第5話 第5相談者

まだ5月も下旬というのに、都心は連日夏日が続き、ジトっとした空気が梅雨の到来を予感させた。ここ新宿百人町の雑居ビルにある『発散堂』の店主、御手洗(みたらい)幸一(こういち)はウクレレを片手に、競馬新聞の出走馬に赤ペンでチェックを入れていた。赤いアロハはボタンが半分はだけ、八分丈の麻のパンツは裾がさらにまくられている。雪駄の足を机の上に投げ出して、御手洗はおもむろに叫んだ。

「菜月チャ―ン」

「はーい」今日は、ピンクのナース服。ひざ上20センチのミニスカートからのぞく

白いストッキングがすらりとした太ももを強調させていた。

「明日の東京7レースから10レースまでのマークシート書いておいたから、馬券売り場までちょっくら買い物お願いね。全部3連複。10万円分と今日のセクシーな衣装におひねりね」御手洗は、馬券購入券と11万を早業で、さつきの胸の谷間に捻りこんだ。

「もー困ったおじさんね、毎度あり!」菜月は嬉しそうに胸元を手で押さえた。

ふいに銭形平次の着メロが鳴りだす。

「はい、皆様のイライラ解決!発散堂でございます! ハッサン24、24時間受付中です!」御手洗の声はルパン三世のように軽妙で、小気味いい。

「あ、初めての方ですね、はい、お名前からどうぞ、仮名でもかまいませんよ」

今日も仕事の始まりだ。


    *


「だから兄ちゃん、今度だけは信用してくれよ。今回飲んだら、きっぱりとやめる。おれだってもうどうにも手に負えなくなってるんだ。こうして電話したり、人と話すのにも酒がないと気力さえ湧かないんだ。明日の朝、千円でいい。それを最後に手首でも切るか、トラックにでも轢かれてみせる。な、兄ちゃん。俺なんて消えてなくなればみんな喜ぶだろ?」健次は半分呂律が回ってない。また深夜の2時だ。

「いいか、健次(けんじ)。もう何回目だ? 今のお前はダメ人間じゃないんだ、病気なんだ。死ぬ、とか脅かすのはもうよせよ。たのむから病院にいってくれよ」兄・原哲也(はらてつや)はゆっくりと落ち着いた声で健次に言い聞かせた。

「わかった。わかったよ兄ちゃん。病院へ行く。だから千円、千円だけでいいから、明日、駅前で待ってる」健次はいつもの場所を指定した。

「病院は生活保護で何とかなるだろ。もう少し渡すから今日はもう寝てくれ」哲也はうんざりした口調で電話を勝手に切った。

「健次―、健次―!」すぐ横のベッドで父親の雄一が叫ぶ。

「父さん!健次じゃなくて哲也だろ。俺はて・つ・や!」哲也は同じセリフを何万回、言っただろう。息子の顔も名前も忘れ挙句の果てには、長男の哲也でなく次男の健次の名前を呼ぶ。病気とはいえ、腹立たしいやら悲しいやら、哲也はそれでも辛抱して返事をするのだ。

「健次―、お前大学はどこに決めたんだ?」雄一の記憶は健次の大学受験で止まっている、ということらしい。

「はいはい、早稲田ですよ、わ・せ・だ!」哲也は答える。

「そうか、健次は医者はいやだって言ったからな」

「そうだね、父さん、まずは安心して寝ようや」哲也は何とかして父を寝かしつけたい。

 

    *


父、雄三がおかしくなったのは一昨年の冬からだ。会社から帰宅途中に山手線に乗ったのはいいが、どこで降りていいかわからなくなった。ホームで不審に思った駅員さんが、電話をくれたので助かった。またある時には、車を運転して一方通行の道を逆走しようとした。すぐに警察に捕まったのでことなきを得たが、事故を起こしていたらと思うとゾッとする。それ以来、免許は取り上げた。というか車のカギを渡さなくした。これには父も怒って「馬鹿にするんじゃない、ボケ老人みたいじゃないか!」と哲也に殴りかかってきた。バットは持ち出すわ、食器は投げるわの騒動に発展した。

病院の診断は、若年性アルツハイマーだった。父は60歳を迎えていた。薬を飲んでいかに進行を遅らせるかしか、他に手立てがなかった。


    *


弟の健次はアルコール依存症だ。もともとは早稲田の政経を出て大手広告会社に就職したエリートマンだった。25歳で結婚し、立派なマイホームを建て、2人の男の子を授かった。

ところが一昨年の父の異変から、様子がおかしくなった。その年に部下が起こした不祥事の責任を一手に引き受け、おかしくなった。南米出張でアルコールや麻薬に溺れ、帰ってきたときには身も心もボロボロになっていた。

奥さんと子供には逃げられた。家は奥さんへローンごと譲渡した。離婚届に判を押してから、健次は朝から酒を浴びるように飲み始めた。会社には適当な嘘をついて休むようになり、会社から辞職勧告という形で、自主退社した。退職金も失業保険もみんな酒や風俗そして裏カジノに消えていった。そしてある朝、路上で大の字に寝ているところに車が接触し、そのまま救急入院となった。精神病院だった。特別治療室、通称『ガッチャン部屋』に手足を縛られ、バスタブのようなベッドに1週間拘束されたらしい。監視カメラ付きで24時間見張られるのである。普通の依存者も病院の規則が守れないとガッチャン部屋に行かされるので、患者は皆恐れている。健次はよほど嫌だったのか、それ以来おとなしく病院に入院し、3カ月で退院となった。

しかし健次の断酒は続かなかった。精神疾患がひどく生活保護の金が入るやいなや、酒につぎ込んだ。リバウンドだろうか、前にもまして酒の量が増えていった。そうしてぐでんぐでんになっては、昼夜を問わず哲也に電話してくるのだった。


    *


哲也は父の介護のためフルタイムの仕事を辞めた。日中、2時から7時までの宅配便でアルバイトをした。『要介護2』のために月約18万は支給されたが、十分ではなかった。アルバイトでも月に10万にはなる。なにより家を出て介護から解放されたい、という気持ちがあった。1日中、父・雄三と一緒にいてはこちらの頭までおかしくなる。哲也は外出中何かあるとまずいので、家を改造した。ガラス類の食器はカギのかかる棚に入れた。割れて危ないものもみな片づけた。火・水・ガスなどの元栓はかならず閉めた。玄関のドアも2重にして鍵をつけ、哲也のいない時には父が外出しないようにした。


    *

 

 健次は入院中から生活保護を受けるようになった。哲也も出せる範囲で健次に送金することになった。哲也の家から1駅離れたアパートで出直すことになった。

「に、兄ちゃん、悪いな、これっきりだから。こうして朝になれば飲みたくはないんだ」

健次とは次の日の朝、駅前の喫煙所で待ち合わせをした。

「悪いことは言わない、病院へ行きなさい。自分1人ではやめられない病気なんだ、何も健次が悪いんじゃない。病気のせいだ。たのむからこの前みたいな『死ぬ、死ぬ』って脅すのはやめてくれ、兄ちゃんこれ以上、面倒は見切れないから」哲也は懇願した。

「だから、きっぱりやめるって。AAにも毎日行くし病院のデイケアにもいくようにすっから」健次は渡された1千円札を3枚素早くポケットにしまい込んだ。AAとはアルコール・アノニマスの略で、断酒を目的とした自助会のことだ。

「いいか、これで飲んだらきっぱりやめろ。しっかり病院にいってAAにも行って早く健康な体に戻るんだ。まずはそれから始めるんだ。兄ちゃんはお前を見捨てたりしないから、一緒に頑張ろうや」哲也は健次の肩をたたいてそう言った。


    *


母は哲也が20歳、健次が18歳のときに蒸発した。よくいくスナックで客と恋仲になって突然姿を消した。時折、手紙が届いたが、雄三がそのたびにビリビリに破いて棄てた。いまは日本のどこにいるかもわからない。電話番号も分からない。盗み見た手紙に『再婚』

します、と書いてあった記憶がある。雄三がこんな病気になったため、正式に雄三と離婚したかどうかも、今となってはわからないのだ。

 

    *


「健次―、父さん、いまから帰るぞー」雄三は哲也に言った。

「どこへ帰るの?ここは父さんの家!」哲也は答える。

「ちがう、千葉の家に行くんだ」

「ちば?」

「ああそうだ、父さんの家は千葉しかないだろう」雄三は、生まれた千葉の家を思い出したらしい。

「そうだね、明日にでも、千葉に行こうよ、父さん。とりあえず今は座って」と哲也は父の肩を押さえると、殴りかかろうと暴れ出した。

「バカ野郎!また父さんをバカにしやがって」

「してない、してない、わかったから」哲也は、父の腕を振りほどき、いすに座らせた。

(もう限界だ、いっそのこと・・・)と哲也は考えるがいかん、いかん、と首を振った。


    *


健次はもらった金ですぐにコンビニへ直行した。ウィスキーを買い込んで店の外で飲みだした。(最後の酒だ、健次よ、心して飲め。32年良く頑張ったな、死んでしまいなさい)「だれだ?」健次は周りを見回した。南米でよく見た、どす黒いネズミが100匹位自分の周りを駆け回っている。人間はいない。突然体中が寒くなってきた。「死んでしまえ」この言葉が耳から離れない。健次は幻聴・幻覚に襲われていた。

「死ぬのは構わない、どうか楽に死ねますように」健次は考えた。

「川だ、川が俺を呼んでいる・・・」健次は千鳥足で近所にある引田川の川辺に出た。


    *

哲也は朝、健次に金を渡すと、近所にある特別養護老人ホームを訪ねた。入れる条件や自己負担金についてくわしく知りたかったからである。施設は新しく清潔で木のぬくもりを感じるような設計になっていた。施設内を一通り案内されて応接室に入り、説明を受けた。入居の条件は要介護3の認定が必要なこと、今の条件では県内のほとんどの施設は満員で数年待ちになること、など絶望的なものであった。

哲也は施設の庭に出てベンチに座り煙草に火をつけ、「ふー」とため息に音を加えた。

「断られたんですね」哲也は突然に声をかけられ顔を上げた。

白いブラウス、白いロングスカートの目をこすりたくなるような美少女だった。

「え、ええ。来る前から電話で訊いてわかってはいたんですが・・・」

「本当にお困りのようですね、どこもいっぱいみたい」よく見ると○垣結衣にどことなく似て黒くて長い髪がきれいだった。

「私も母が認知症になったみたいで、ここへきて相談してたんです」少女は言った。

「元気で暴れるうちはだめみたいですよ」哲也は笑って答えた。

「どっか、この辺でお昼でも食べませんか?」

「え?ええ。いいんですか?」哲也は耳を疑った。

「同じ悩みを抱えた方のお話を共有したいんです」少女は言った。


    *


少女は名前を木村美穂といった。施設では少女に見えたが実際は28歳だった。

「原哲也です。34歳。空いた時間にアルバイトしています。」

「そうなんですか、えらいですね。私なんか母が心配でなかなか外出できなくて」

「あんまりコン詰めないようにしないと、供依存になっちゃいますから」

「原さんの言うとおりですね、私どうしたらいいかわからなくて・・・」

哲也は美穂の気持ちがよくわかった。そして少し年上として頼られたい気分だった。ついでに身の上話や、母のこと、弟のことも話した。

 

   *

「原さんに出会えてよかった」美穂はとびきりの笑顔で哲也の手を握った。

「今度、また時間を決めてお会いできませんか?」美穂が恥ずかしそうに言う。

「もちろん」哲也は生まれて初めて神に感謝をした。

「じゃ、○月○日 12時に駅前の銅像で。」美穂とはメアドも交換した。


   *

4本は開けただろうか。健次は堤防のコンクリート上でへべれけになって遺書を書いていた。


    

拝啓 兄上さま


先立つ不孝をお許しください。


辞世の句


「戦友よ、われたたかへり 海の底」  健次


健次は靴を脱ぎ、上半身裸になって川へと入っていった。水深は30センチほどしかなかった。

ゆっくりと腰から浸かり仰向けになって倒れ込んだ。


    *


別れ際、美穂に手を振ったその時だった。哲也の携帯に見知らぬ番号から電話がかかってきた。「もしもし」

「はい、原哲也さんの携帯でしょうか?こちら引田警察署の白川と申します」

「はあ」

「弟さん、えー、原健次さんのお兄様でよろしいですか?」

「はい」

「さきほど引田川で、弟さんが泥酔されたまま、川に入りまして。いや、ご安心ください。

お怪我などは無いと思いますが一応救急車でみどり台総合病院へ搬送いたしました」

「自殺未遂ですか?」

「そうかもしれません。現場には遺書らしきものがありますねえ。ただ、近くの幼稚園生たちが川べりを散歩中、健次さんを発見しまして、通報がありました。さいわい水深も浅く目的は果たせなかったようですね、意識もありましたのでこちらへご連絡差し上げました」白川という刑事は、笑いをこらえたような口調で話してくる。

「そうですか、ご迷惑おかけしました。申し訳ありません」哲也も笑いをこらえたように言葉を返した。

「迷惑ついでで申し訳ないのですが、そのまま精神病院へ送っていただきたいのですが」哲也が付け加えた。(健次の馬鹿野郎!)哲也はあきれ返って笑うしかなかった。

  

    *


 美穂は待ち合わせの時間にぴったり来た。白のワンピースがまぶしいほど似合っていた。哲也はどこに行こうか考えた挙句、横浜に出て、海を見ながら語らいたいと思った。中華街で食事をしてから、哲也のお気に入りの波止場にある公園に行った。

「哲也さん、このままじゃかわいそう」美穂は哲也の目を見て言った。

「いや、こうして美穂ちゃんに出会えただけでもしあわせだよ」

「だめよ、もっと幸せにならなくちゃ」美穂は真剣な声で言った。

「それはどういう意味?」哲也は来るべき時が来たと思い言葉を探した。

「今日、あたし、哲也さんを連れていきたいところがあるの」美穂はまだ真剣だ。

「良いよ、美穂ちゃんの好きなところに案内してよ」哲也の胸が躍った。

「きっと二人で祈ったら、この先きっと愛に満たされるんじゃないかな」

美穂は哲也の手を引いて桜木町駅へ向かった。


    *


 哲也はどこへ連れて行かれてもいいように様々なシチュエーションを想定した。

(付き合った記念のジュエリー?金はあるか?)(ホテルか?カードは持っているか、

避妊具は1つ財布に忍ばせてある)(その前に、愛の告白だろう、こっちから言う?なんて言おう?)哲也は、床屋に行っておかなかったことを後悔した。

 横浜駅を出て美穂はまた哲也の手を引いて西口から離れていく。


    *

 

『天極大主大聖堂』 人の背丈ほどの赤い木の板に彫られた文字が金色に輝いている。

 「哲也さん、緊張しないで。私がついてる。」美穂が扉を開ける。

 お香の香りがすぐ鼻についた。薄暗い部屋のまえに三和土(たたき)があって10足以上の靴がひしめいている。怪しげなお経がスピーカーから流れていた。

 「さあ哲也さん、靴脱いでこっちへ来て」美穂がウインクして微笑む。

 パイプ椅子が並べられた部屋には、哲也と同じような年頃の男が何人もすわっていた。

 「・・・馬鹿野郎」哲也は思わず口にした。「馬鹿野郎!」哲也は踵を返した。

「哲也さん!どうしたの」美穂が叫ぶ。哲也は振り返らずにひとり走り始めた。

「馬鹿野郎っつってんだよ」

どこまで走ったろうか。疲れて地面にへたり込む。大声を出す気力もない。思わず携帯を取り出して音声検索に「馬鹿野郎!」と発してみる。

  検索した画面には『たけしのダンカン馬鹿野郎』などが表示される。馬鹿らしくなった。しかし、一点気になる文字が目に入った。

『発散堂』

和也は気になってサイトを開いてみた。

「あなたのいらいら、解決します!」「ボロボロになったあなた!今すぐコール」


    ○即日お伺いして貴殿のイライラを解消して見せます!

    ○お話を伺い、貴殿に合わせたストレス発散を提案させていただきます!

    ○暴力・反社会的行為はできませんのでご了承ください。

    ○明朗会計! スタッフ1名につき1回1万円から+交通費

    ○深夜も営業! 午後8時から午前5時まで

          CALL US 090ー51××―09××

画面のわきには風俗スタッフ募集やヤミ金広告が載っていたが、発散堂の文字の下にな写真には瓦割りをしている女性が何やら叫んでいる姿が映っている。

(ああ、こういう発散か)哲也はなんとなくイメージがつかめた。

 哲也は疑心暗鬼になっていたが、もうこの際、どうでもいいや、と電話の「発信」を押した。


    *


「はい、皆様のイライラ解決!発散堂でございます!ハッサン24、24時間受付中です!」

 「話だけとりあえず聞いてくれますか」

「はい、お電話ありがとうございます、初めてですね、ではお名前からどうぞ、仮名でもかまいませんよ」

  哲也は父・母・弟・そして出会った女性との顛末をざっくり話した。

 「哲さま、それはさぞかし心を痛められているでしょう。ぜひ当社のサービスですっきりしていただきたいものです」御手洗は言った。

 「あのう、いま瓦割りみたいな道場には行きたくないんですが。」

 「ああ、あれはあくまでイメージです。哲さまのお好きなようにお手伝いしたします」

 「そう言われてもなー」哲也は言った。

 「では哲さま、趣味や特技はございますか?」御手洗が訊く。

 「・・・ゲーム?くらいかな」

 「ほう、それはいいヒントですね、バトルゲームなんかは?」

 「大好きです。フロントラインコマンド1とか」

 「哲さま、それはもう良いご提案ができますよ」御手洗は嬉しそうに、提案と作戦を語り始めた。哲也もがぜん興味がわいてきた。

 「では作戦は、午後8時、スタッフがワゴン車で参ります。指定の場所でお待ち下さい。それと、発散後の処置、謝罪は当社では全く関知いたしませんのでそれだけはその場でご了承のサインをいただきます。よろしくお願いします。」

    *


午後8時30分前、指定された横浜駅の近くにワゴン車が来た。ミリタリーの格好をしたおじさんだ。

「お待たせしました、哲さま、本日担当します、発散堂の御手洗です。よろしくお願いします。早速ですが電話で確認した発散後の自己責任同意書にサインをお願いいたします」哲也はサインをした。

哲也も車の中でミリタリーの衣装に着替えた。使用する機関銃はトライデントLMG、電動のエアガン。電池もBB弾の装填も満タンだ。哲也は御手洗から入念に説明を受ける。そして決行場所である埠頭に車は移動した。

「哲さま、決行のお時間です。時間は30分間、好きなだけお楽しみください。BGMは当社よりサービスでございます。」

哲也は海に向かって「馬―鹿―野―郎―!!」とさけびトリガーを引いた。

ダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!

「みんな、消えてなくなれ!」「なんで俺だけまともなんだ!」

「みんなブチ壊してやる―――――――――――!!」


ワゴン車からは、John Lennonの「Power to the people」がボリューム最大で流された。車には街宣用スピーカーがついているのである。


 御手洗は微笑みながらもっと叫べとジェスチャーした。本日の仕事2万4500円なり。

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