第7話 お役所の解答と明石の説明
§17
休日窓口は市役所本庁舎には無い。
市民窓口という名でニュータウンのショッピングセンター内にある。
毎日営業で営業時間もショッピングセンターとほぼ同じ。
ちなみに的形さんや八家さんの家の割と近くだ。
家から自転車で行けば20分。
コミュニティバスで行けば10分だが本数が今一つ。
結果、まずは俺と千咲が一番い時間に自転車で出る。
次に的形さん八家さんがバスに合わせて出る。
そして最後にバイクで自由がきく明石が家の鍵を閉めて出ることになった。
全員でショッピングセンター内の市民窓口付近で待ち合わせ。
別に全員で行く必要も無いのだけれど、何となくそう決まってしまった。
「何か千早、今朝から無口だね」
自転車で走りながら千咲にそう言われる。
「いや、急に兄妹じゃないと言われると何か不安でさ」
「別に兄妹で無い事は無いんじゃないかな。血のつながりが無いだけで。それで今までの事が変わる訳じゃ無いし」
「そっか、そうだよな」
千咲の言う通り、今まで過ごした経験そのものは何も変わらない。
それでも俺は不安だ。
もし血のつながりが無いとしたら、今までと同じ距離で千咲と付き合うことが出来るだろうかと。
旧い街から新しい街の区画に入る。
道が真っ直ぐでそこそこ広くて走りやすい。
ただ、途中にそこそこ長い坂がある。
何とか自転車に乗ったままえっほえっほと坂を越えて更に500メートル先。
そこが目的のショッピングセンターだ。
「まだ開いていないね」
開店は9時30分から。
あと3分少々だ。
「ちょっと早く着きすぎたかな。バスは35分着だし」
なんて言っていると聞き覚えのあるバイクの音。
明石の到着だ。
俺達が停めた横にバイクを停める。
「お疲れ、こっちは5分かからなかった」
「そりゃバイクだと楽だよな」
なにせ坂がけっこうきつかった。
「さて、そろそろ開店だし中で待とうぜ。請求書類を書く必要もあるしさ」
「そうだな」
開店と同時に中に入り、真っ直ぐに市民窓口へ。
「何を取ればいいんだっけ」
「多分戸籍謄本で足りると思うけれど、その辺は担当者に相談した方が確実だな。姫路さんと一緒に行って、養子かどうかわかる書類を出してくれと言えばいいだろ」
なるほど、それなら間違いが無いな。
そんな訳で書類申請書を申請書類の種類の部分だけを抜かして記載する。
それを持って『相談』の窓口へ。
開店と同時に来たのでどの窓口も空いている。
「すみません。実は妹が養子かどうか知りたいのですけれど、その場合はどの書類を取ればいいですか」
「記載事項を確認します。そのままお待ち下さい。その前に本人である証明書類を確認させていただけますか」
「旅券でいいですか」
用意して置いた旅券を見せる。
「はい、大丈夫です。それではお呼びしますので少しお待ち下さい」
戻って千咲の座っている横の椅子に座る。。
今の現実が何か変わるという訳でもないのに俺、どきどきしている。
単に過去の事実がわかる。
それだけの筈なのに。
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