§9

 カラオケボックスは午後2時からネット予約済み。

 夕食の材料も昨日購入済み。

 なお夕食は焼肉にした。

 大昔買ったホットプレートがまだ使えるのを確認出来たので。

 それに焼肉なら千咲が料理をしない事がバレないだろう。

 1階も2階も俺と千咲とで掃除済み。


 なお的形さん、八家さんは家が近いらしいので一緒に来るそうだ。

 この2人は同じ市内だからコミュニティバスで家の近くまで来ることが出来る。

 明石がどうやってくるかは謎。

 とっておきの交通機関を披露すると言っていたけれど。


「そろそろ来るかな」

「まだ早い」

 集合予定は午後1時30分、場所はこの家だ。

 そして今は午後1時過ぎ。


「みんなちゃんとここがわかるかな」

「金曜に全員に道案内アプリをセットしたし問題無いだろ」

 俺が女子2人の分は確認した。

 明石は勝手に何とかするだろう。


「的形さんと八家さんは1時15分のバスで来ると思うぞ。時間的にそれがちょうど良いからさ」

「明石は?」

「あいつはよくわからん」


 でも俺は明石については全然心配していない。

 何気に奴はいろいろそつが無いというか器用というか物知りというか。

 学校始まってまだ2週間経っていないけれどその辺は色々感じる。

 言動は色々怪しいけれど人間そのものはまともだし。

 だからこそ俺側の勢力として昼食のグループに引き入れたのだ。

 あっさり千咲側に寝返りやがったけれど。


「あと準備し忘れはないよね」

「夕食の材料は切りそろえて冷蔵庫に入れたし、お菓子や飲み物も用意済み。ゲーム類は明石が色々持ってくるって言っていたな。こたつ板の裏側だけは用意してくれと言っていたけれど」

 こたつ板の裏なんて事は麻雀でもするのろうか。

 でも俺は麻雀のルールなんて知らないぞ。


 そんなこんな話しているうちに1時10分を過ぎた。

 そろそろ来るだろうという事で千咲と俺とで家の前に出てみる。

 バス停からここまで順調に歩けば5分かからない。


 ただ、先についたのは女子2人組では無かった。

 ボボボボーという音を立てて走ってきた怪しいバイクが街側からやってきて俺の家の前に泊まる。


「よお、出迎えご苦労」

 ヘルメットの下から現れたのは明石だった。


「どうしたんだこれ、それに免許は」

 白色のあまり見た事がない形のバイクだ。


「こちとら4月2日生まれだからさ、誕生日に早速原付免許を取った。このバイクは兄貴からのお下がり。盗まれると嫌だから中に入れさせてくれ」

「いいけれど」

「サンクス」

 奴はバイクを引いて俺の家の駐車場部分の隅に停めた。

 カーポートの屋根の支柱にワイヤーを巡らしてバイクの車輪と固定する。


「ところでこれ、何処のバイクなんだ。見覚えがあまり無いけれど」


「元々はホンダのスーパーカブ。色を変えたりカウルを削ったりして加工、更にあちこちの部品を入れ替えている。まあ兄貴と親父の趣味の産物だ」

 確かに言われてみればどことなくカブの面影があるような。


「あとその大荷物は何だ」

 リアシートに色々大荷物がくくりつけられている。。


「今日を遊び倒すためのゲーム色々だ。カードゲーム系からボードゲームまで、一通り持ってきた」

 気合い入れすぎだろ、それは。


「あ、千咲ちゃんだ。やっほー」

 的場さんの声が聞こえた。

 見ると女子2人組が歩いてきている。

 どうやら無事に到着したようだ。

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