85 魔法新聞パンプキン 号外その一
デボラとアビーはそのまま今度は最高速度で空の中を真下に降下し始めて、そのままニケー先生から逃げ切ろうと企んでいる。
ニケー先生は強引に杖を倒して下降しようとするがどうしても加速が止まらない。
でも、それは普通の光景だった。デボラたちのほうが異常なのだ。
それでもニケー先生はメテオラの予想よりも数秒早く体勢を立て直して空の中を下降し始めた。この辺りはさすがとしか言いようがない。
しかしそのとき、すでにデボラとアビーは魔法学校の正門に突入していて、その姿は魔法学校の中に消えていた。それを確認してニケー先生は追撃を諦めたのか悔しそうにばしばしと二回、自分の杖を叩いてから、空を飛び、魔法学校の正門の中に消えていった。
それを確認して、メテオラたちは誰もいなくなった正門前にそっと姿を現したのだった。
「朝からすごいものたくさん見ちゃったね」とニコラスがつぶやく。
「ええ。本当にすごかったです」とメテオラが返事をする。
「僕、ニケー先生が振り切られるところ初めて見ました。本当にびっくりです」
メテオラたちは今、正門前の出来事のあとでデボラとアビーを追わなければいけないというマリンと一階で別れて、星組の教室がある六階まで螺旋階段を上っている途中だった。
マリンと別れる際にマリンは自分が隠れて写真を撮っていたのは、実はまだ魔法学校の敷地内での撮影の許可が正式に下りていないからだと教えてくれた。マリンは許可が下りるのを待つつもりだったのだけど、デボラとアビーがどうしても自分たちがパンプキンを配っているところを写真に撮って欲しいとマリンにお願いしたそうだ。
そんな会話をニコラスとしながら階段を上っている途中で、メテオラはふと、……そういえばあの女の子はどこに行ってしまったのでしょう? と思った。
小さな魔法使いの女の子はみんながデボラたちとニケー先生の攻防を見ている間に、いつの間にかいなくなっていた。
魔法学校の正門付近を見渡しても、その姿はどこにも確認することはできなかった。
魔法新聞パンプキン 号外その一
魔法学校に出る幽霊について
魔法学校で目撃されるようになった幽霊の噂は、噂が噂を呼んでさまざまなものがある。その中にある一人の女の子の魔法使いの幽霊の目撃証言が興味深かったので、ここで記事にすることにする。
その女の子はよく地下にある図書館で目撃されることが多いようだが、図書館以外でも、学校中、いろんなところで目撃されたという噂話がある。
それは食堂であったり、教室であったり、中庭であったり、正面玄関付近であったり、孤児院の中であったりと様々だ。
この女の子が本当に幽霊なのか? もしくは噂を利用した魔法学校の生徒の誰かの悪戯なのか? それはまだわからない。
しかし、興味深いことは確かだ。
これから取材を続けて、できれば、この幽霊の女の子を見つけて、その本人からインタビューをとってみたいと思っている。
続報を待て。
記者 ワルプルギス
魔法学校職員室にて検閲済み。この新聞に発行許可は与えられない。この記事は潔く廃棄するべし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます