初めての仲間

 旅に出てから気づいたことがある。食糧の確保、水分の確保、時には体も洗って。とにかく、することが多い。全て一人でこなしながら、涙の滝に行くのはだいぶきつい。来てみて思い出したが、僕はインドア派だ。車も通れない、危ない、道が細い、そんな最悪な道をずっと進んでいると、頭がクラクラしてくる。

「うわっ!」

 足が滑り、体が宙を舞う。

痛い。崖から落ちている。

怖い。何も出来ない。

「うっ......わっ!」

 何か柔らかいものに当たって、体が弾んでから地面に落ちた。目を開けてみると、そこにはテントがあった。

「このテント、誰のだろう?テントを張ってるから、何日かここに居るのかな?多分僕よりもここについて詳しいと思うから、安全な行き方を聞いてみようかな。」

 待っていると、下着姿の女の子が歩いてきた!?

「ちょっ!ちょっと待って!」

 ビックリして、つい、大きい声を出してしまった。とっさに隠れたが、もう遅いだろうな。見た目は自分と同じくらいの年か?

「えっ!ちょっと信じられない。女の子のテントの前でなにやってるの?」

「いっいやっ。実は、あそこの崖から落ちてきたんだ。」

「あそこ?ってすごく高いところね。でも、あんなところ歩いて、何やってたの?」

「実は、サザレムを採りに、涙の滝へ行くんだ。君は?」

「えっ!涙の滝?そこは私も行くの。でも、サザレムじゃなくて、涙の滝の水をとりに行くんだけど。滝の水シリーズを全部集めると、死んだ人を一人生き返らせれるの。もし良ければ、一緒に滝まで行きませんか?一人じゃ心細いから。」

 滝の水シリーズか。噂できいたことあったかな?確か、涙の滝と、怒りの滝と、金の滝と、死の滝の4つだったな。でも、1年以内に4つ集めきらないと意味がないんだよな。

「一緒に行くのは別にいいけど......。」

「ねぇ、待ち伏せ野郎。あんた、名前なんて言うの?」

「しんきゆう。新しいに普通の木、あとは優しいで新木優。君の名前は?」

「私は佐倉夏希。親しみをこめて、お互い名前で呼びあいましょ。」

 別に名前で呼ばなくてもいいけど、ガッツリ下着を見てしまったし、拒否権はないか。

「夏希は、旅してどれくらいなの?」

「まだ....1日目よっ!」

「えっ!1日目?」

 自分も長くはないが、1日目か~。あれっ?夏希は何をしているんだ?

「ちょっと待って、まさか、そのおでん缶食べるつもり?」

「当たり前でしょ。............まさか、優も食べたいの?」

「そうじゃないよ。缶詰は長くもつから、本当に何も食べるのが無いときに食べるものなの。」

「食べる物なんてどこにもないじゃない。」

「いっぱいあるじゃないか。この木の実もあのキノコもきちんと洗えって焼いたりすれば、食べられるよ。」

 本当にこの人と一緒でも、大丈夫だろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る