最高の1日

寝起きの狼

プロローグ

 1日目 1回目


「............はぁ」

 ラケットをベンチに置き、ため息をつく。タコができた手のひらが、ジンジンする。今日は3月9日だから、最後の大会まで、あと6日しかない。6日しかないのにまだ上手くいかない。今まで教えてくれたコーチのためにも、頑張らなくちゃいけないのに。暗くなり、球も見にくくなってきた。

「最後にもう1回..........」

 苦手なボレーが上手く打てない。

「あぁ!」

 今日はもう、どれだけやっても上手くいかない。

 あぁ。大会まで、6日しかにのに。


 自分が納得するまで、今日がずっと続いてくれればいいのに。



「............もう、どうすればいいんだろう」

 結衣から告白された。結衣は、昔からよく遊ぶ友達で、仲が良かった。それなのに、急に「付き合ってほしい」なんて言ってくるから............。

 どうすればいいんだろう。女の子同士が付き合うってどうなんだろう。

 でも結衣を傷つけたら、今までみたいに遊んだり、話したりできなくなっちゃうのかな。

 返事は6日後でいいって言ってたけどなぁ。私が困った顔をしちゃって、結衣悲しそうな顔してたな。

 昔よく遊んだゲームみたいに、何回も同じところをやり直せたらな。


 自分が納得するまで、今日がずっと続いてくれればいいのに。



 そして、私たちは同じ日を繰り返すことになる。

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最高の1日 寝起きの狼 @neokiookami1

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