第二話 虎
名はきっと申さずともよろしいかと。
一つ年上、いや二、三でしょうか。
その者は
しかし忍は呼べば参られるが、いつも見えぬ
風の
それでもその話を忍に
「必ず勝てるんで、いいじゃないですか。」
「何故そう申せる?」
「それはナイショ。」
楽しげに一つ指で口を当てる姿を見、
さて、
「あんたのせいで幸せだ。」
どうしてくれんの?、とでもまた申しそうな顔は何かの冗談ではないように思えたが、それと同時に忍のその初めて申す本音の様子に、これが最後かというつもりでかからねばと思わされたのだった。
傷を負った
それは秋のある日であった。
「これが最後の仕事……ですかねぇ………。」
忍がそう小さく申し、とどめを刺そうという者を忍術であろうか影で遠退かせてしまった。
「最後くらいはってことで、お許し頂けませんかね。」
「あぁ……。」
忍の声は、いつも通りの様子ではあったのだが、よくわかっていたのだ。
「あの世は……どんな所であろうか……?」
「……どんな所だとしても…あんたと共に。」
それきり忍の声は無かったが、
ただ、
語るというのは、あまり得意でないのでな。
しかし、あやつは何処へ行ったのだ。
この話はつまらぬやもしれぬが、そもそも面白可笑しい話なぞ、持ち合わせておらぬ
あやつが招いた理由を知っておられるか?
不思議なものだな……。
人というのは帰る場所、帰りを待つ者、あるいは、共に歩む者が居ると、どんな時でもあのようでいられるという。
次の話に参りましょうぞ……。
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