§13

 そんな訳で元祖父の部屋、2階西側の部屋に到着した。


「押し入れというか、こりゃ立派な物置だな」


 一見普通の押し入れなのだが中の奥行きが1間ある。

 奥の半間分は3段の棚で一番上の棚には布団。

 他の部分や手前側には押し入れ収納の引き出しがぎっちり並ぶ。


「思ったより整理されているじゃ無いか」

「十年以上前に本人が整理したままだけどな」


 ホコリだけは時々俺が払っている。

 そんな訳でまずは手前の引き出しをオープン。


「何だこりゃ」

 中には牛乳瓶の空き瓶がぎっしり詰まっていた。


「ガラクタの一つ、牛乳瓶の空き瓶コレクションだ」

「うーん、こういうのは価値があるのだろうか」


「一般的には無さそうだよね」

 的形さんの言葉は多分正しい。


「よし、次!」

 明石は次の引き出しを開ける。

 カードケースが何冊か積み重なっていた。 

 明石は1冊を開いてみる。


「何だ、この献血手帳とかカード類は」

 普通の献血手帳だなと呟きながら明石は確認している。


「とにかくカード型のものを集める癖もあったみたいだよ」

「取り敢えずレアものがあるかもしれないから後で詳細を確認しよう」

 保留にして次の引き出しへ。


「ここは真っ当に価値がありそうだな。皿とかが包んでしまってある」

「ないと思うよ。それは確か偽物のコレクションだから。偽物の方が本物と違ってい色々面白いってお爺ちゃんは言っていたらしいけれど。これが本物なら一財産なのにね、って母さんが嘆いていた」

 

「何だそりゃ、パス」


 そんな感じで色々引き出しを開けてみる。


「それは販促用に会社名が入った文房具のコレクションだな」

「お宝ビデオらしいがベータ規格なのでもう見る機械が無いぞ」

「切手コレクション。但し使用済みばかりであまり価値は無い」


 俺の予想通りそんなのばっかりだ。

 結局。

 めぼしい物が見つかる前に、下から炊飯器の炊飯完了音楽が聞こえた。


「タイムアップだ。飯が炊けた」

「うーん、駄目であったか」

 それでも明石は3冊ほどのスクラップブックを手にする。


「それは?」

「カードコレクションらしい奴。ひょっとしたらこれに何かあるかもしれん」

「無いと思うけれどな」


 そんな訳で出した物を片付けて襖を閉める。


「さて、下で焼肉と行こうか」

 階段を降りて全員でキッチンへ寄って、色々一式を持ってさっきのこたつへ。

 取り敢えずお茶碗に御飯を盛って、ホットプレートに牛脂をのせてと。


「肉は一応おかわりもある。野菜はまあ、これだけあればいいだろ」

 牛脂とキャベツを使って油を広げ、まずは肉から。


「店以外で焼肉をやるのは久しぶりかな」

「うちは家族が多いから結構やるぞ」

「私の所も時々やるかな」

「私は始めてかもしれません」


 そんな感じでまずはカルビから焼き始める。

「取り敢えず私はここのエリア育てるから取るなよ」

 的形さんがエリア制を主張。


「甘い!鉄板の上は戦場だ!」

 明石が取りに行こうとして隙を突かれ、逆に手前の大物1枚を取られる。

「ふふふふふ、まだまだ青いなお主」


 一方、八家さんはお肉を焼くこと自体が楽しい様子だ。

「このお肉って焼くと自動的に油が出てきて便利ですね」


 おいおい、それは皮肉か天然か。

 まあ八家さんのいつもの言動からして多分天然の方だろう。


「安い肉は脂肪が多いからそうなるの」

 一応そう教えておこう。

 他で困ると何だし。

 そんな感じでわいわいいいながら食べる。

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