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 気がついたときにはメテオラはいつの間にかなにもない真っ青な空の中を光り輝く太陽に向かって一直線に飛んでいた。とても強烈な加速度を体に感じる。それでも杖から振り落とされなかったのは、今までの何百回という数え切れないくらいの失敗の経験によって体に刻みこまれた無意識の反射運動により、体をぎゅっと縮ませて杖にしっかりとしがみついていたからだった。

 メテオラの耳には、ぎゅーーーーーーん、という風を切る音しか聞こえない。それにメテオラの視界はその後方に熱せられた飴のようにぐにゃぐにゃと溶けて流れていく。

 ……速い。……凄まじい速度だ。……ま、魔法力の制御なんて……、まるでできそうに、ない。

 なすすべもないまま、メテオラは青い空の中を遥か上空に向かって一直線に飛び続けている。どうすることもできない。魔法力が完全に暴走している。

 もしかしたらこのまま僕はこの星の外側に飛び出してしまうのではないか? とそんなことをメテオラが考え始めたときだった。

 すべての力を使い果たしたかのように……、杖の加速が急にぴたっと止まった。おそらく、メテオラの魔法力が一時的に空っぽになってしまったのだろう。速度を失い、世界が通常の色と音を取り戻す。

 メテオラはとりあえず、杖が止まってくれたことによかったと安心する。しかし、それはほんの束の間の安息でしかなかった。当たり前のことだけど、推進力を失ったメテオラの体は星の重力に引かれて下方向に向かって真っ逆さまに自由落下をし始めたのだ。

「あーーーーーー---!!」というメテオラの叫び声が、そんな青色の平和な空の中に響き渡った。

 メテオラは浮力を失った杖にしがみつき、それから肩にかけているカバンがどこか遠くに飛んでいかないように、抱きかかえるようにして必死でそれを掴んでいた。

 そのままメテオラの体はまず、真下にあった雲の海の中にずぼっと落っこちた。

 それからしばらくの暗闇を経験して厚い雲の海をつき抜けると、今度は真下に一面緑色の海のような慣れ親しんだ魔法の森の風景が見えてきた。

 ……このまま地面の上に落っこちたら、さすがにいつものように怪我をするだけではすまないだろう。

 これは非常にまずい事態だった。

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