第五世
第九話 蛇
ここに
名は何と申すと思いますか?
まぁ、名は記号のようなモノなので、申す程ではないとよく思っていますがね。
歌がとても上手で、舌がよく回る者でした。
皆に好かれはするのですが、
今やその
失くなって気付く話は聞くだけでは同じことでしょう…
最初は何もない地でしたが、いつの間にやら一本の線が二人分の太さで出来上がったというもので。
ほれ
春は悲しき舞いを思い出し、夏は涙の雨が降り、秋は
冬でも当時は寒さなど無いものですから、それはそれは動物も眠る
ある
知らせが来たわけでもありませぬが、この時心がざわめきまして、何と考えるよりも先にその身が歩を進めさせてしまったのです。
やっと
笛の
着くとその者は
「会えず死してこの首抱かれ、桜の下で舞う者に失われた。」
「やっと届くが遅い声、しかしこの身を捧げて
呟くようにそう申すと、噛み合わぬ会話にやっと気付きまして、そっとその者の手をとりました。
「今、あんたを忘れはしないと誓います。きっと今度は間に
まるで自身の
しかしその者、ほぅっと息を吐きまして、
「すまなかった。ありがとう。」
それからというもの、今度は
お世辞にも双方、上手とは申せませんが、それは双方よくわかっておりましたし、もう動物の顔も見えませんが、どちらも増して楽しげなのですから、気にする
ある
長い間、平和でしたので、少々心にも来る辛さとやらがありました。
しかしこの二人、何か心得るモノがあったのでしょうか。
共にその地を守ろうと、立ち向かいました。
守るべきを守らねばならぬと、しかしその口は笑む。
ある年の冬、二人は並ぶように倒れました。
「次の世は…どんなところであろう……?」
「どんな世であっても……あんたと共に。」
同時に閉じた目、笑む口。
これでも
その年の冬の
触れるとそれは、冷たくしかし温かい。
その雪触れればほんのりと、何処かの
さてさて、始まりは何処だったか。
点と点を結んで線にすれば、何か聞こえてくるんじゃありません?
『大切なモノ程、気付くのは遅い』と。
そろそろ戻るとしますかね。
この世でも共に居られるというのは、何と申してよいやら。
この上なく………。
さて、と……参るといきますか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます