47

 その魔法使いさんの姿を見て、誰だろう? とメテオラは疑問に思った。

 すると見知らぬ魔法使いさんがこちらをゆっくりと振り返った。

 その長い髪のせいなのか、それとも大きな帽子のつばが太陽の光を遮っているせいなのか、背の高い魔法使いの顔には暗い影がかかっていてよく見えなかった。でもその暗い闇の奥から二つの大きな漆黒の瞳がじっとメテオラの顔を凝視しているということは、なぜか感覚的に痛いくらいにメテオラに伝わってきた。

『……君が、メテオラくん、……だね?』

 くぐもった声が闇の奥から発音される。

 その瞬間、メテオラは『顔の見えない魔法使いさん』のまとっている分厚い嫌な感じのする威圧感のようなものに圧倒されて全身に衝撃が走り、なぜだか動けなくなってしまって魔法使いさんに、はい、そうです、と返事をすることができなかった。

 じりじりじりじりーーー!! 

 そんなけたたましい警報が学校中に鳴り響いたのはそんなときだった。

「な、なにー?」

「なんですか? いったい?」

 ニコラスとアネットの声。

 ざわつく通路。いろんな教室から生徒たちが異変の正体を確かめるため通路に飛び出しているようだ。ニコラスもアネットも急いで通路に飛び出す。はっと我に返ったメテオラも二人のあとについていく。

 警報ベルはそのあとすぐに鳴り止んだ。それからすぐに校内放送がかかり、『今の警報は誤報です』という内容のアナウンスがされて、騒ぎは一応収まった。

 メテオラは先ほどの魔法使いさんの質問にまだ答えていないことを思い出して、教室の中に目を向けた。でもそこにはもう見知らぬ魔法使いさんの姿はなくなっていた。

 メテオラはぱちぱちと目を見張った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る