九州より無事もどってきました
第151話 『鬼滅の刃』を全部観た
九州から帰って、そのままイガラシんちに行きました。
大分土産の焼酎飲んだりして泊めてもらい、翌朝。アマゾン・プライムビデオでアニメ『鬼滅の刃』を見せてもらいました、全話。
イガラシ「何話まで観たの?」
雲江 「岩斬るところまで。五話くらいかな?」
……岩斬るのは、三話だった。五話も観てないじゃん!
ということで、朝からじつに二十三話、最後まで観ました。結果は、面白いけど別に泣かなかったぞ。
おかしいな、『爆走兄弟レッツ&ゴー』では泣いたのに。もしかして世間一般の人と感覚がずれているのか?
でも、アニメを最後まで観れたので、映画を観に行けるじゃーん!と、話題の映画『鬼滅の刃 無限列車編』を劇場で観てきました。どどーんとIMAXで。
そして、今回は泣けました。ホッ
で、『鬼滅の刃』。あれがなんであんなに人気があるのか? そこが前から疑問だったのですが、素人なりに考察します。
まず、第一の理由が、身も蓋もないんですがアニメのクオリティーだと思います。
もう「映画かっ!」ってくらいのクオリティーで作られてますよね、アニメ。普通アニメって、手を抜いた回とか、出来の悪い回とかあるもんなんですが、『鬼滅の刃』のアニメって、毎回が神回レベルのクオリティーです。
手抜き一切なし。フルアニメーションばかりです。
あ、フルアニメーションって、すべての画が動くことをいいます。すなわち、上からなぞるコマがひとつもないアニメです。つまり、「口だけ書き変えて喋る」みたいな場面が少ない。
また、絵面も格好いい。
禰豆子ちゃんが鬼化して、着物の裾が割れたりするんですが、太ももが色っぽい。作り手は和服のエロさをよくご存じですねぇ。しかも、和服だと、あの下、何も履いてないから。
で、物語なんですが、プロットとキャラは、かなりパターンを使用してます。どこかで見たようなキャラクター特性、どこかで見たようなエピソード。ただし、絶対に、ここ重要です、絶対にそのまんま使ってないんです。
キャラクターから見てみましょうか。
たとえば、
基本は『噂の刑事 トミー&マツ』のトミーです。
トミーは、ふだんは泣き虫で弱っちいくせに、「おまえは男じゃねえ、おまえなんかトミオじゃない、トミコだ。ト、ミ、コー!」と怒鳴られると豹変し、異様に強くなります。
似たキャラで『忍者戦隊カクレンジャー』のニンジャマンは「青二才」と言われると激怒して変身します。
善逸の場合は、失神すると人格が変わりますが、失神というオリジナリティーが含まれています。
また、その技。
善逸は、ひとつの「型」しか使えません。が、それ故その型を究極まで研ぎ澄ませています。
これは、中国拳法の郭雲深の話ですね。不器用なので、基本の崩拳だけを何年も練習した結果、その拳をだれも止められなくなったというエピソード。ただしこれ、現在は創作であると言われてます。
あるいは、ちょっと古くていいのなら、アニメ『ダッシュ勝平』卓球編のスブリくん。彼は素振りしかできない。コーチに嫌われて、ずうーっと素振りだけやらされてました。
勝平が卓球部と試合するときに、このスブリくんを引き抜いてパートナーに選ぶのですが、基本がしっかりできていて、じつはすげー強かったというオチ。
また、シーンも、どこかで見たようなものが多用されています。
一話冒頭。家族が惨殺されている場面。もう吉村昭さんの『羆嵐』にしか見えません。あの帰宅したら、家族が熊に食い殺されていた場面。実話です。
そして、岩を切るシーン。剣術好きならみんな知ってます。柳生石舟斎が刀で切った岩が柳生の庄にいまも残っていることを。ちょうどおんなじくらいの大きさです。
そして伊之助の刀。ぎざぎざですね。
じつは日本刀は、博物館に展示されている状態は「化粧研ぎ」といって、あのままでは人は斬れません。ホダをとるといって、刃をノコギリみたいにぎざぎざにして使用します。具体的には、砂に突き込んで、人が斬れるようにします。
とまあ、場面とかキャラクターとか、どこかで見たようなものに、オリジナル要素を入れて使用しています。これがどういう効果があるかというと、とても分かりやすいんです。
まったくもってオリジナルはありません。が、どこかからの流用に、オリジナリティーを追加して使用しています。分かりやすく、なおかつ絶対誰かの琴線に触れます。
さらにもうひとつ。
ぼくは三話しか観ていないのに、五話くらい観た気になっていました。内容が濃密なんです。だらけた時間稼ぎ的な筋運びがない。濃縮されています。
全話アニメで観た感想は、こんなような話なら、ぼくにも書けるんじゃないか?というものなのですが、一方で絶対真似できない部分もありました。
これは、さすがのぼくも真似できないなと思ったのは、もの凄い創造力です。
たとえば柱が六人くらい、一気に登場します。六人のキャラクターを作るのは、並大抵のことではありません。名前を考えるだけでも一苦労。そこに、マンガだから当然デザインも必須になる。
バトル・シーンも、どこかで観たパターンが流用されているとはいえ、必ずオリジナル要素があります。これを考え出すのは、大変です。しかも週刊連載の合間に頭からひねり出すその強大な創造力。正直舌を巻きました。
全二十六話のアニメの部分って、単行本十巻にも満たないと聞きました。パターンを多用しているとはいえ、あの濃密な物語を作り出す創造力。これは、もの凄いです。
とまあ、そんなこんなで、ヒットした映画なのですが、これ、ひとつには、最近こういう分かりやすくて勢いのあるアニメがなかったことも大きいと思います。
キャラクターの掘り下げ方も深いんですが、反面、すげー分かりやすい。そして、この分かりやすさを生み出すのが、作者の「詳しさ」なのではないか、とぼくは思いました。
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