Presenty——04
分からないことだらけのこの箱について言えることがあるとすればこのままここ、ベランダ前に置いたままでは非常に邪魔であるということ。
……隅にでも寄せておくか。
重量的に動かせるかは別の問題として。
持ち上げるのに丁度良い凹みでもないかと探す。
箱を支えに立ち上がった。
————その時だ。
中央を割るように光に沿って上部が左右に分かれ箱の中身が
「っ!」
悲鳴が張り付き声にならない。
無意識の内に動いていた足で
目を見張り息を呑む。
パネル付きの不可解な鉄の箱。
その中に収まっていたのは————。
艶やかな濡れ羽色の髪。
アーガイル模様のヘアバンド。
ふんわりと内巻きのボブカットが愛らしい。
女の、生首。
あまりの驚きと恐怖に頭の中が真っ白になる。
数秒前までの疑問など綺麗さっぱり消え失せた。
けれど、すぐに復活した思考回路で事態を把握して今、自分が取るべき行動に移る。
手足は思った通りに動いてくれた。
置いた鞄を拾い上げる。
急ぎ中からスマートフォンを取り出す。
とにかく警察を……!
ボタンを操作し耳に当てるが繋がらない。
一度離して確認した画面の、電波表示は圏外。
…………は?
圏外? 圏外って。圏外……?
どういうことだよっ!
「————。——」
焦る明弘の耳に言葉が届く。
鈴のように軽やかで、けれど柔らかな女性の声で。何と言ったかは、生憎と聞き取れなかった。
スマートフォンから顔を上げる。
変わらずそこに鎮座する生首が瑠璃色の瞳に明弘を映す。
「——?」
生首が首を傾げた。
先程よりさらに後退った明弘は勢いで足がもつれて尻餅をつく。
…………いや、は? え? 首を傾げた?
生首が、首を傾げたっ!?
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