第2話 原点

 ついに俺は新しい人生を選んで進む道を歩くことにした。

俺はここで上手くやっていけるのだろか。

楽しくまともな生活を送れるののだろうか。

話の合う人と仲良くなれるだろうか。

俺はバラ色の青春を送れるのだろうか。

そういった期待と不安が絶え間なく頭の中を交差している。

 「頑張るか」

 小声で声をだし、自分に言い聞かせて落ち着いて新しい学校生活を頑張ることに決めた。

 中学の頃ほとんど学校に行かず家で一人で2年間過ごしていたのだ。社会不適合者であり誰とも仲良くなることができない俺には学校に行く資格も理由もない。誰も信じることができない俺にとっては学校と言う監獄は地獄への片道切符でもあり場合によっては天国へのエスカレータでもある。まさにギャンブルをしている気分だ。

 「クラスが全く違うなぁ」

 クラスの一覧表を見ているあいつが残念そうにこちらを見て言った。

 「しょうがないだろ科が違うんだからそりゃクラスも違うさ」

 流石にあいつと同じクラスではないのは残念だ。

 だがあいつは残念そうな顔から一変して今まで以上な笑顔でこちらを向いてきた。

あいつにとって何が楽しみで何をそんな顔にさせるのか俺には全くわからなかった。

 「お互い新しい青春送ろうぜ!」

 生き生きとしたあいつの顔を見て俺は自分のクラスへ向かおうとした。

あいつとは下駄箱かの場所から違い、校舎の場所まで違う。廊下を歩いていると前後には女子の集団しか歩いておらず、男子は全くいなかった。

クラスにつくと女子しか座って居なくて、自分の場違い感がすごかった。生まれてから女子とはあまり話したことがなくどうやって仲良くして話せばいいか全く思いつかない。考えるのは後にし、自分の席に座ることにした。席は窓側の一番前だが今いる場所から一番遠くそこまで歩くのが緊張してしまう。

 平然を装い自分の席に歩いていると視線が刺さり不安しかなかった。

 俺は席に着き周りを少し見渡したら、何故か周りの目がこっちに来ていた。男子が少ないということから目立つのだろう。

 「はぁ」

これから始まる学校生活による不安がため息として重たく口から溢れた。

 式典も終わり特に何事もなく今日という一日は終わった。

久しぶりの学校だったのか緊張のせいかわからないが家についた瞬間ベットへ飛び込んだ。


 早起きはつらい、今まで適当に起きていたせいか憂鬱な朝だった。そんなことを考えながら身支度を済ませ学校に向かうことにした。

 自転車を止めて教室に向かおうとすると後ろから一人の女子から声をかけられた。

 「おはよう!」

 全く見たこともない女子が俺の背中を叩いて挨拶をしてきた。まだ学校が始まって2日目で話したことも会ったこともないのに話しかけてきて驚いてしまった。昨日は式典だけで自己紹介はしていない。どうやって俺のことを知ったのか不思議だ。

 「お、おはよう」

 俺は恐る恐る挨拶をすると女子はこっちを向いて可愛げに笑いすぐ下駄箱の方へ行ってしまった。

 挨拶をしてきた女子のことを考えながら教室へ向かっているとあっという間に着いてしまった。クラスを見渡しても、さっきの子は居なかった。結局、誰かわからなかった。

 しばらく経つと先生が来てHRを始めた。

 先生は今日一日の日程を話し終わると一人ずつ自己紹介をしてくださいといった。

 確かにクラスの人と仲良くなるには名前は知っておかないといけない。けれど俺は今日、自己紹介をするなんて全く考えてなかった。前の人と同じことを言おう。

 次々と自己紹介が終わり、ある人の声が耳にとまった。

 「中村みゆです。趣味は読書です。」

 この声は朝挨拶をしてきた女子に似ていたのだ。その女子の方を見てみると俺の方を向いていて、またあの笑顔をして座っていった。

 クラスにきた時にはあの子はいなかったはずなのに何故か今はこのクラスで立って自己紹介をしている。

あの子のことをずっと考えていると全員の自己紹介が終わり短い放課になった。

 流石に3人しかいない男子に近寄る女子はいなかった。女子の中でもなにかめんどくさいことがあるのだろう。

 そう思っていたらある一人の女子が近づいてきた。

 他の男子に用があるのかと思ったが一直線に俺の所に来て話しかけてきた。

 「ねぇ、私のこと覚えてる?」

 全く意味が分からなかった。この子のことは全く見たことがなく、声を聞くのも今日が始めてだった。いつどこであったか考えても答えが出なかったため、なんて言おうか困ってしまった。

 「い、いや、俺は初めて会うけど」

 「流石に覚えてないか・・・これからよろしくね」

 少し寂しそうな顔をすると今日の朝のような綺麗な笑顔をして挨拶をして去っていった。

 彼女が去って行く間、過去の記憶を遡って見たが全く記憶がなく結局、誰かわからず、また終わってしまった。

 考え事が終わり気づくと周りは静かで視線が全部俺の方へきていた。にやけている人もいれば口を少し開けて驚いている人もいた。

それから学校が終わるまで周りの視線が気になってしょうがなかった。


 「今日から一週間、体験入部の期間です。この期間に部活動を決めるように」

 この学校は部活には必ず入らなければならない。正直、部活はやりたくない。できるだけ楽な部活に入ろうと探したが楽そうな部活は全くなく消去方で演劇部に入ることにした。

 授業が全て終わり演劇部の体験入部へ行くことにした。部室の扉を開けるとあの子が先輩に入部届けらしき紙を提出している姿を見た。まさか一緒の部に入部するとは全く思っていなかった。 

 「君も演劇部に入るんだね、偶然だね」

 俺に気づいた彼女は近寄ってきて少しわざとらしさに嬉しそうに言った。

 部活の体験入部も終わり、家に帰ろうと駐輪場で自転車を取り出していると久しぶりに聞くあいつの声がした。

 「今から帰るのか?一緒に帰ろうぜ」

 特に断る理由がなかったため俺は一緒に帰ることにした。しばらくの間、特に話すことがなかったのか無言が続いたがつまらないと感じたのかあいつから話が飛んできた。

 「そっちのクラスはどうだ?」

 「女子ばっかだよ、少し居づらいかな。」

 まだ数日しかクラスに居なかったが女子が男子を警戒しているのかとてもいづらい。そして今日、あの子に話しかけられたせいか女子の目線が少し恐怖に思える。

俺が残念そうな顔をしているとあいつは嫉妬しているのか少し怒っている顔をしている。

 「そりゃそうだわな、まぁいいじゃないかハーレムで青春じゃん!」

 確かに女子ばっかで男子が少ないのは男子にとって理想の一つだろう。だが俺はそうには思えなかった。みんないつも一歩引いている感じがする。それをハーレムなんてとても呼べやしない。

 「そんなことよりさ、知り合いいたか?」

 元引きこもりだった俺には知り合いと呼べるような人なんて一人もいない。ましてや女子しかいないのにいるはずがない。

 だが知り合いと聞いて今日話してきた俺のことを知っている女子のことを思い出した。昔からこいつといるから多分知ってるかもしれない。

 「なぁ、中村みゆという女子をお前は知っているか?」

 「いや、知らないな」

 あいつは顔を変えていつもと違った低い声で何かを隠すように何かを守るかのように知らないと答えた。

知らない方がいいのだろうか。それとも聞いた方がいいのだろうか。しばらく悩んだがどう聞けばいいかわからず聞くのを恐れてしまっているのかわからなかったが、そのまま無言で返し、別れ道まで一言も喋らず自転車を漕ぎ続けた。

 次の日、部活動では先輩によるあだ名づけが始まった。名前に関係ない名前など出てき、俺の名前は動物の名前になってしまった。正直、呼ばれても反応しにくいあだ名で困ってしまったが先輩たちは楽しそうにしていたので邪魔するのは悪いと思ってしまった。

「あの・・・」

声が小さく俺が呼ばれたのかわからなかったが後ろを振り向くとメガネをかけており大人しそうな女子が下を向いて立っていた。彼女をみる

と恥ずかしいのか顔を赤くしてさらに下に向いてしまった。

「どうしたの?」

「あの、お、音響の場所ですよね。」

多分、彼女は音響のパートナーを探していたのだろう。あだ名をつける前に軽くやりたい部署を決めた。そのことを言ってるのだろう。それよりも彼女はそんなに話しかけるのが恥ずかしいのだろうか、下を向いていてとても返事を返しづらい。

「そうだけど、君も音響なの?」

「はい、え、えっと音響の仕事について教えるように言われたので、その、少しお時間いいですか?」

先ほどと変わらず、声は小さく下を向いたまま話していたのであまり聞き取れなかったが部署の仕事に付いての話しなのはわかった。

 わかったと返事を返し、彼女の方に付いて行って部署の話を聞くことになった。大方やることは楽で音入れなどをやれば済むようだ。

 話が終わり、無言が続きとても気まずい空間になったまま部活動を終え、そのまま自転車に乗って帰路へ向かった。


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