104
二人が灰の谷の入り口に足を踏み入れたとき、空からぽつぽつと冷たい雫が落ちてきた。
それは雨だった。
ついに空は我慢しきれずに、地上に雨を降らせてしまったらしい。
降り出した雨の勢いは次第に強くなっていく。
遠くに一軒の小屋が見えた。
モリー先生の暮らしている小さな小屋だ。
ニコラスは慌てて小屋のほうに移動したのだけど、メテオラはなんとなく、不思議とこの冷たい雨に体を打たれていたい気分になっていた。
「メテオラくん、なにしてるの!? 風邪ひいちゃうよ? ほら、こっちに来て」と言って、ニコラスがメテオラの手を掴ん雨の中を駆け出していく。
そのままメテオラたちはモリー先生の小屋の玄関前まで移動した。周囲からは、ざーっというとても大きな雨の音が聞こえてくる。
外はもう豪雨となっている。
振り返ると、もう遠くの景色は雨に邪魔されて見えなくなっていた。
メテオラは小屋のドアをとんとんとノックした。
もちろん、そこからはモリー先生が顔を出すものだと思っていたのだけど、無言のまま開いたドアの向こうにはなぜかアビーがいた。
「アビーくん?」
メテオラとニコラスはアビーの顔を見て驚いた。
「……どうぞ」
アビーは驚く二人をよそに、メテオラとニコラスを小屋の中に入れてくれた。
小屋の中にはランプが灯っていて、とても明るかった。
そのオレンジ色の暖かな光が、灰の谷に足を踏み入れてから、いつの間にかメテオラの周囲にあったもやもやとした暗闇のようなものを見事に全部吹き飛ばしてくれた。
メテオラたちは雨の雫を滴らせていた。なので二人は小屋に入る前にとんがり帽子や濡れたローブの水をぎゅっと両手で絞った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます