第10話『居眠り厳禁』

四月十日。

 今日から学校が始まる。

「(眠い……昨日遅くまで起きてたのが祟ったな……)」

「昴君、大丈夫?」

「アンタ、顔がゾンビみたいよ?」

 昴の顔は、生気を根こそぎ吸いとられたような顔をしていた。遥華の『顔がゾンビみたい』というのも、あながち間違いではない。

「いや、大丈夫……。授業で寝るから……」

「全然大丈夫じゃないから。むしろ授業中に寝るのが問題じゃないの?」

「そうかなあ……?」

「うん。僕も問題だと思う」

「うーん……」

 なるべく授業中は起きていようと心に決め、昴は学校に向かった。




「……寝ている者がいるな。隣の者は、そいつを叩き起こしてやれ」

 授業中は起きていようと心に決めたはずの誰かさんは、隣の女子にど突かれ起床。

「……天田。お前には、宇宙飛行士としての自覚があるのか?」

「……あります」

 秋穂に睨まれ、身を縮めながら、昴は口を開いた。

「あるのなら、居眠りなどするな。一般人の私が言うのもなんだが、自分の体調も管理出来んヤツに、宇宙に行く資格は無い。……では、次に進むぞ。教科書の十二ページを開け」

 昴を注意した秋穂は、再び教壇に戻り、黒板にこんな事を書き出した。


『太陽系について』


「まずは宇宙の中の太陽系。我々の住む場所について学ぶ。図鑑のような事しかやらんが、居眠りは許さん。しっかり聞くようにな」

 秋穂は昴を一瞥し、念を押す。

 どうやら目をつけられたようだと、小さくため息をつく昴。

「まずは太陽。太陽系の全ての惑星は、この太陽を囲むようにして公転している」

 電子黒板に、煌々と燃え盛る太陽の姿が映し出された。

「この太陽は、地球の約一〇九倍の大きさを持ち、六千度以上の温度となっている。追って教えるが、コロナや太陽フレアはそれ以上の温度だ」

 次に、太陽を輪切りにした画像が映し出された。

「これは太陽の断面図だ。……おい、居眠りするなと言ったろうが。……まあ良い。この太陽核を中心として、放射層、対流層、光球、彩層というように続いていく」

 太陽についてはまだ分かっていないことも多く、太陽観測機『SOHO』が打ち上げられて二十年以上経った今も、科学者達の研究の対象となっている。

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