第2話 再会

俺を心配して、駆け付けた親にはたんまり叱られた。

そういうのに一切、今後関わるなって。

でも、見過ごせなかったんだそんな状態の女の子を。

思わないか?普通。


「.....」


翌日になって問題無いと昨日、病院から退院した俺は学校でボーッとライトノベルを読んでいた。

幸せな時間である。

例えるなら結婚式の幸せの様な。

そういう事があったとは思えない程、ボーッと、幸せに。

そんな中で、あの女の子は無事だったのかな。

その心配がちょっと有るが、警察も居たし、ご両親も来ただろうし大丈夫かと考えて、俺はライトノベルに集中した。

その時だ、教室の誰かが気が付いた様に叫んだ。


「お、おい。あれ.....」


「ゲッ!県内一の不良女!」


「なんでこの学校に!?バイクかよ!」


と、突然、窓の外を指差してザワザワし始めた。

みんな青ざめている。

リア充も何もかも、がだ。

俺は不良とは接点が無い上に、関わり的に問題が無いし、と無視してライトノベルを読みながらクスクス笑っていた。

これだから友達が出来ないのかも知れないけど別に問題は無かった。

ライトノベルとアニメと漫画さえ有れば。

って言うか、不良なんて阿呆らしいと思いながら。


「.....うーん、キリトはやっぱりカッコいいな」


S○O最高。

その様に思ってた、その時だった。

唐突に教室のドアが蹴り破られる様に大きく開き、そして教室内に誰か入ってきた。

流石の俺も音に驚愕して、顔を上げる。

教室内が更に大騒ぎになった。


「.....うぇ!?ふ.....不良!」


「.....他校だろアイツ!」


「な、なんで新玉三宝が!?(あらたまみほ)他校だろうが!?」


まさかの事にヒィィ!と竦みあがる、教室。

サッカー部とか多いんだけど、全員が竦み上がっていた。

青ざめている。

俺は目をパチクリして、S○Oを机に置いて後ろを見た。

その場所に竹刀を持った女の子が立っている。

滅茶苦茶、目付きが悪い、女の子。

しかし、化粧はしてないと思われる、その顔は相当な美人であった。

目付き以外、茶色の髪の毛を独特結って身長は165センチの俺よりも少し低いぐらいの163ぐらい。

これが県内唯一の不良?

不良なんて初めて見たけど。

って、あ、初めてじゃ無いか。

昨日遭遇したし。

なんか悪い記憶が蘇るな。

思っていると、その女の不良は一言、威圧する様に放った。


「この教室に冴島って奴は居るか」


「.....???」


「え?」


「?」


2年A組。

教室を間違えて無ければ冴島はこのクラスに1人しか居ない。

つまり、俺。

当然、直ぐに俺に注目が集ま理、そして、犠牲になれ

と言わんばかりの目で見てくる。

ヒデェ。

って言うか、胃が痛いな。

しかし、ちょっと待ってくれよ。

なんで俺なんだ。

考えていると、男子生徒が1人俺を指差した。


「冴島ってそこにいる奴だけど.....」


茶髪の格好良いリア充が呆気なく俺を指差しやがった。

クソ野郎だな。

思っていると、その三宝という女が。

俺の元へやって来て。

そして椅子に腰掛けている、俺を見下ろして来た。

何かを差し出してくる。

驚愕した。


「.....ちょ、な.....何?」


流石の俺も、突如、現れた他校の不良生徒にタジタジであった。

カチコミっすか?

考えながら居ると、三宝は受け取れ早く。

と言わんばかりの目付きで。

布に包まれたそれ、を渡してくる。

俺は静かにそれを受け取る。

何だコレは?

弁当?


「.....お前が冴島か。ちょっと付き合え」


「.....なん.....え?」


弁当の事すら考える暇が無く。

俺は立ち上がらされて。

そして、胸倉を掴まれたまま引き摺られる形になった。

どういうこった。

ちょっと待ってくれマジで。



そのまま2階から3階に上がり連れて来られたのは屋上だった。

俺はその場所で、三宝に萎縮しながら聞いた。

どう言う事なのかさっぱり分からない。

もしかしてカツアゲだろうか。

俺は思う。


「あの、ちょっと済まない、どういう事か.....聞いていい?」


言葉の羅列がおかしいが、これが今話すので精一杯だ。

すると、三宝は竹刀をゆっくり、地面に置いた。

ビクッとする、俺。

すると。


「.....その.....えっと.....」


赤くなりながら、モジモジすり、三宝。

何か、言いたげな感じで上目遣いで俺を見て。

ちょっと待って、何だ?これ?

俺は?を浮かべる。

すると、次の瞬間、とんでもない言葉が聞こえた気がした。


「えっと、私と恋人として付き合ってくれないか?」


「.....」


ちょっと待ってくれ。

いや、さっきからちょっと待ってくればかりなんだけどさ。

何か、聞き間違えなのだろうか。

俺は眉を顰める。

頭に手を添えてみる。

今何と言った?この子は。


「.....あ、えっと、え?何で?」


「.....駄目.....か?」


「.....」


何だこれは。

カツアゲかと思ったら予想外だ。

俺は???を浮かべた。

何で突然、やって来た他校の不良がキモオタクに対して告白してるの?

ちょっと意味が分からない。

ヤバい、マジで分からないよパトラッシュ。


「.....駄目って.....言うか.....な、何故に俺.....」


「.....えっと.....お.....お前が好きだから.....だけど.....」


「.....なぁ!?」


日が当たる。

この子、かなり赤面しているのが分かる。

いきなり何を言ってんの?

ラブコメなんて無いと思ってたのにラブコメみたいな!

いや、本格的に意味が分からない。

目の前の女の子は凄い可愛いし、ちょ、え?

あり得ない。


「.....俺を好きになる理由がそもそも.....思い当たらない。どう言う事なのか?」


「は、はぁ?.....えっと、あ、アンタ.....私を救ってくれたじゃん!命懸けで!」


「.....???」


駄目だ、全く意味が分からない。

俺はそんな.....あ。

あ、あー!


「.....もしかして、昨日の.....あの不良に、はだ.....」


「そ、それ以上言ったら殴る!おも、思い返したら結構、恥ずいんだから.....」


「.....す、すまん」


体を艶かしいように隠しながら赤く三宝は俺を見つめる。

潤んでいる、乙女の目。

本気の目だった。

まさかそんな馬鹿な?

俺はこの子に格好悪い姿しか見せてない。

それだけで惚れられるなんて有り得ないと思う。


「俺がそれだけで惚れられる理由が.....格好悪い姿しか見せてないだろ」


「それでも嬉しかったんだ!私は.....本当に!」


その様に、三宝は叫ぶ。

嘘だろう。


「.....しかし、何でこの学校が.....」


「.....た、大変だったけどな、お、お前があまり目立たない存在みたいだったから.....でもツテを辿って此処まで来たんだ」


「.....そこまでして?嘘でしょう.....」


「う、嘘だったらこんな事.....しない.....わ、私が本気で惚れた男に.....こんな事はしない.....だからお願いだ。私に付き合ってくれ」


俺の胸板に。

三宝が手を押し付けて来た。

それから、俺の背中をキュッと抱きしめてくる。

俺は驚愕して、心臓がバクバクなった。

ヤバいこの子。

マジヤバい。

ちょっとマジで惚れちゃいそう。

だけど。


「.....無理だ」


「.....え.....え?」


「俺は君とは付き合えない」


俺は俯きながら答える。

三宝は予想外の回答だったのか、慌て始めた。

え、え、と言っている。

あたふたしている。

愕然としていた。


「.....な、何でさ?えっと.....わ、私の事.....嫌い.....?」


「.....違う。そうじゃ無い.....」


「.....じゃ、じゃあ、な、何で?」


「.....俺は君とは付き合えない理由がある」


そうだ、俺は付き合えない。

病気持ちだから、この子に苦労させてしまう。

だから、無理だ。

どうしてもそうしか考えられない。

俺は日差しを受けながら、そう、考えた。


「.....俺は実の所、発達障害が有る。だからその.....君に相当に多分、迷惑を掛けるから.....ごめん」


「.....そ、そんな事.....気にしないぞ!私、本気でお前の事が.....好き.....」


「.....ごめん。そんな事、で済まされる問題じゃ無いんだ」


俺は三宝の手を退けて踵を返した。

そして、顔だけ向けて、話す。

その言葉を。


「.....早く自分の学校に帰った方が良いよ。ここ別の学校なんだろ?」


その事を、だ。

三宝は呆然として、俺を見つめていた。



因みに、弁当はと言うと。

卵焼きも絶品。

凄い美味しくて。

奥さんにしたら最高なんだろうな。

って感じがした。













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