第1章 俺と千咲とお泊まり会

第3話 お泊まり会

§8

 入学してから1週間。

 俺と千咲は双子で兄妹だが公認の仲。

 そんな感じにクラスでは認知されてしまった。

 俺としては非常に不本意だ。

 でも今更どうにも出来ない。

 あと不本意と言えばもう一つ不本意な事がある。


「それじゃ今、2人で同棲しているんだ」

 昼休みの御飯タイムで的形さんがそんな事を言う。


「同棲じゃない、同居だ。兄妹が同じ家に住んでいるのは普通だろ」

 そうなのだ。

 同居は入学式の日だけかとその日は思っていた。

 しかし次の日長い長いSNSメッセージが入った。

 内容を要約する。

『大口の仕事で2人とも海外へ行く。期間は1月予定。その間一緒に生活していろ』

 そういう事だ。


 何も2人で海外出張する事も無いと言いたい。

 でもその辺の言い訳もちゃんとメッセージの中に入っていた。

 更に言うとこういう事態、実は2年に1回位はあったりする。


 つまり今日で1週間、千咲とうちの家で一緒に暮らしている訳だ。

 いま食べている弁当も朝、俺が2人分作っている。

 まわりには千咲が作っていることにしているけれど。


「高校生男女2人の同棲現場、面白そうですね。何なら今度の週末、皆でお泊まり会をして様子を見てみましょうか」


「いいな、それ。しっかり検証してやる」

 八家さんのとんでもない提案に明石が賛成する。

 なお昼食の集団は千咲、的形さん、八家さんの他、明石も加わっている。

 明石は俺が千咲側の女子に対抗して引き入れたのだ。

 でも奴めあっさり裏切りやがった。

 今では明石も千咲側で俺を攻撃してくる。


「やめてくれ、生活権の妨害だ」


「私は別にいいけれどな。部屋も布団も余っているし」

 こら千咲、そんな事を言うんじゃ無い。


「ならちょうどいいよな。それぞれ同性の友達の家に行く事にすれば文句も言われないだろ」

 的形さん、やめてくれ。

 俺は静けさと平穏が好きなのだ。


「どうせ課外活動とかやっていないし暇だからさ。勉強会ということにすれば親も問題無いだろ。ゲームとか色々持ち寄って楽しもうぜ」

 明石は要は楽しければいいという事だろう。

 俺の面倒とかは一切無視だ。


「なら決行は18日土曜日でいいでしょうか」

「そうだな。お昼過ぎに集合して、カラオケして、泊まり会に突入って感じでさ」

 明石が完全に自分のリア充願望を入れているが、止める人間がいない。


「いいね。でもカラオケってやった事ないや」

「私もですわ」

「実は俺もそう。皆わからないからそれでいいんじゃね」

「確かに全員初心者なら気兼ねなく出来るよね」

 ああ、明石の口車に皆さんのせられている。


「ちょうど家から5分くらいの所にカラオケボックスがあるよ」

「じゃあそれで決まりですね」

 千咲まで乗り気だ。

 俺が何も言わない間に計画が着々と作られていく。


「言っておくけれど普通の家だから何も面白みは無いぞ。駅からも1キロあるし」

 一応それだけは言っておこう。


「いいのいいの。要は集まって楽しめればそれで」

 これが明石の本音だろう。


「なら取り敢えず今日帰ったら親の許可を取って、良ければ決行だ」

 的場さんがそうとりまとめてしまった。

 いいのかおい。


「楽しみだね」

 まあ千咲がそう言うならいいけれどさ。

 俺は微妙に不安だ。

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