§22
千咲が横にいる状態のまま考える。
さっき俺はまずいと思ったけれど、何がまずいのだろう。
近親婚の問題は解決した。
だから俺は千咲と付き合っても問題は無い。
千咲の事が嫌いな訳でも無い。
シスコンと呼ばれる程度には好きだという自覚がある。
そして千咲も間違いなく俺を好いている。
それは今回の事実が明らかになる前から積極的に態度に出していた。
なら何が問題なのだろう。
「お兄のことだから、今頃私と付き合う上で問題は無いかどうか考えていると思うんだ。感情よりも思考で動くタイプだから。でもこれで問題は無くなったと思うよ」
実際その通りなのだろう。
でも何か引っかかる。
頭の中の何処かで
ただその意味がまだわからない。
「とりあえずこの件は少し考えさせてくれ」
「まあ、私としては今までと方針は同じだから変わらないけれどね」
まあそうだな。
取り敢えず一旦この話題から離れよう。
「特別養子の事を知ったという内容のメールは一応書いておこう。経緯を教えろとかは別として」
「そうだね」
そんな訳で俺はメーラーを起動する。
お泊まり会の事はとりあえず触れない。
登場人物は俺と千咲の2人だけ。
俺が2階で献血手帳を見つけたというシナリオで文章を打った。
「こんなものでいいかな」
千咲が画面を見るために近づく前にちょっと反対側へ移動。
意識過ぎだと思うけれど念の為。
「うん、いいんじゃない」
千咲が離れたので再び元の位置へ。
「両方にTOで送信しておくぞ」
父母両方に送ったぞとわからせる。
そうすれば向こうで相談するなり何なりして回答してくるはずだ。
あの2人は気が合わないけれど仲はいいから。
「さて、ちょっと早いけれどお昼にしよ。お茶入れてくるね」
料理は俺が担当だけれどお茶だけの場合は千咲が担当。
俺はテーブル上に古新聞を敷いてパンを並べる。
古新聞を敷くのはパン屑を掃除する手間を省くため。
テーブルにつくとしばらくしてキッチンから紅茶の香りがした。
「さっき言い忘れたけれど、また新しい葉を入れてくれたんだね」
「値下げしていて安かったから、つい」
本当は違う。
うちでは紅茶は実質千咲専用。
父はコーヒー派で母はこの家には荷物整理に位しか来ない。
俺は1人なら面倒だから紅茶などいれない。
ただ千咲は結構こういったアイテムが好きなのだ。
だから、つい良さそうな銘柄があると買ってしまう。
この家の会計は俺がやっているからお金の自由は利くし。
千咲は紅茶を入れたカップを2つ持ってきて、そして俺の横に座った。
向かい合いではなくて横並びに座る。
右か左かは別として、大体千咲と2人だとそうだ。
喫茶店でもファストフードでも。
お昼の弁当の時も、基本的には隣同士の席だな。
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