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「あ、あの、それって、いいんですか!? 魔法樹の苗は、観察も持ち出しも禁止ですよね!?」

 アネットがメテオラたちを代表して質問する。

 古き森から持ち出された魔法樹の種。

 その種から魔法樹の苗を誕生させたことこそが、天才魔法使いマシューを、天才と言わしめている偉業だった。

 現在も、森の大人たちの協力のもと、魔法樹の苗はマシューによって、将来この新しき森の魔法樹へと成長させるために大切に保管、研究がされている。

「魔法樹の苗の管理は僕に一任されているので、大丈夫です。僕なりのみなさんへの信頼の証ですよ。待ってますから、ぜひ、顔を見せに来てください。僕の研究室は十一階にあります。魔法樹の苗に直に触れ、それをよく知ることは、みなさんにとってもよい勉強となるはずですよ」

 十一階? それだけでもすごいことだ。

 メテオラたちは改めて、マシューの凄さに驚いた。

 年齢は一緒で、同期の魔法使いではあるが、未だ空も飛べない落ちこぼれのメテオラたち星組の生徒と比べると、なんだかマシューははるか遠いところにいる、憧れのような存在なのだと思ってしまった。

 マシューはそう言ってにっこり笑うと、それからメテオラたちに軽くお辞儀をして、通路の少し先で待っていたシャルロットのところまで、ゆっくりとした足取りで歩いていった。

 それからメテオラたち三人はいつもの星組の教室に向かって移動を開始した。


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