初恋のち・・・

勝利だギューちゃん

第1話

「久しぶりだね」

「うん・・・」



中学校時代、好きだった子がいた。

小学生でも、低学年の頃は、普通は男女は敵対する。


でも、高学年となると、だんだんと興味がわきはじめる。

それまで、何となく話していた女の子に、それまでとは違う感情がわいてくる・・・


そして、中学になると、確信に変わる・・・


僕は元来、内気な性格だ・・・

なので、自分から人に声をかける事なんて、出来ない。

異性となると、なおさらだ・・・


その子は、天真爛漫で誰からも好かれていた。

引き寄せの法則ではないが、自然と人が集まってきた・・・


とても、楽しそうに見えた・・・


(僕は、邪魔だな・・・)


そう思い、席を外す・・・


そして、想いを告げる事なく、僕は引っ越しをすることになる。

元々、体が丈夫でなかった僕は、地方の田舎に引っ越した。


彼女の事は、青春の思い出として、心のアルバムに閉まっておこう・・・

そう、思っていた・・・


連絡先は、その子はもちろん、誰にも知らせていない。


ただ、引っ越しの前日、クラスでお別れ会を開いてくれた・・・

それまで、仲の良くなかった子たちからも、温かなメッセージをいただいた。


義理とはいえ、嬉しいものだった・・・


田舎は親戚の家に、お世話になっている。

こちらに来て、数年たったが、大分落ち着いてきた・・・


ある日、学校から帰宅した時、女の子の靴があった。

この家には、女の子はいない。


「ただいま」と声をかけると、おばさんが出てきて、

「ゆうちゃん、お客さんよ」と、声を掛けられた。


(誰だろう?)

居間に入ると、驚いた。

まさしく、僕の・・・初恋の子がそこにいた・・・


「久しぶりだね、ゆうやくん、元気だった?」

「うん」

「ごめんね、いきなり訪ねてきて・・・」

「・・・いいけど・・・」

いきなり過ぎて、言葉が出てこない・・・


おばさんに即され、彼女の前に座る。

おばさんが、お茶を出してくれた・・・


「ところで?」

「・・・何?・・・」

「私の事、覚えてる?」

「小内奈美さん・・・だよね・・・」

「正解、ありがとう」

忘れるわけがない・・・初恋の人だ・・・


「でね、本題なんだけど・・・」

「うん」

「しばらく、泊めて」

思わず、お茶を噴き出して、咳き込む。


「だめ?」

「そういうことは、おじさんと、おばさんに・・・」

「許可はもらったよ。後は君だけ・・・」

「えっ?」

「だめ?」

「・・・いいけど・・・」

「ありがとう!決まりだね」

こうして、彼女は泊まることとなる。


「どうしてここが、わかったの?」

「君の両親に聞いたの。『息子をよろしく』って・・・」

「よろしく」

「うん」

奈美さんは、にこやかに笑うだけだった。


それが何を意味するのかをわかるのに、時間はかからなかったが・・・


今でも謎は多い・・・

でも、気にしないでおこう・・・


・・・こんなものかな・・・

説明不足か・・・

まっ、いっか・・・


「あなた、出かけるわよ」

「今行く」

これから、嫁とデートです。


では、行ってきます。


「ゆうや、何してたの?」

「昔の思い出を、ブログに書いてたんだよ。奈美」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

初恋のち・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る