人の前で惚気けるのもよくないですよ?ロバは平気だけどね」
「どちらかと言うと愚痴のつもりだったけど・・・いや、愚痴でもないんだけどさ」
「ロバには愛し合ってますアピールにしか聞こえなかったけど・・・?」
そんな会話をしている途中にも、ツチノコはトキのおでこをさすったりしていた。羽を弄んでみたり、頬をつついたりと完全に膝の上の猫状態である。途中から頭部に飽き足らず、ふさふさの尻尾をもふったりしていた。
しばらく、他愛もない話題で談笑したあとにツチノコがロバに相談を持ちかけた。内容は・・・
「もうすぐトキの誕生日なんだ」
「あら、そうなの」
「プレゼント、何あげたら喜ぶかなぁって・・・」
「ああ、なるほどね?」
そんなわけである。
トキの誕生日は4月2日。この間の節分で判明した。ツチノコも4月2日である。流れでその事をロバに説明したら、
「すごーい!運命!?」
と、トキと同じような反応をしていた。
そして、本題に入る。
「私さ、洞窟暮らしが長かったからプレゼントとかよくわからなくて・・・女の子って何もらえば喜ぶんだ?」
「それ男の子が言うセリフだと思うけど。そうねぇ、ノコッチ自身でも渡しとけば?」
「それクリスマスにやった」
「えぇ、やったの・・・?どうやって?」
ロバが困惑している。というより、若干引いている。
「こう、体にリボン巻き付けて・・・」
「裸で?」
「えっ、うん。あ、違うんだよ!?サンタに、『恋人を喜ばせるものが欲しい』って言ったら、これがそうしろってメモ書きが・・・」
(サンタさんが来るのか・・・それトキちゃん本人じゃないの?)
と、ロバは内心そう思ったが、読者の皆様が知るようにトキサンタではない。独り身の美人飼育員がエロサンタの正体である。
「じゃあ『私がプレゼント♡』作戦はナシね・・・逆に、ノコッチがあげたいものはないの?」
「指輪」
「なるほど、それはキツイね」
即答するツチノコに、ロバもテンポよく返す。
「私のお小遣いじゃ足りないよ・・・」
「お給料の管理してるロバに言われると悲しくなるからやめて?」
二人で唸ってみるも、誕生日プレゼントのいいあんは出てこない。相談される側のロバも、まともにプレゼントを渡したことはない。親友のピーチパンサーにsmグッズを渡したくらいだ。
「香水とかは?」
「トキはトキの匂いがいい」
「うーん、変態ちっく」
こいつも大概である。
その後、トキが自然と目を覚ましたのでツチノコによるプレゼント相談は幕を閉じた。トキが何の話をしていたのかと訊いてきたので、ロバがツチノコの惚気を聞いていたと答えていた。トキは「もー」と言いつつ、めちゃくちゃ嬉しそうな顔をしていたそうな。
家に帰ってきてから、トキがまた訊いた。
「本当に私の話してたんですか?」
「そうだな、トキの(為の)話してた」
「もー、あんまり人の前でそういう話しちゃダメですよ!」
「その、流れで」
そうツチノコが答えると、トキがきゅうっとツチノコのことを抱きしめた。その耳元で、こそりと。
「うれしい」
その日のお風呂は、ツチノコがちょっぴりイタズラした。
本日も平常運行、これが日常です。
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