第9話 メールの中身と感想と
§24
懐かしい夢を見ていた気がする。
目覚めつつある中で感じる違和感。
何かベッドが狭い感じ。
右手をちょっと動かすと何かに触れる。
布団では無く柔らかくて温かい感触。
いつもと違う匂い。
しばらくぼーっとした後、俺は気づいた。
何が起きているかを。
静かに静かに安全距離を取ってベッドから出る。
立ち上がってしっかり確認。
俺の横で千咲が熟睡していた。
おそらく夜中にやってきて俺のベッドに入り込んだのだろう。
でも俺が熟睡していて反応が無いのでそのまま一緒に寝てしまった。
その辺は大体想像がつく。
俺は非常に寝起きが悪く、時間まで何をしても起きない体質だから。
そこまで確認して、改めで色々思い出してしまう。
布団の中の自分以外の温かさとか柔らかい感触とか。
いかんいかん、奴は妹だ。
誰がなんと言おうと妹だ。
取り敢えず色々さっぱりするためにタオルを持って洗面へ。
千咲は顔を洗って、弁当と朝食を作ってから起こせばいいだろう。
そんな感じで朝が始まった。
◇◇◇
「結局進展はなし、という訳か」
昼食の時間、的形さんがそんな事を言う。
「色々試したけれどね、上手く行かない」
「試した色々についての詳細はパスだな、言うなよ」
裸エプロン、風呂突入、おやすみのキスねだり、強制ハグ攻撃、ベッド突入だ。
そんなの学校で言える行状じゃない。
「網干も鈍感だな、俺だったら姫路さんに好きなんて言われたら一瞬でなびくぞ」
「そうなのですか?」
八家さんがそう明石に尋ねる。
「でも私はお兄専用だよ」
「いや、まあその辺は言葉の色々で……」
明石と八家さんが微妙にお互いを意識していて面白い。
お泊まり会の時も結構話があっていたからな。
「何か網干と姫路さんがくっつく前に八家ちんと明石がくっつく方が早そう」
的形さんもそんな事を言っている。
「ま、それはともかく親との連絡はついたのか」
明石が誤魔化すのを兼ねてかそんな事を聞く。
「メールは出した。でも時差があるから返事はまだ。今日帰ってからかな」
「詳細は不明か」
「まあ経緯はどうでもいいんだけれどさ」
「そうそう」
俺の言葉に千咲も頷く。
「でもあんな事実が発覚しても、兄妹だって事が薄れる感じは無いんですね」
「十数年の積み重ねがあるしさ。今更そう言われても変わりようが無いよな」
「私は更に近づけるチャンスだと思った。これで最後の障害も無くなったって」
俺と千咲がそう答えて、他3人は苦笑する。
「これはもう網干の負けは確定だな」
にやにやしつつ明石がそう決めつけた。
「何故そうなる」
「いや、どう見ても網干の負けだね。さっさと
こら的形さん。
その発言ちょっと下品すぎ。
明石ですらコメントできないでいるぞ。
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