　十二月二十五日。

　この日、ミリオポリスは年に一度のクリスマスを迎えた。

　街の様子は普段とは一変し、ウィーン市庁舎や文化保全地区に立つ数々の世界遺産群は電飾が施された状態で連日に渡ってライトアップされており、ネット上では「世界一贅沢なクリスマスオブジェ」として、大々的に取り上げられていた。

　各地区にある公園や主要な通りでは毎年恒例となるクリスマス・マーケットが開かれ、様々な品物を売る屋台が軒を連ねていた。店頭にはサンタのぬいぐるみや赤や白などカラフルにデコレーションされたお菓子がずらりと並び、道行く見物人達の興味を引いた。その中にはプレゼントを求めて両親に駄々をこねる子供や、重大な告白を前に緊張し、何が欲しいのかを店主に言い出せないカップルの姿もあった。

　これは、そんなクリスマスの一夜を過ごした特甲児童達の姿を追う物語である。