158 禁断の箱ともう一つの箱

 禁断の箱ともう一つの箱


 封印の間の中は真っ暗だったけど、その部屋の真ん中には不思議な光を放つ一本の木が植えられていた。

 その木は不思議な淡い七色に輝く光を自らの体の内側から放出している。

 夜の時間に七色の光を放つ不思議な木のことをメテオラは本で読んで知っていた。それは成長した魔法樹の特徴の一つだった。実はこの木は黄金の民である王族のお姫さまが(年齢的にアネットではない)、古き森にあった先代の魔法樹の枝を折って燃える森から持ち出したもので、それをこの新しき森のお守りとしてこの地に根付かせた木だった。

 古き森の魔法樹はすでになく、この木はあくまでその力のかけらを宿しているだけの枝木に過ぎないのだけど、それでもこの木に残されていた魔法樹の力は森を復興するときの魔法使いたちの魔力の源になったのだそうだ。

 そんな不思議な木を横目に見ながら、メテオラは部屋の中を歩いていく。

 すると、そこには箱があった。

 とても小さな箱だ。まるでオルゴールのようだとメテオラは思った。

 ……あれが禁断の箱なのだろうか?

 そうメテオラが思ったことには理由があった。

 なぜなら、黒い台座の上には『箱は二つ』置いてあったからだ。しかも、左に置いてある箱は閉じたままだけど、右に置いてあるもう一つの箱のほうは、……すでに蓋が開いていた。

 箱が開いている状況を確認して、メテオラはすごく驚いた。

 メテオラの目が闇に慣れて、部屋の中の様子がわかるようになってきた。

 封印の間は円形の形をした部屋だった。

 その中央に七色の光を放つ魔法樹の枝木があり、その部屋の一番奥の台座の上には、小さな箱が二つ並んで置かれていた。

 その小さな箱の前には二人の魔法使いの影があった。

 メテオラはその影たちの近くまでたどり着いたところで、ゆっくりと立ち止まった。

「……メテオラくんですか?」と声が聞こえる。

 メテオラはとんがり帽子のつばをくいっと上げて、その魔法使いの顔を確認する。

 不安そうな顔をして、封印の間の中にやってきたメテオラにそう声をかけてくれたその魔法使いは、メテオラとは久しぶりの再会となる、……モリー先生だった。

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