あの薬草を手に入れるまで

寝起きの狼

薬草"サザレム"

 僕は東京生まれ、東京育ちの高校生。電子機器の発達で、何不自由なく過ごしてきた。そして、こんな日々がずっと続くものだと思っていた。

 僕の幼なじみの結衣は、生まれつき病気を持っていた。しかし、どんな病気も電子医療で治ってしまうこの時代では、何の問題もなかった。(電子医療とは、病気に合った電子を体内に入れることによって、病原体を倒すもの) しかし、電子医療が進むなか、新しく電子アレルギーというものが発見された。ある特定の電子が体内に入ってくると、炎症を起こしてしまうのだ。そして、結衣も電子アレルギーを持っていた。それも最悪ことに、結衣の病気を治す電子のアレルギーだった。

 結衣の病気を治すのには、"サザレム"という薬草がなければならないらしい。その薬草は、誰も行ったことがない、いや、誰も行くことが出来ないくらい恐れられている場所"涙の滝"にあるのだ。医者は結衣の余命を宣告した。もって半年。いつ死んでもおかしくないと。

 だから僕は旅に出た。誰も行こうとしなかった涙の滝へ。結衣とまた遊びたいから。結衣の笑顔をまた見たいから。どんなに辛いことがあっても、絶対にサザレムを持って帰ってくる。そう心に誓った。

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