第6話 真実

簡単に言ってしまうと。

いや、簡単には言えないが俺の障害は厄介だ。

何が厄介かと言うと簡単に言えば、俺自身の身体が俺自身のモノでない無い様に感じてしまうのだ。

だから、俺自身は身体の事が、精神の事が嫌いであった。

身体の鈍さなどの点をイジメられるし、だ。

そんな俺はとある不良に絡まれていた、不良の女の子を何故だかその時だけは本気の力が出て救った。

その為と、不良の女の子は俺を好きだと言ってくれている。

俺の学校に転学してくるぐらいに、だ。

更に、その不良の女の子は俺の為に不良の足を洗ったという。

その為、俺はその元不良の少女を見捨てて置けなかった。


「あ、有難うな。今日も.....」


「.....ああ」


家に来たいと言った、三宝を招き入れて。

今に至る。

俺が挨拶すると、唐突に。

何か忘れていたと、三宝は鞄を勢い良くガサガサと慌てて漁った。

そしてハート型の箱を取り出す。

俺は?を浮かべたが、直ぐに外の寒さで気が付いて赤面した。

まさか、だ。

赤くなりながら、三宝はそれを俺に渡してくる。

グイグイと、だ。

髪が靡く。

マフラーに口が半分隠れて、恥じらっている様子を強調している。


「.....お、お返しは要らないけど.....でも、もし良かったらお返しが欲しいな。出来ればだけど。チョコレート、遅いけどな。すまん.....じゃなくて、すまない.....」


「.....い、いや、ってか、どっちだよ。.....ハハッ」


ドギマギする、俺達。

まさかの事に嬉しく思いながら三宝に口角を上げつつ受け取ってそして頬を掻きながら、頭を下げた。

礼儀として下げないとな。

違っているかも知れないけど、俺にとっての精一杯の真心だ。

その事に、三宝は大慌てで反応した。


「.....い、良いって!そんな事すん.....じゃ無くて、しないで!」


「.....それでも一応な。有難う。感謝の気持ちだ」


「.....で、でもな.....うーん.....こ、困る。こ、小っ恥ずかしいから.....」


大慌ての三宝は困惑していた。

俺は頭を上げて少しだけ柔和に三宝を見ながら笑んだ。

そして、三宝にチョコを見せながらはにかんで話す。


「.....本当に嬉しい。俺、女の子からチョコ貰った事はないから.....嬉しい」


「ま、マジで!や、やった!.....嬉しい!」


「.....」


何だろうな。

こんなに喜んでくれるのが嬉しく感じる。

もし、マジで三宝と付き合えたなら幸せなのだろうな。

その様に思いながら。

俺は静かに、大喜びで喜んでいる、三宝を見つめる。

やがて、三宝は俺に向いてそしてピースサインをした。


「.....ま、また作るからな!い、いつでも.....気軽に!」


「.....そうだな。.....また宜しくな」


俺は嬉しそうな三宝にその様に答える。

それから三宝とはそこで別れて。

三宝は静かに帰って行った。

俺はその姿を見ながら静かに受け取ったチョコを見つつ。

上を見上げてホッと息を吐いた。



だが、桜庭が割り込んで来てくれたと言えど。

結論から言って、状況は変わらなかった。

当たり前だが。

だけど、俺に対する妨害行為は無くなり冷ややかな視線だけになった。

その為、多少はマシになったのかも知れないと、俺はリア充を静観しながらその様に思った。

そして、窓の外を見ながら呟く。


「あともう少しで春休みか.....」


まだ来てない、三宝の席を見ながら欠伸をしつつ呆然としていると。

視界に横向きのスカートに、女の子が映った。

俺は目線を上げる。


「何やってるの?冴島くん」


「.....桜庭.....」


桜庭蜜柑。

俺達を救ってくれた、クラス委員。

その桜庭に、俺はいや、特には何も、と、答えた。

桜庭は、ニコニコ笑顔で、そう。

と答えながら。

手を後ろに回した。


「ごめん、えっとね、今いい?新玉さんの事だけど.....」


「.....三宝がどうした?」


俺のクエスチョンマークに。

桜庭はまだ来てない人の前の席に腰掛けて言う。

すると、女の子特有の香りがした。

少しだけ良い香りに、俺は赤くなる。

桜庭からは安心した様な感じが見える。

俺は首を傾げた。


「先ずは、えっとね、有難う」


「.....ごめん、ちょっと意味が分からない.....」


「実はね.....噂だよ?えっとね、新玉さん.....孤立していっていたらしいんだ。だから.....その心に踏み入れる事が出来た、冴島くんに感謝って.....思ってね」


「.....そんなバカな」


まさかの言葉だった。

驚愕する。

まさかだろ三宝が?

そんなバカな。

俺は見開きながら、桜庭を見つめる。

桜庭は少し悲しげな感じで反応を見せた。


「.....聞いた噂。.....事実か分からないから、口にはしないでね」


「.....」


三宝も俺と同じ様に孤立していたのか。

不良ってリア充だと思ってたんだが全てがそういう訳では無いのか。

俺は俯いて、考える。

すると、ドアが開いた。

そして目を丸くした、三宝が。


「.....何やってんだ?おま.....じゃなくて。えっと.....えっと.....」


「桜庭だよ。新玉さん」


「.....あ、ああ、そうだ。桜庭だったな。えっと.....何やってんだ?」


そんな不満げに見つめないでくれ。

俺と桜庭は何もやってないって。

苦笑しながら居ると。

桜庭は穏やかな笑みで手を上げた。


「.....さて。新玉さんも来た事だし。.....冴島くん。また後でね」


「.....ああ」


俺は複雑な思いを抱きつつ、有難うと、答えて。

そして桜庭と別れた。

また後で話そう。

そう、思いながら。

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ふりょ・恋! 〜不良少女と発達障害の俺〜 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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