第5話 桜庭

翌日。

俺の行動が気に食わなかったのか。

昨日より極端にハブられるのが多くなってしまった。

体育の時も、掃除の時も教室内では班決めは全滅。

でも、そんな俺に対して。

三宝は、全然気にしねぇと、俺に構ってくれた。

本当に新妻の様に。


「.....あんな奴らの.....事なんか気にすんな。わ、私は全然大丈夫だからな!」


その様に、話して、だ。

でもな、本当に気になる。

何が気になるかと言えば、簡単に言えば。

三宝も俺と同じ道を辿るのでは無いか、という恐怖だ。

そんな事になって欲しく無いし、そんな事で人生を破滅させるとか俺が嫌だと、将来の事も有るし、と俺はその点とかが気になっていた。

俺は弁当を美味そうに食べて、ニコニコしている三宝に。

周りを見ながら、話した。


「.....三宝。俺達はやはり一緒に居るべきでは無いと思う。.....スクールカーストの上位に帰った方が良い」


「それはごめんだ」


その様に、キッパリと否定した。

いつもだったらどもるのが、どもらない。

俺は顔を上げて、驚く。


「.....あんな奴らと仲良くはしたく.....無い。わ、私は.....お前と一緒に何処までも行くって.....決めたんだ.....だから、足も洗っている。その、わ、私は.....そのお前が好き.....だから」


「.....それは.....その.....うん、いや、嬉しんだけど.....」


俺は目を逸らしながら、その様に呟く。

のだが、その次の事。

リア充がまたやって来る。

このリア充の名前が分かった。

山口悟。

いや、まぁ、どうでも良いけど。

しかし、また困ったな。


「足洗ったんだって?だったら問題無いよね。こっち来ない?」


「.....消えろっつって何度も言ったろうが」


「おお。怖い怖い。.....でもさ、良い加減にしたら?其奴に構ったって仕方が無いって事をさ」


「あ?」


また喧嘩になるのか。

マジで参ってしまうな。

止めないといけない、と思っていると。

女子生徒が立ち上がった。


「.....良い加減にしたら?」


「蜜柑!?」


同級生に止められながら、立ち上がる蜜柑という、その女の子は。

顔立ちがおしとやかに整っていて。

そしてボブヘアーで、目鼻立ちは可憐。

黒縁眼鏡が似合っている。

この子、確か桜庭蜜柑という名前だったと思うが。

クラス委員だよな?


「あ?クラス委員さんよ?何だよ」


「.....ずっとずっと私訴えてたけど、みんな何もしないから。私がやるしか無い。本当に良い加減にしたら?」


「ちょ、蜜柑、抑えて!」


「そういう訳にはいかないよ。この状況は許せないから」


信じられない展開。

俺は驚愕しながら、桜庭を見つめる。

すると、リア充は不愉快そうに桜庭の元に歩く。

そして盛大にため息を吐いて、腰掛けた。

諦めた様だ。

すると、桜庭はこちらに歩いて来て。

そして頭を下げた。


「ごめんね。冴島くん。私.....1年近くも何も出来なくて。先生の対応とかずっと待ってたんだけど何もしないし.....タイミングも無くて、ごめんなさい」


「い、いや.....」


俺は胸元が見えそうになったので目を逸らす。

横では、ジト目の三宝が居た。

桜庭は三宝も見る。

そして、和かに話し掛けた。


「.....えっと、新玉さん。初めまして。桜庭と言います。.....冴島くんに優しくしてくれて有難うね」


「.....ああ?あ.....ああ」


困惑する、三宝。

俺は桜庭にドギマギしながら話した。


「.....な、何で助けてくれたの?」


「クラスメイトだからね.....でも本当にごめんね」


ある意味、俺を助けてくれる人が居るなんて思ってもいなかった。

相当に嬉しいと思ってしまう。

横の三宝は不愉快そうに居たが、桜庭を敵では無いと一応認識したのか。

ゆっくりと顔を向けて、警戒しながらも話した。


「.....有難うな。助けてくれて」


「うん。大丈夫。これから.....何も起こらない様にするから。先生よりも先に、ね」


その様に話して、桜庭は戻って行った。

予想外の事も起こるんだな。

その様に、俺は思った。


「ところで.....冴島。お前.....お.....オッパイはでかい子が好きなのか.....?」


「ブゥ!」


三宝は胸に手を当てる。

思いっきりに吹き出してしまった。

三宝は何を言い出すのかと思ったら。

俺は赤面して、俯く。



取り敢えずは俺を弄る者達は居なくなった。

だが、相変わらずの俺に対する不愉快な目付きは飛んでくる。

男子、女子別の体育の時間も付いて行ってやろうか?と、三宝が言い出すぐらいだった。

断ったけど。

嫌われるのは得意だ。

だけど、人を巻き込むのは不愉快に感じる。


「な、なぁ。今日も家に行ってい、良いか?め、迷惑じゃ無ければだけど」


「三宝は本当に俺の事が好きなんだね」


「あ、当たり前だろ!お、お前は私のヒーローなんだから!」


飯を食いながら思う。

本当に護りたくなる笑顔だ。

だけど、俺は。

駄目だな、本当に俺は。

そう、思って居ると。

桜庭がやって来た。

お弁当を持って、だ。


「一緒に食べない?」


「あ?あ、ああ」


桜庭は。

有難う!と笑顔で言って。

椅子を持って来て、腰掛ける。

自分の評価を顧みず。

こうしている桜庭に俺は嬉しかった。

まあ、三宝は受け付けない様だけど、だ。



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