5-4 VSシュバルト
高さおよそ二メートル、幅およそ一メートルの狭い通路をしばらく進み、長い階段を上って白いドアを押し開けると最初の廊下に出た。開け放たれたままの城の入り口が正面にある。こちらから見たドアは色も質感も壁と同じで、閉まると壁と区別がつかなくなった。
隠し扉というやつだ。カモフラージュも完璧。入り口側にはドアノブ無いしな。
俺は呆然と入り口を眺め、
「まさか、スタート地点まで戻されるとは思わなかった……」
「………………そうだな」
なんだか妙な間を空けてから、背後でぼそっと呟く矢鏡。
不思議に思って振り向くと、矢鏡はいつもの無表情――ではなく、どこか不安げな顔をしていた。
「どうかしたのか?」
と尋ねると、
「え……あ、いや……」
ハッとしてすぐに視線を逸らした。
うっわー、めっちゃあっやしぃー。絶対なんか隠してるよー。
これは『なんとしても聞き出せ』という解釈でオーケー?
俺は右手を腰に当て、追及しようと口を開き――言葉を発する前に止めた。
突然"何か"を感じたからだ。上の方から。
それはとても曖昧で、一瞬のことだった。
だから、思わず天井を見上げた時、何も変わった様子がなかったから、気のせいだ、と流そうとした。
だが、それはどうやら気のせいではなかったらしい。
矢鏡も同じ方向を見ていたからな。
「シュバルト、上にいるようだな」
矢鏡がぽつりと呟いた。
俺は少し驚いて、
「おお! そういえばそんな名前だったな!」
言いつつぽんっと手を打った。
別にどうでもいい情報だから、気分すっきりにはならないけどな!
矢鏡が呆れたような目を向けてきても、俺はまったく気にしないぜ。
というか、それよりも――
「俺もさぁ、一瞬だけ、上からなーんか感じたんだけど……
それってもしかして、あいつの気配……ってやつかな?」
俺が上を指差し尋ねると、矢鏡は軽く首を傾げ、
「……どんな感じ?」
「え? えーっと……」
俺はしばし考えて、
「こう……もやーって感じ……?」
眉間にしわ寄せ、手振りを付けて答えた。
すると矢鏡は、あぁ、と納得したように言って、
「それは魔力を感じたんだよ」
「魔力? 気配じゃなくて? つーか、どう違うんだ?」
「魔力はわざと漏らさない限り、普通は感知出来ない。
気配は隠さなければずっと感知していられるし、下手な奴は隠せない。
で、一瞬感じただけなら魔力。さっき漏れてたし、気配は今もあるから」
「ふーん……」
素直に納得しかけて、ふと気付く。
「あれ? 待てよ……わざと……? てーことは――」
「早く来いってことだろうな」
矢鏡が何気なく言った言葉に、一瞬、思考が停止した。
だがすぐに動きだし、言葉の意味を理解して――
俺の顔に、自然と浮かぶ爽やかな笑み。びくっとする矢鏡。
「あっちから呼んでおいて、時間稼ぎと称し迷路に招待。その次は鉄球と追いかけっこで、その後でかい獣の相手。
挙句、完全に上から目線で『早く来い』だぁぁぁぁぁ?」
こめかみ辺りがひくついているのが自分でもわかる。抑える気もない憤りが、全身からあふれ出ていることだろう。
俺はぐっと拳を握りしめ、
「かんっぺきにおちょくってんじゃねぇか! ゆるさん!」
怒りの形相で叫んで、右奥に向かってずかずか歩く。
「あ……待って華月」
「なんだよ」
ひかえめにかけられた言葉に、イライラしつつも応えて、足を止めて振り返ると、矢鏡が戸惑ったような顔をしていた。
「君は――」
言いかけて、すぐに視線を下ろした。
……? なんだ……?
矢鏡はなんだか迷っているような間を空けて、それから再び目を合わせる。
「君は、殺せるのか?」
意外な質問だった。
「低級やさっきの獣とは違って、魔族や悪魔の姿は人と変わらない。手応えも同じだ。
それでも斬れるか? 感覚が――人殺しのようなものだとしても」
口調はいつものように抑揚がなく、だけど目付きは真剣で。
重苦しいような雰囲気につられて、俺の表情も硬くなる。
しばらく経って、俺は静かに言った。
「それが、さっき言いたそうにしていたことか?」
「……あぁ」
矢鏡が短く答えた。
なるほど。だからあんなに怪しい反応だったのか。
確かにそれは、言いにくいかもな……
「斬れるか、か……」
なんとなしに復唱して、俺は少し考えた。腕を組み、そして言った。
「ま、なんとかなるだろ!」
無駄に明るく朗らかに。ついでにあっはっはと軽快に笑う。
きょとんとする矢鏡に、俺はふっと笑って、
「だってさ、あいつは人の姿をした"化け物"だろ?
元人間だったとしても、人間じゃない。ただの怨霊だ。
それに、殺すわけじゃない。妖魔を倒すってのは、魂を冥府に送ることだ。違うか?」
「……いいや」
矢鏡が小さく首を振った。
「だったら、多分大丈夫だ。殺人はダメだけど、これは人助けで、良いことだからな」
「……そうか」
矢鏡が呟き、俺は踵を返して歩き出した。矢鏡が後ろに続く。
廊下の突き当たりを左に曲がり、迷路と同じように左右の壁に張り付いた燭台たちの間を進んだ。まっすぐ伸びる道の先は小さな部屋になっていて、上へと続く階段が端の方だけ右手に見えている。
俺は少しだけ目を細めた。
人の姿をした化け物――か……
**
『――見て、あれ。地毛なんだって。目の色もおかしいし……
そういえば聞いた? あいつ、昨日まで謹慎してたんだけどさ、からんできた三年の不良達十人くらいを相手に、無傷で返り討ちにしたらしいよ』
『え? うそでしょ? ありえなくね?』
『だよねぇ。なんかね、体育でも浮いてるんだって。力強いし。だから無傷でも不思議じゃないって、男子達が騒いでた』
『やだ……気味悪い……。それもう化け物じゃん』
『ほんとそう。化け物だよ、あいつ――』
**
中学一年の春、クラスメイトの女子達が、教室の隅で話しているのを聞いた。
他人と違う俺を見て、ほとんどの他人は"化け物"だと罵った。
どこに行っても、奇異な目で見られた。
「――ヤなこと、思い出したな……」
思わずぼそりと呟いて、矢鏡が不思議そうな顔をした。
二階に上がり、廊下で出会った悪鬼と死霊を倒した後のことだ。
俺は慌てて笑顔をつくり、
「あぁ、いや……なんでもない」
言って、十字になった廊下から、まだ通ってない三方向を見回した。
誤魔化したからか、矢鏡が追及してくることはなかった。
それから適当に道を選んで進み、部屋のドアをいくつも見送って、三階へ上がるための階段を見つけた。
そして、高い天井より少し低い、かなり大きな木の扉の前で足を止めた。
「ここだ」
扉を向いて、矢鏡が言った。
俺はにっと笑って、
「じゃ、作戦通りいくぞ」
重たい扉を押し開けた。
**
獣と戦った部屋より少し小さく、室内の天井に電灯とかはないのにまるで昼間のように明るい。赤黒い絨毯がまっすぐ奥に伸びて、途中で数段の段差があり、その先には金と赤の王座が一つと、それを挟むように槍みたいな燭台が立っていた。それ以外には何もない部屋だった。
俺達は横に並んで、段差の少し手前で止まる。後ろで扉が閉まる音がした。
王座には、足を組んで偉そうにふんぞり返っているシュバルトがいた。
俺は左手に刀を、矢鏡は右手に杖を現す。
シュバルトがふっと笑った。
「獣の特性を活かすために、部屋を真っ暗にしてハンデをあげたのに……やはり、あの程度の合成獣では相手にならなかったようだね」
俺はハッと鼻で笑い飛ばし、
「当たり前だろ。暗闇なんてせこい手、俺には効かないぜ。見えるからな」
「えっ!? 見えたのか!? あれで!?」
イスから荒っぽく立ち上がりながら驚くシュバルト。さっきまでの余裕しゃくしゃくな態度は一瞬で消え失せた。
おぉ……まさか驚かれるとは。てっきり『あっそう』みたいな軽い反応だと思ったのに。
シュバルトはまたまたふっと笑って、無意味にふぁさっと前髪を払い、
「……まぁいい」
ブゥンッと右手に出現させたロングソードを右手で握り、俺に切っ先を向ける。
「そんなことよりエルナもどき、俺に殺される覚悟をしてきたんだろうな?」
無駄にかっこつけるシュバルトに、ここですかさず俺が言う!
「お前、そんな覚悟するやつが、本当にいると思ってんのか?」
完全にバカにした口調と態度でな!
シュバルトの口元がわずかに引きつった。
俺はやれやれといった感じで、
「かっこつけたいならもっと現実味のあること言えよ。かっこつけて言えばなんでもいいわけじゃないんだぜ? 大体お前はド変態の発言が多――」
「ええい! うるっさい! いいんだよ俺のことは!」
発言を遮って、シュバルトが怒鳴る。短気だなー。
でも、これで怒るってことは……実は気にしてたのか。
と、思ったその時――
キィンッ
シュバルトが立っていた場所に、突起型の氷の塊が現れた!
ちっ……やっぱり避けられたか……
ほんとは俺が奴の気を引いてる間に、矢鏡が凍らせて動きを止める予定だったんだが……凍る前に一歩横にずれただけで避けやがった。
俺はすぐに刀を抜こうとして、抜けなかった。
シュバルトが一瞬で距離を詰めて斬りかかってきて、反射的に後ろに跳びながら刀の鞘で受け止めた。それしか出来なかった。
速い!
正直なめていた。まさか、目がかなり良いこの俺が、シュバルトの姿をほとんど捉えられないとは……これが上位魔族の実力か……
この間にも、シュバルトの攻撃は止まらない。
距離を取ろうと俺が退れば、瞬時に詰めて斬りかかり、動かなければ、回り込んで視界外から斬ろうとしてくる。
ほぼ反射だけでギリギリ受け止めてはいるが、俺の目に映るのは、斬りかかる寸前の、剣を振りかぶった姿だけ。これでは刀を抜く事すらできない。
「思った通り、エルナより弱いな……これなら容易く殺せそうだ」
にやーっと気味の悪い笑みを浮かべ、シュバルトが言った。
うっわ、超ムカつく!
だが、このままだとヤバいのは確かだ。猛攻すぎてそろそろ俺の肉体強化が切れてしまう。まだそんなに長く続かないのが心底悔やまれる。術が解けたらシュバルトの速度に反応出来なくて、次の瞬間には斬り殺されるからな。
さて、どうしたもんか……
考えながらてきとーに移動して、部屋の中央辺りでついて来たシュバルトの横薙ぎを受け止めた。刹那。
「――幻術」
遠くで矢鏡の声がした。
「"
矢鏡が唱えたその途端、シュバルトはぴたっと動きを止めた。
なんだかよくわかんないけど、今のうち!
俺は大きく退って刀を抜いた。それから一度、術を解く。その場から動かずにきょろきょろし始めたシュバルトを視界に入れたまま、扉から少し離れた位置で杖を構えた矢鏡に駆け寄った。
「ナイス矢鏡! でも今の何?」
「幻術。あまり得意じゃないから長く続かないけど……あいつの視界から俺達の姿を消したんだ。だから今は見えないし、俺達の声も聞こえないよ」
横目で俺を見て、淡々と言った。
俺はぱぁっと顔を輝かし、
「マジで! お前幻術使えたんだ!」
「少しだけな」
「すっげー! いいなぁー!」
「それより華月。なんで攻撃しなかったの?」
不思議そうに尋ねる矢鏡に、俺は、うっ、と小さく呻き、
「し、仕方ないだろ。思ったよりあいつの動きが速くて、刀抜く暇なかったんだよ」
正直にそう答えると、矢鏡は呆れた顔をした。
「そのまま殴ればよかったのに……」
「――あ、そっか。やばいな、斬ることしか頭になかった……」
因みに、作戦は次の通りだ。
試しに矢鏡が術を放ち、失敗したら俺が倒す。矢鏡は補助役で、俺が危なくなったら助けに入るって寸法だ。あまりにも変態がムカつくから、俺がこの手で倒したいって言ったら結果的にそうなった。わがままとは言うなかれ。あいつも俺を狙ってんだから丁度いいだろ。
「やっぱり俺も戦おうか?」
気を利かせて(多分)聞いてくる矢鏡に、俺は渋い顔して左右に首を振り、
「いいよ。自分から言い出しといて手を借りたら、超ダサいからな」
言いながらシュバルトの方に向き直る。
シュバルトの目はすでにこっちを向いていた。どうやら幻術が解けたようだ。
「なるほど。今回はそこのクズが邪魔してこないなぁって思ってたけど、そういうことだったんだ」
シュバルトはそう言って俺をじっと見つめ、ふっと笑い、
「やはりいいね、君は。そうやって一人で戦おうとするところが好きだよ」
俺はちらっと横目で矢鏡を見やり、小声で尋ねた。変態発言はもう気にしない。
「……一対一って珍しいの? 普通だと思うんだけど……」
「まぁ……上位魔族相手に単独で戦おうとする主護者は少ないな。それが出来るのは上の中以上の強者だけだし、効率も悪い。だから相方と協力して戦うのが普通」
「ふーん……」
余談だが、上の中以上の強者は、今のところ十人くらいしかいないらしい。少なっ。
俺は鞘を消して、ふーっと静かに息を吐いた。刀を握った右手をだらりと下げ、シュバルトに向かって歩みつつ、
「とりあえず、お前の速さはわかった。油断しなけりゃ倒せそうだ」
自信有りげに言って、にやりと笑う。十メートルほど間を開け、足を止めた。
言っとくけど、はったりじゃないぞ。だって――エルナより遅いから。
今度は俺から距離を詰めた。全速力で背後に回り、両手で握った刀を、まるで野球のバットのように振り切った。刀は虚しく宙を裂き、シュバルトは真上に跳んで避けた。天井付近で器用に回転し、体の正面を俺に向ける。
よし、動きが追えるようになった。こういう相手には目も強化しないとダメだな。
シュバルトは薄笑いを浮かべ、頭上から俺を指差して、
「"グロース・ヴェレ"」
その言葉が聞こえた直後、見上げていた俺の目前に大量の水が現れた。次の瞬間には強烈な水圧が全身を叩き、床に縫いつけられそうになる。
俺はとっさに目を閉じて下を向き、腕以外の体に力を入れて耐えた。冷たい水は十数秒後にぱたりと止み、ヤな予感がしてすぐに目を開け後ろに跳ぶ。目の前で銀の光がよぎった。左側に剣を振り下ろしたシュバルトがいた。
あぶなっ! 勘で避けなきゃ当たってた!
バックステップで距離を取り、刀を構え直す。全身びっちゃびちゃに濡れていたが、高速で動いたため少しだけ水が吹っ飛んで軽くなった。シャツとズボンは肌に張り付いたままだけど。あーうっとうしい。
だが、不思議なことに床はまったく濡れていなかった。シュバルトの向こう側に矢鏡がいるが、濡れているようには見えない。くっそ、俺だけかよ!
シュバルトは切っ先を下げたままこっちに向き直り――その間に、俺は奴の首目掛けて左下から突きを繰り出す。
ザシュッ
――斬れた。
俺は思わず目を見開いた。
シュバルトは開いた左手で刀身を掴み、切っ先が喉に突き刺さる直前で止めていた。
斬れたのは――俺の指だった。
勢いと、水ですべって。刀身に近かった右手がずれて、今は刃を握っている。
右手すべての指の第二関節あたりが、焼かれたように熱く感じる――
その瞬間、頭の中が真っ白になった。
息をすることすら忘れ、動きを止めた俺に向かって、シュバルトが剣を振りかざす。
それは一瞬のことだったのに、俺にはとてもゆっくりに見えた。
次の瞬間、思考が戻り――
「いったぁぁぁぁぁぁぁっ!」
パァンッ
「へぶっ」
あまりの痛さに反射的に刀から両手を離し、思わず右手を振り回したら、近くにいたシュバルトの顔にたまたま裏拳が直撃した――らしい。
シュバルトは変な声と剣と刀をこの場に残し、ものすごい速さで矢鏡の方に飛んでいった。頭から、仰向けで宙に浮いた状態で。数瞬の間床と並行して、矢鏡の左側を通り過ぎ、ぶつかった扉を粉砕して、廊下を挟んだ向こう側の壁に突き刺さった。ようやく止まったシュバルトの体はほぼ見えず、膝から下だけがだらりと垂れた。
大きく目を開けた矢鏡が俺を見ているが、今はそれどころじゃない。
「いったいった! マジ痛い! マジ痛いって! 痛い痛い超痛い!」
頭の中は"痛い"一色。
無意識に左手で右手首をぐっと掴み、指からだらだら血が流れるのを見つめて。自分でも何を言っているのかわからないが、口はずっと動いていた。時折、意味も無いのに手を上下に振ったり、腰をかがめたり、手を上にかかげたりした。
どのくらいそうやっていたのか。それは俺にはわからない。
けど、かなりの時間が経ったと思う。
いつの間にか、矢鏡が近くに立っていた。いつもの無表情で。杖を持たずに。
「華月」
何度目かの抑揚の無い呼び声で、やっと俺の脳に届いた。ようやく少し落ち着いて、俺の両手が血まみれになっていたことに気付いた。床と服にも血が飛び散っていた。
俺は矢鏡に顔を向けて、
「血……矢鏡……血が止まんない……」
自然と声が震える。泣きはしないが、多分青ざめてると思う。
矢鏡は右手を上げ、すっと俺の手を指差して、
「落ち着いて華月。回復、使えるだろ?」
「あ」
一瞬で頭が冴えた。すぐに傷口に意識を向け、言霊を唱えなくても発動した。緑の光が手に集まり痛みが消える。数秒経たずに傷が塞がった。
俺は安堵の息を吐き、血まみれの両手とずぶ濡れの格好を見て、今度はため息が出た。
「――って、そうだ。あいつは?」
慌ててきょろきょろ見渡した。足元近くに俺の刀とあいつの剣が転がっていた。
矢鏡が扉の方を指差し、俺はそれを追うように見た。
壊れた扉と、その先にある廊下に大量に散らばる木片。そして、壁に開いた穴と、周りに入ったひびを。
「凄かったよ。あの手の動きは俺も見切れなかった」
「何の話!?」
なんと、たまたま当たった裏拳だけでシュバルトを倒してしまったらしい。なんでも、その時の俺の速さはエルナ並みだったとか。
――こうして、初めての上位魔族戦は幕を閉じたのだった。
タオルで頭と手の血を拭き、着替えてから部屋を出た。
「え……マジで? お前がやったとかじゃないの?」
実感が無いため半信半疑で、何度も同じことを聞いているうちに、俺達は城の外に戻ってきた。
通路は跡形もなく消えていて、フィルの姿はなかった。
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