第7話

 湯上り、真澄は友人にラインのメッセージを送りながら民宿の玄関の前を通った。

 玄関は広めでごちゃごちゃとさまざまなお土産物(売り物ではなく主人の家族が買ってきたものらしい)が飾ってある。薄暗いそこで土産物のひとつ、打ち出の小槌らしいものを指先で触れてみた。

「お風呂上がった?」

 背後から女将さんに声をかけられびくりとした真澄に、女将さんは笑ってごめんねと謝った。

「驚かそうとは思わなかったんだけど」

「いえ大丈夫です」

 微笑んでまだ少し濡れている頭を掻く。

「すごい数ですね」

「民芸品て言うのかな、娘が好きなのよ」

「娘さんいらっしゃるんですか」

 宿の中でそれらしき人は見なかった。

「うん、村の郷土史館ていうので学芸員やってるの」

「そっれ早く言ってください!

 郷土史館なんてあるんだ!」

 あら遊びに行く? と女将さんは玄関の靴箱の上にある薄いフライヤーを一枚とって真澄に差し出した。受け取り見てみれば土偶の展示フェアをやっているらしい。

「このへん土偶出るんですね」

「っていってもむかーーーし一個出たくらいらしいよ。

 それは日本で出る土偶のレプリカとか飾って……なんだったかな土偶の分類とかそういうの? 東北はーとか九州はーとか」

 面白そう、と言って笑顔になる真澄に女将さんは私はさっぱりわかんないわあと笑って台所に向かって行った。

 ふと真澄がスマホの画面を見るとメッセージが届いていた。


 あがって何?

 あかじゃないの?閼伽水とか。これ漢字変換でるんだねウケル


 あか。

 なるほどそんなのもあるな。真澄はワクワクしながら部屋に戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る