第171話 プレミスと面白さ


 自主企画『その物語を一文で表すとどうなる? みなさん作品の「プレミス」を募集!!』に参加してみました


 最初は『電影竜騎士団404NotFound接続に不具合あり』でやろうとしたんですが、途中で〇〇〇がチェンジしちゃう小説のプレミスなんて作れないですね。盛大なネタバレを敢行したとしても、やはりあの作品でプレミスは書けなかったです。


 で、過去作の『刀剣オカルトMØDE』のプレミスを書いてみました。



 で、実際にプレミスなるものを作ってみた印象なんですが、一本の長編としての小説のプレミスを作ることは、そのストーリーの骨子を確認するには有効なことですね。


 プレミスを書いてみて、ああ、こういう話なんだなーと思いましたし、たぶん執筆前にプレミスとしてしっかりストーリーの骨子を把握しておけば、それが作品にいい効果を生むのは間違いないと思います。


 が、反面、プレミスはしっかりした物語を形成するには役立ちますが、それが面白い話を作るのに役立つかは微妙ではないかな?と思います。


 たとえば、『刀剣オカルトMØDE』の面白い部分ってどこでしょう?


 ストーリーでいえば、中盤のどんでん返し。〇〇〇〇の正体とかでしょうか。


 あとはだいたい戦術レベルの面白さですよね。

 斬り合いとか百人斬りとか、その最中にかかってくる電話や、夢想剣VS西江水みたいな小ネタとか。

 戦略レベルでのプロットとは、関係ないところに力が入っている作品ですね。それってどうなの?と思うけど。


 つまりは、『刀剣オカルトMØDE』のプロットは戦略的に作られた物ではない、ということですね。



 プレミスとは、物語のフレームをしっかり作るということに関しては有効だと思います。が、これを書いたからといって、面白い物語を書けるとは限らない。


 たとえば、とても魅力的で、誰もをひきつける美男とか美女とかがいたとして、その骨格のレントゲン写真だけ見せられて、「素敵!」と思う人はいないはず。

 そこに肉だの肌だの、表情だの性格だのが乗って、はじめて人は魅力的になりえるわけですからね。


 ただ、プレミスがしっかり出来ていないと、すなわち骨格の歪んだプロットだと、そこから面白い物語を生むのには苦労しそうです。

 前の話で書いた、『うしおととら』か『からくりサーカス』かの違いだと思います。




 しかし、面白さとは何なんでしょうかね。ぼくはもうずいぶん長い事、この面白さとはなにかという命題と向き合ってきましたが、いまだに答えは出ません。当然、面白い小説を書く方法なんてものは、いまだに分かりません。


 いえ、それどころか、そもそも「面白さ」ってなんなんだろう?と思ってしまいます。

 世の中は面白いことで溢れているのに、その「面白さ」の正体は分からない。まるで科学が「生命」の正体を突き止められずにいるのと似ています。あ、それは「生命」だけではないですね。「時間」「空間」「物質」。それらすべて、正体不明です。

 ぼくら人類は、身近にあるものほど、その正体が分かっていないようです。



 ちょっと『機動戦士ガンダム』の話でもしましょうか。


 『機動戦士ガンダム』すなわちファースト・ガンダムが放映されたのは1979年。ただし初回放送時は誰も見向きもせず、発売された玩具も売れていませんでした。

 が、放送終了直後から高く評価されはじめます。当時は動画サイトはありませんし、レンタルビデオ店に放映直後のアニメが並んだりはしない時代。

 『機動戦士ガンダム』が爆発的ヒットとなり、社会現象になるのは、半年もしくは1年後くらいの再放送の時でした。

 そして、そのタイミングでバンダイから発売された通称「ガンプラ」も空前のヒットとなり、いまだに売れ続けています。



 今の人が視聴して、『機動戦士ガンダム』がどれほど面白いのかは分かりませんが、あの当時観たぼくらは、ほんとうに面白いアニメだと感じました。そして、そう感じたのはアニメ好きばかりではなく、普段はそんなもの観ない人たちですら、「面白い!」と評価していました。


 そうした中で始まったのが、アニメ・ファンによる、「どうしてガンダムは面白いのか?」という論争です。

 なぜなら、どうして面白いのか?が分かれば、そういうアニメをこれからも量産できるからです。


 そうして得られた結論が「リアルだから」でした。

 たしかに、『機動戦士ガンダム』はSF考証がしっかりしているもあって、リアルな印象があります。いま観ると、全然そんなことないと分かりますが(笑)。


 そして、アニメ・ファンとアニメ会社はそろって大きな勘違いをし、「リアルなアニメが面白いアニメである」と結論付け、そこからロボット・アニメはリアル路線へ舵取りしていきます。


 『機動戦士ガンダム』がリアルな描写で面白かったのは事実です。だからといって、リアルにすれば面白いわけではありません。


 すごく美味しいカレーがあって、そのカレーが激辛だったからといって、激辛にすればカレーはすべて美味しくなるかというと、そんなことはないのと同じです。


 リアルなロボット・アニメが面白いと信じたファンがそれを求め、それを提供し続けた製作者たち。でも、おいそれと『機動戦士ガンダム』みたいな面白い作品は生まれませんでした。

 あれはいわゆる、「リアル」の呪いだと、ぼくは思っています。


 でも『装甲騎兵ボトムズ』とか『機動警察パトレイバー』などの、名作も生まれましたけどね。



 面白い作品があって、それがリアルであるとかギャグ満載であるとかの要素があったとしても、それは単なる味であり、面白さ自体ではないことを勘違いしてはいけないと思います。


 決して「辛いから美味しい」のではないのです。美味しさは、別の場所にあるのです。

 決して「リアルだから面白い」のではないのです。面白さは、別の場所にあるのです。



 つまり、結論として、面白いってどういうことか、ぼくにはよく分からんのです。

 こうすれば面白い小説がかけるよ!なんて方法が分かる人がいたら、是非教えてもらいたいですね。


 だが、しかし。

 「面白いプロット」となると、ある程度のレシピは存在するのですが……。




 閑話休題して、近況でも書きます。



 ここ何日か、『ときめき☆ハルマゲドン』の第5章の執筆を中断してプロットを作っています。

 ひとつは、前回ちょっとだけ語った「つばさ文庫」用の新作。

 もうひとつは、『とき☆ハゲ』の第5章クライマックスのプロットです。



 『とき☆ハゲ』第5章は、このあとクライマックスに繋がる御前試合の場面へ突入するところまで書いたんですが、そこで描かれるのは「多重バトル」になります。

 もちろんその多重バトルはまだ書いていませんし、いままでにも書いたことはないのですが、いまの段階の感想として、多重バトルって、始めるところがかなり難しいな!のひとことです。


 そもそも、なんでそういうことになるのか?という必然性の問題なんですが。

 あと、タイミング合わせも大変ですね。



 ということで、一度書いたプロットをまた清書しています。多重バトルを点火させるには、結構きっちりしたプロットが必要なことに気づいたからです。


 まあ、プロットの清書も必要なんですが、クライマックスまえに自分自身の内圧を高めておきたいっていうのもありますね。なんか10万文字を超えて書くと、いつもちょっと息切れしてしまいます。




 一方、思いついた新作のプロットですが、つぎつぎアイディアが出てくるので、そちらを進めていました。

 こちらの作品は、だいたいのプロットも登場人物のキャラクターも、ほとんど完成しています。

 一応題名だけは公開しておきます。


 新作は『怪盗美少女アルセーヌ・ルパ子の冒険』です。


 この「冒険」の部分を、「最初の冒険」にするかもしれません。



 主人公は中学生1年生の設定です。

 あとのことは、説明不要ではないでしょうか。だいたい題名から内容は推察できると思います。

 もちろん、みなさんの予想の斜め上をいくプロットになっている自信はありますが。 斜め上かよ


 一応つばさ文庫用のアイディアとして思いついたんですが、先日募集が始まって8月に締め切りだと、さすがに書き終えないので、どうしようかと思ってます。

 プロット自体ももう少し煮詰めたいし。


 来年にするか、あるいは別レーベルにするか。ま、とりあえず『ときめき☆ハルマゲドン』の第5章を書いてから考えます。


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