第四世
第七話 猫
ここに
名は
幼き頃から、多くの傷を背負う臆病な者だったと申しましょうか。
今や何処でその身を震わせておるというのか、しかし短く凛と時折此処へ声を見せるのです。
今日死ぬか
とても都合の良い便利な言葉なのですが、オススメは出来ないでしょうね。
「(これは自分じゃない。)」
何度も何度も繰り返し唱えました。
するといつの間にやら
ある
殺さなければ殺される、というルールがそこに在るのではありますが、当然猫はその罪を償わなければなりません。
岩の牢屋に投げ捨てるように入れられてから、数日が経ちました。
あるはずもない、しかししっかと心にある。
血が出ようと、ボロボロの手も気にせずに。
「「俺はあんたと共に。」」
忘れてはならぬと泣きながら。
何日?
どれだけ経ったというのでしょうか?
やっと岩に穴を開け、這い出て必死に走って逃げました。
後になって知ったことですが、この
足は思わなくてもただ一つの場所へ。
やっと目の前に見つけて手を伸ばそうとしたその時でした。
守るべきお人の首が飛んだのです。
今更でした。
今更、思い出し、今更、辿り着いたのです。
あと一歩、間に合いませんでした。
吐き気と共に、
背に矢と傷を負って、遠くへと。
泣きながら走りました。
「あんたと共に……。」
その瞬間、重ねるように。
「(これは自分じゃない。)」
翌朝、首を土の中へ埋めると、手を合わせ、呟きました。
「さようなら。」
その後、
舞うその姿を見た者は、心底悲しくなってしまうのだというそうな。
あんた様が何を探し、何を見つけ、何に気付いてくれるのやら。
「重ねる程に根も色も変化する」と。
一度の終わりも二度の始めとでも申しましょうかね。
それにしても、数だけ在る話と思うと、尽きる瞬間が近く見えるものですね。
その耳しゃんと澄まして……。
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