86 魔法樹
魔法樹
今日は魔法学校が長期休みに入る最後の日なので、授業は午前中だけだった。
メテオラたちは今日の午後は、マシューの研究室にお邪魔することになっていた。マシューはいつでもいいと言ってくれたのだけど、結局、マシューのお誘いを受けてから一ヶ月近い時間が経過してしまっていた。
天才魔法使いであるマシューは本当に忙しい毎日を過ごしているのだ。
マシューとの待ち合わせ場所はお昼の食堂だった。
メテオラたちは六階までたどり着いて螺旋階段を降りて通路の上を歩き出した。
「でも、そんなこと実際にできるのかな?」とニコラスが言う。
ニコラスが言うそんなこととはマリンが去り際にこっそりと教えてくれたデボラとアビーの得意技のことだった。
「できるもなにも、実際にやっていましたよ」メテオラが言う。
「だって僕にはデボラくんとアビーくんの姿が途中から見えなくなっちゃたんだもん」とニコラスは拗ねる。
「ねえ、メテオラくん。もう一回説明してよ」とニコラスが言う。
メテオラは自分の見た光景とマリンの話を要約して、ニコラスに説明を始める。
「僕もマリンさんの説明を聞いて二人の動きが理解できたんですけど、どうやらあの瞬間、先頭のアビーくんが加速をやめてふんわりと空の中に浮かんだらしいんです」
「でも、それじゃあ、後ろのデボラくんとぶつかっちゃうでしょ?」とニコラスが言う。
「だから、アビーくんがすごいんです。ずっとデボラくんに注目していましたけど、空の中で主導権を握っていたのはアビーくんだったらしいんです」
「うんうん。それで?」
「それでですね。アビーくんはデボラくんの力に流されるようにふんわりと体を移動させながら、デボラくんと空中で手をつないだらしいんです。これがあの二人の得意技ってやつですね。一人では絶対にできない運動を二人で協力して生み出すんです。アビーくんに掴まれたデボラくんはぐるっと空中を回転してその方向を真上から真下に変えました。ニケー先生は一人なので、急ブレーキをかけたんですが、旋回が間に合わなかったというわけですね」
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