第113話 ハリウッド脚本術のミッドポイントを使ってみよう


 よーし、いろいろ投稿してみよう!と思って、手持ちの原稿を整理してみました。


 『刀剣オカルトMØDE』を1ファイルにまとめて、推敲しようとしてみて、気づいたのですが……。


 これ、つまんねー!!(笑)


 なにこの、下らない小説。よくこんなの書いたな、と自分で呆れました。投稿はやめました。

 出してみたら案外だれかの琴線に触れて入賞するかもしれないですけれど、もう推敲するのも苦痛なくらい、自分としてはつまらなかったんです!




 で、現在は『ピーチ+ワン』(仮題)の設定作業を進めています。そろそろプロットに入るかもしれません。一応、投稿用ということで書いています。


 WEB小説として人気で、それを書籍化する。ぼくは詳しくないのですが、その書籍を原作としてコミカライズしたりアニメ化したりといったビジネスモデルを開発して利益を上げているのが「小説家になろう」なのでしょうか?

 で、いろんな企業がWEB小説サイトを作って二匹目のどじょうを狙っている感じでいいんでしょうかね。


 その辺のことは専門外なんですが、しかし、WEB小説がそのまま書籍となり得るか否か。そこはすこし怪しいと思っています。WEB小説と紙媒体の小説ではいろんな部分がちがうと思うからです。


 なので『ピーチ+ワン』は、書籍として書いています。で、そのさいに、ハリウッド式脚本術のミッドポイントを使おうと考えているんです。


 ミッドポイントは、調べるとどこでもだいたい同じ説明です。


 映画は120分だから、それを冒頭の30分、中間の60分、ラストの30分と分割して、中間の60分の中央をミッドポイントとして、そこで重大な事件を起こす脚本製作の手法です。

 ただしこれは、映画の脚本術であり、ストレートに長編小説に応用はききません。つまり、120分という枠が決まっているわけでもない小説で、意味もなくこのミッドポイントで事件を起こしても通用しないでしょう。


 が、やはり面白い小説を映画化したとき、その段階ですでに面白い脚本になっていることは必然です。ならば、小説にもミッドポイントが必要なのではないでしょうか。少なくとも、応用は利くのではないでしょうか。



 ということで、このミッドポイントを小説式に解説します。


 やり方としては、長編小説の物語の中盤で事件を起こします。そしてその事件は、物語の世界観を変える性質のものでなければなりません。

 つまり、長編小説の前半と後半で、物語の世界観を変えてしまおうという話です。



 例をあげましょう。

 このエッセイで何度も例にあげた『涼宮ハルヒの憂鬱』と『ダイハード』で説明します。


 まず『涼宮ハルヒの憂鬱』。

 前半は、主人公キョンが高校入学時に知り合った、ちょっと頭のおかしい美少女ハルヒに振り回させる話。

 ハルヒは入学初日の自己紹介で「このなかに、宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところにきなさい」などと宣言する変人です。

 そしておかしな部活を立ち上げ、キョンのほかに3人ほどいたいけな被害者を巻き込んで変な部活動を開始します。

 これが前半です。


 後半はこうなります。

 ハルヒがつれてきた3人からそれぞれ、キョンは秘密を打ち明けられます。内容は、その3人が本当に宇宙人、未来人、超能力者だったということです。ハルヒは、馬鹿な事を言っていたのですが、それはなんと現実だったのです。



 『ダイハード』にいきましょう。

 武装したテロリストが、高層ビルを占拠します。社員全員が人質になるなか、偶然居合わせたマクレーン刑事はなんとか逃げ出します。が、テロリストに拘束されていないだけで、彼は他の人質たちと大して立場は変わりません。ここを「人質編」としましょう。

 「人質編」では、マクレーン刑事は、なんとか助けを呼ぼうとします。警察や消防に通報して、ビルがテロリストに占拠されていることを伝えようとします。


 『ダイハード』のミッドポイントは、おそらく警官隊がビルを取り囲む辺りではないでしょうか。このあと警察の交渉、突入があり、それらがテロリストには通用しないことが明らかになります。ここから、マクレーン刑事の反撃が始まります。後半は、いうなれば『反撃編』です。


 前半、軍事的プロであるテロリストと戦う意志の全くなかったマクレーン刑事は、ここから火力兵力戦闘能力すべてにおいて勝る相手へ、機転を利かせた反撃を開始します。


 前半と後半では、物語の質が違います。そして、良い前半が、さらに良い後半の面白さを引き立てていることも分かります。



 この、物語の価値観の大転換は、面白いといわれる小説やドラマ、映画では必ずといっていいほど、存在します。


 たとえば、映画『七人の侍』。前半は、野武士と戦うための仲間集め。そして、集められた侍たちと百姓たちのドラマです。

 が、後半は、攻めてきた野武士と侍&百姓の戦争です。


 また、映画『ベストキッド』では、前半はいじめられていたダニエルくんがいじめっ子たちをやっつけるために空手を習いだす話です。が、後半は、いじめとか喧嘩の話ではありません。空手という道を歩き始めた一人の修行者の話です。


 アニメ『機動戦士ガンダム』は、前半は生き残るために必死に戦う少年たちの話です。アムロはがんガンダムの性能に助けられて、なんとか敵を退けています。

 が、後半、徐々に戦闘能力を上昇させた主人公アムロは、やがてニュータイプとして覚醒し、次々と強敵を撃破し、ガンダムの性能がアムロに追いつけなくなってしまいます。



 マンガ『タッチ』のミッドポイントは、上杉和也が死ぬところです。あそこから、話はまったく別物に、いえ、構成されていた三つ巴の対立が、足を一本失うことによって、まるでパズルのように組み代わり、まったく別の対立をいくつも生み出します。



 語りだしたらキリがありません。



 とまあ、こういうような経緯で、このミッドポイントを意識して、つぎの長編を書こうと思っているのですが……。


 言うは易く、行うは難しですね!




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