ショートショート
自給のいいバイト
「あの、いいんですか?」
「はい、採用します」
「それで具体的に何をすればいいんですか?」
「とりあえずこちらの椅子へどうぞ」
「え、でもその椅子貴方が座っているじゃありませんか?」
「ええ、私は立ちますから、あなたが座ってください」
「はあ、でも、何のバイト? ネット掲示板では、簡単なバイトですよってしか教えてもらえなかったんですが」
「ああ、実に簡単ですよ。その掲示板、私が書き込んだものです」
「それでなんですか? あ、ちなみに時給2000円ってホント?」
「ああ、それは本当ですよ。口座に振り込まれます」
「ア、そうなんですか」
「そうなんですよ」
「それでバイト内容は」
「まあ、やればわかりますよ」
「そうですか。って、アレ貴方はどこに行くんですか? 俺はどうすればいいんですか?」
「ああ、私ですか? 私はこの部屋から出て行くんですよ」
「はあ、それで俺は何をすればいいんですか?」
「簡単ですよ。次にバイトの面接者が来るまでそこに座って待てばいいんですよ。まあ、面接試験管がバイトの内容ですかね。ちなみに、私は5年間ここに座っていました。前の方は8年間居たそうです」
「え、ちょっと?」
「それじゃあ。あ、安心してください。時給2000円はホント。ずっとネットバンキングで口座確認していました。9000万近く振り込まれていますね」
「え、え、え、え、え。チョット、待って。え? なんで、なんで椅子から離れないんだ。え、なにこれ。食事はどうすればいいんですか! トイレは!」
「馬鹿ですね。正社員でもないのに、食事代やら交通費やら出るわけないでしょう。残念ながらトイレ休憩もありません」
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