§18
「どーも、待った?」
的形さんと八家さんがやってきた。
「どう、書類出た?」
「まだ、今調べて貰っている最中」
千咲が先に答えてくれた。
「そうでしたか」
「それで網干の表情が硬い訳か」
的形さん、よく見ている。
「まあ過去がともあれ、兄妹であることに代わりはないんだけれどな」
半ば自分に言い聞かせる意味もあって俺はそう返答する。
実際その通りの筈なのだ。
「それにしては色々と緊張している感じだよ」
それは的形さんに言われるまでも無く自覚している。
緊張しているというか落ち着かないというか
「でもわかったところで変わるのは、その気になれば合法的に結婚できるという事だけですわ」
あっさり八家さんがそう言ってしまった。
そう、そうなってからも俺は千咲を今までと同じように見る事が出来るだろうか。
それが不安なのだ。
でもその前に、念の為聞いておこう。
「兄妹でも結婚出来るのか」
「民法第734条第1項、直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない」
明石がさらっと条文を口にした。
つまり養子であれば兄妹間は問題無い訳か。
それにしても明石、お前色々博学過ぎ!
そして。
「網干さん、どうぞ」
受付から呼ばれる。
出来るだけいつも通りの動きを心がけつつ窓口へ。
「お尋ねの件は戸籍謄本、つまり戸籍全部事項証明書に記載されています。それで戸籍謄本の請求という事で宜しいでしょうか」
「はい」
「それではそちらの自動販売機で戸籍謄本450円のチケットを買ってしばらくお待ち下さい」
つまりまだ結果は出ないと。
取り敢えず言われた通りチケットを買ってさっきの座席に戻る。
「どうだった?」
「戸籍謄本で出るってさ。450円」
「そうか、750円コースにならなくて良かったじゃ無いか」
そう言うコースもあるのか。
「暇だからそこの料金案内とかを見てたんだ。戸籍の書き直してその辺の記載が消されていたら改製原戸籍の謄本をとらなきゃいけないから300円高くなる」
「何でそんな事を知っているんだ」
「単なる雑学だ」
そうなのだろうか。
微妙な疑問を持った時だ。
「網干さん、3番窓口へどうぞ」
ついに来てしまった。
「はい」
返事をして3番窓口へ。
何枚かあって1枚目には千咲の記載はない。
だから結果は不明だ。
チケットと交換に書類を受け取り、窓口横にあった封筒と一緒にする。
さて。
取り敢えず結果を見る前に皆のところに戻る。
「どうだった」
「まだ見ていない」
「なら先に2人で見るのが正しいかな」
「そうですね」
そんな訳で俺は千咲と2人で2枚目を見る。
2枚目には確かに千咲の名前があった。
「普通に長女と書いてあるね」
「確かに」
どこにも養子という記載は無い。
除籍という記載や親権の記載はあるけれど。
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