第3話

「また来たのぉ」

 呆れた顔で、それでもおばあちゃんは真澄を迎えてくれた。

「来ちゃいましたあ」

 へらへら笑いながらおばあちゃんちの縁側に歩み寄る。おばあちゃんは縁側でそら豆のさやから豆を取り出していた。その隣に腰掛け、暑いですね、と話を始めた。

「あがさまについて詳しくお話を聞ける人をご紹介していただけませんか?」

「詳しくってもさぁ」

 真澄のきらきら目を輝かした様子に怯み、おばあちゃんはため息をつく。おばあちゃんは白髪が多いが年は真澄の母より上くらいかなと真澄は思う。その年代の人が、まるで怖がるように語らない伝承。これだ、たまらない。

「お願いします!

 なんでもいいんです、あがさま関係のことなら小さいことでいいんでご存知のおばあちゃんとかおじいちゃんとか……」

 しばらくおばあちゃんは真澄を見つめて、吐き捨てるように言った。

「あんたなんか勘違いしてるよ。

 まあ、いいけどね、三軒先の美鈴さんに聞いたら」

 猪口美鈴さん、子供小さいから迷惑かけないでね。そう言っておばあちゃんはそら豆に視線を戻す。

「えっお若い方なんですか?」

「……会えばわかる」

 それきりそら豆の作業から見向きもされなくなってしまった。

 真澄は気まずく縁側から立ち上がって軽く頭を下げた。



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