第6話 〜side story〜 No.1

 「見つけた。」

 桜散るのが見える教室、座っていた。

小さな桜をみていると教室が騒がしくなった。周りを見ると男子が入ってきたのだ。

このクラスは女子と男子の比率は9:1なため男子が来ると女子は敏感に反応する。

よく見ると見知った顔だった。懐かしく、悲しい思い出が同時に蘇って来る。

何年ぶりだろうかな。涙が溢れそう。彼が欲しくてたまらない。早く私のものにしたい。

彼がこちらを向いた、けれど彼は私のことを気づいていなかった。それどころかため息をついている。

もう何年も会ってないんだしょうがないか・・・

いつか声をかけて私のことを思い出してもらわなきゃ


学校は楽しくない。仲良くなった女子も常に周りの子の悪口ばっか。このまま行けば私はクラス順位で下っ端だろう。そんな生活を3年間するのはいやだ。せめて彼と仲良くなりたい。

思っているとリュックを背負った彼が私の前を歩いて居た。

彼に話しかける唯一のチャンスだったため思わず手と足が出てしまった。

「おはよう!

「お、おはよう。」

 久しぶりにまじかに見る彼の顔はやっぱり素敵だ。けれど彼は私のことがわかって居なかった。少し悲しかったが彼と挨拶だけだけど前より男っぽくなっていてかっこよかった。早く欲しい。

教室へ小走りした。

先生が来て、自己紹介が始まった。

彼が一番初めで少しおどおどする姿はとても愛らしくとても可愛かった。

どうでもいい女子たちの自己紹介が次々と進み、私の番まで回ってきた。席を立つと彼は私のことを凝視していた。

「中村みゆです。趣味は読書です。」

彼の方をみて見ると口を開けて頭の上にはハテナマークが浮かんでいた。今度こそ、忘れられないように彼に笑いかけた。

自己紹介が終わり10分間の短い放課になった。

「なになに、もしかしてあの彼を狙ってるの?」

後ろにいた話したこともない女子に話しかけられた。正直どうでもいいが最低限の交流は必要だろう。

「そうだよ、彼は昔から私のものなんだよ」

女子にそう答えると、少しにやけ何も言わなかった。彼の方をみて見ると誰も近く女子は居なかった。それならば私が彼をもらってもいいはず。私が彼と話しても問題ないはずだ。

一直線に彼に近づき、彼だけをみて居た。

「ねぇ、私のこと覚えてる?」

まず私のことを覚えているか知ってもらう必要がある。けれど彼はまたわからないような顔をして少し間が開いた。

「い、いや、俺は初めて会うけど。」

「流石に覚えてないか・・・これからよろしくね。」

やっぱり覚えてなかった。私は昔あんなに彼のことを愛したのに忘れられて居た。だけど今、また彼を欲し、手に入れるチャンスがあるんだこれからまた一から頑張ればいいんだ。

自分の席に戻る途中だった。周りの女子の半分はにやけており、その半分は鋭い視線で私のことを睨んでいた。これが女子の本心だ。


やっぱり学校は楽しくない、そして暑苦しく女子たちが鬱陶しい。

環境と環境が私を日々苦しめて行く。部活動ではせっかく彼と同じ部活だというのに目障りな女子とずっと話している。唯一の楽しみといえば9分間の彼と話す放課だけだった。

 家に帰っている途中にあることに気が付いた。いつもリュックのポケットにスマホが入っているはずなのに今、手を入れて見ると何もなく、恐らく部室に忘れてきたのだろう。

最終下校時間が近いため一生懸命に自転車を漕いだ。そして校門に着く前に彼と忌々しい女が手を繋いで歩いて居た。うっすらと会話が聞こえ聞こえるたびに胸が引き締まるのを感じてしまった。

 「その、あなたは『また明日』の意味を知っていますか?」

 「わかんないな。どういう意味なの?」

 「それはですね、『また』って言うのは次も会おうねって言う意味があります。だから明日絶対に会おうねって言う約束の言葉でもあるんですよ」

 「なら、君もちゃんと明日、俺とあってね」

 「はい!」

邪魔・・・

 「じゃあ、また明日。」

 「はい、また明日。」

 邪魔・・・

 なぜあのダサくて地味な女なの、彼の隣は私だけの場所なのにあんな女に取られるなんて信じられない。

けれど彼の中に存在して居ない私は無力であの女に負けた敗北感が私の心を締め付ける。

部室に行きスマホを手に取るといい考えが思いついた。彼と彼女を壊してしまえばいい、全て無くして学校に居られなくすればいい。

「ねぇ、いい情報手に入ったよ、彼と2組のあの地味な奴が付き合ってる。」

「へぇ、彼はあんな趣味だったんだね。」

「みんなでさ、あいつらを潰さない?」

「潰すって言ったってどうやって潰すのだ」

「あんたはとりあえずみんなに広めてて、あとは私が殺る」

「そうか、手伝うよ。」

あの女が悪いんだ、私の玩具を奪って独り占めしているのが悪いんだ。殺してやればいい。

真っ黒い感情が溢れて来る反面、彼を欲する感情が消えていった。

「そうそう、彼とあの女が土曜日、モールでデートするみたいだよ。」

「いい情報ありがとう」

相変わらず情報屋の仕事は早い。これなら土曜日に殺れる。

 けれど、どうすればいいだろう、苦しめて殺す、一瞬で殺す。あいつにはどちらがお似合いだろうか。

 そうだ折角、殺るんだから彼も苦しめばいい。全部、無くしてしまえばいいんだ。

 確かモールに行くには電車が必要だ、そして帰りも電車なはずだ。その時に落としてしまえばいい。

「あんたも来るの?」

「まぁ、様子見くらいでついて行く」

「じゃあ、駅で14時集合で。」

「了解。」

やっと楽になれるんだね。


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