108 魔法学校のお泊り会

 魔法学校のお泊り会


 魔法使いたちが現在暮らしているこの新しき魔法の森には人間の国と交流を持っていた古き森の時代に根付いた人間文化の名残のようなものが今もたくさん残っている。

 たとえばメテオラたち魔法使いは『神さま』という言葉を日常生活の中で自然と口にしたりする。だけどそれは『運命的』という意味で使っているだけで、森で暮らす魔法使いたちは森の外で暮らしている人間たちのように本当に神さまの存在を信じているわけではなかった。

 この神さまという言葉は『本来の意味を失って、その言葉だけが残っているという人間文化の名残の一例』ということになるのだろう。そういった言葉や習慣はいたるところに残されている。

 そして、そのもっとも代表的なものに月日の数えかたがあった。

 森の魔法使いたちの過ごす一年の暦と外の人間たちの過ごす一年の暦は同じ暦だった。

 それは一年だけでなく、月も、週にも、日も同じだ。

 魔法の森には十二の月があり四季があった。それは多少のずれはあるにせよ古き森の時代も、この新しい森の時代も一緒だ。

 魔法使いの森でこうした年月や月日の計算をして年間の日数を合わせることはとても難しく専門家が必要で、今は時計塔と呼ばれる建物で暮らしている天文学者の魔法使いさんが一人でその作業を行っているらしい。メテオラはその魔法使いさんのことをよく知らないのだけど、すごい魔法使いさんなのは間違いないだろう。

 眠る前に読んだ天文学の魔法書の内容を思い出しながら、メテオラは夢の中でそんなことを考えていた。


 夏の長期休み。

 誰もが憧れる季節である。

 普段は真面目なメテオラも、この時期だけは少しだけ気が緩んでしまう。なにせ魔法学校がお休みなのだ。

 だからメテオラは朝早くに起きなくてもいいし、もう少しだけ朝寝坊もできるし、起きてからも、ゆっくりと好きなだけ、ぼんやりとして一日を過ごすこともできる。

 ふふふ……、とメテオラは頭の中でそんなことを考えて、ベットの上でごろんと転がり二度寝をする。

 しかし、そんなメテオラの甘い考えは次の瞬間「メテオラ! 起きない!」というマグお姉ちゃんの声とともに一瞬で吹き飛ばされてしまった。

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