第7話『星天寮』

『星天寮』は、学校から程近い場所にあった。

 周りには緑もあり、コンビニもある。中々に良い立地と言える。

「何か、ちょっとボロいな……」

「年季が入ってるんだろうね」

「おう? 新入生か?」

 後ろから飛んできた野太い声。

「あ、はい。宇宙科飛行コース一年の、天田昴です」

「飛行コース一年、粟嶋葵です」

「ほーう。中々良いのが入ってきたな。俺は御崎徹平。この寮の学生長をやってる。よろしくな。お前ら」

「あ、よろしくお願いします。……学生長ってのは?」

「そうだなあ……、ざっくり言えば、寮の模範生っていうか、学生の中で一番偉いヤツ……っつったら分かるか?」

 つまり、この寮に限って言えば、宇宙科学生の中で、最も優れた学生と言える。

「ま、学級委員長以上生徒会長以下な人間だと思ってくれや」

「あの、御崎さん」

「おん? 何だ?」

「『星天寮』の他にも、学生寮ってあるんですか?」

「ああ。あるぞ。男子の飛行、管制コースの学生が入る『星天寮』、整備、航空医学コースの学生が入る『明星荘』、女子の飛行、管制コースの学生が入る『翔宙荘』、整備、航空医学コースの学生が入る『銀河寮』だ」

「詳しいですね」

「学生長会議ってのがあってな。四つの学生寮の学生長が会議を開くんだが、その席でちょいとな」

『ちょいと』が自分には何なのか分からないが、この先輩の事だから、やましいことでは無いだろうと、勝手に推測する昴。

「そうだ。部屋に荷物置いたら、寮を案内してやるよ」

「良いんですか? ありがとうございます!」

 深々と頭を下げる葵。昴も小さく礼を良い、頭を下げた。

「良いってことよ。これから同じ釜の飯を食うんだ。お前ら後輩は可愛い弟分みてえなもんだしな」

 にんまりと笑って見せる徹平。鋭い八重歯が、きらりと光った。

「じゃ、俺達は一旦これで。行こうぜ葵」

「うん」





「……ここか。良かったな。相部屋で」

「そうだね。僕も皆の会話に混ざったりするけど、聞き役だから、いづらかったんだよね」

「俺は単純に、高校で出来た友達が、今んとこお前しかいないからな。赤の他人と組まされたら、どうなってたか」

「あ、じゃあ、昴君は他の人との方が良かったかな? 友達作りのために」

「……いや、この方が気が楽で良いよ」

 部屋の広さは1Rほどで、平均的な広さだ。

 パソコンが二台完備してあり、OSも最新のものらしい。

「ネット繋がってる! おお……」

「……とまあ、部屋の設備の話は後でも出来るし、今は御崎さんのとこ行こうぜ」

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