高校生編シーズン2〜メア編〜 第五話『光』

肇がルーシャに願いを託したその直後。

そこはいつもの研究部の部室である理科室で、その場には深刻な顔を浮かべた優弥とこころとルーシャ、そしてデバイス越しに話す愛奈がいた。


「あいつが身体を乗っ取られた!?」


優弥から現状ましろがどうなっているか聞かされたこころが叫んだ。


「一体いつからよ…。最近戦ってなんていなかったでしょう?」


「…いや、俺たちが考えているもっと前にはあいつはもうましろじゃなかったのかもしれない。」


優弥は傍にある小さなカレンダーに目を向ける。

そこにはましろが可愛らしく丸をつけた日にちがあった。


「…考えられるのは水族館の日…?待ってもう数週間前の話じゃない。別におかしなことは特に…」


「…全くなかったわけではないが、改めて指摘するような違和感を感じるような部分はなかったな…。…迂闊だった。」


「たぶんユウヤやココロ…。家族やしーちゃんに近い人には違和感がないように演じていたんだと思いますわ。」


身近な優弥とこころ、そして家族にも悟られていない事を考えてルーシャは推測した。


「だから肇や、ベル…あんたが異変を感じたのね。念入りなのか抜けているのか…」


『なんにせよ。奴をどうするかだろう。お嬢の言葉が真実ならまだ取り戻すチャンスはあるかもしれん。しかし…我々には戦力がない。』



通信越しに愛奈が語るように、肝心の主力であるましろ…レヴェリーヴァイスが不在な今、彼らに戦う手段はこころがもつクリムハートだけ、しかし簡易的な変身ヒロインでしかないそれが幹部に通用しない事はその場にいた誰もが理解できた。


「しーちゃんのライザーはユウヤが今は持っているの?」


「え?あぁ、あいつから預かって今は俺が二つ共持っているが。」


優弥の返答を聞いて、ルーシャは少し考えたあと優弥に問いかけた。


「…ねえ。一つ。わたくしに使わせて。」


「まさかあんた、変身する気ななの!?」


こころの問いに、ルーシャは小さく頷く。


「…残念だが無理だ。こいつはましろ以外をレヴェリーヴァイスには変えてくれない。いくらお前でもあいつでない以上は…」


優弥の言葉を遮るようにデバイスから警告音が鳴り引いた。


『神崎。キメラ兵反応だ!奴ら動き始めたぞ!!』


「やっぱり、この数ヶ月の静けさは奴がましろを罠にはめる計画を実行する為の罠だったか!」


「…っ、私が行ってもキメラが相手じゃどうにも…」


クリムライザーを見つめるこころ。

レヴェリーヴァイスと大きな差があるその力では太刀打ちできないことを悔やむ。


「…ユウヤ。お願い。わたくしにライザーを。」


「…。」


「このままじゃ、誰かが犠牲になってしまいますわよ?」


「…条件だ。ライザーをお前に渡す。でも、『ここで』変身して行け。できないなら別の作戦だ。わかったか?」


「…ええ。かまわないわ。」


ルーシャの意思を見て、優弥はライザーを彼女へ手渡した。


「スフィアライザー…!久しぶりね。」


ルーシャはそう言葉を漏らすと、ライザーの電源を入れた。

ましろであれば起動すると、ライザーに仕込まれた結晶が強く輝くが…。


「反応なしか…」


ルーシャの手にあるそれは一切の輝きも持たなかった。

優弥が諦めに近い反応をみせるも、ルーシャはまだ諦めていなかった。

そっとライザーを胸に当て、目を閉じて彼女は願う。


(お願いスフィアライザー。貴女には私と優弥の全てが…いいえ…、しーちゃんと私達三人の想いが詰まっているの。)


そう。

スフィアライザーを完成させたのは優弥が碧明高校に赴任する前。

そこには研究に夢中になる彼と、傍では彼を手伝うルーシャの姿が確かにあった。


(しーちゃんを助け出すまで、それまででも構わない。…わたくしに…貴女の力を貸して!)


その時、ルーシャの胸元。

スフィアライザーの結晶が彼女の想いに答えたかの如く、強く輝いた。


「嘘!?アイツ以外にも反応するなんて!?」


ルーシャは優しく微笑むと、ましろのようにそれを天に向けて掲げた。


「行きますわよ!《オーバールミナス!ロード!!アクセラレート!!》」


眩い光に包まれたルーシャ。

その暖かな光は瞬く間に彼女の姿を変えた。

輝く金髪は穢れのない銀髪に。

そしてレヴェリーヴァイスを思わせるスーツに身を包み、彼女の頭部にはティアラが装備されていた。


「ルーシャ…お前…。」


その光景には、優弥も驚きのあまり言葉を失った。


「凄いですわ…これが、レヴェリーヴァイスの力…。しーちゃんはこの力で敵と…。…ユウヤ。時間がないですわ。わたくしは現場に向かいます!!」


「あ、ああ!わかった!!お前と敵のデータは作成しておく!…識別コードは…レヴェリーヴァイスじゃ紛らしいな…。レヴェリー__。」


「__ルフレ。レヴェリールフレ!作戦を開始しますわ!!」


窓を開けて飛び立つレヴェリールフレ。

こうしてレヴェリーヴァイスという光を失ったこの地に新たな希望が誕生した。

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