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「大した意味はないって。ただゆっくりしたいなって思っただけ。リンは「運転手、でしょ」
よくお分かりで。だって俺もミケも車持ってないんだもん。
「ま、あたしとしても三人で旅行に行きたいって思っていたし良いんだけどね」
なんてリンは鼻を鳴らして言う。そう言うだろうなとは思ったけどね。でもそれだけじゃないさ。
「何か悩み事でもあるの?」
「柄にもないって顔してるな」
「えぇ~それはあたしのことでしょ」
「うん」
そう返すとリンが声を殺して「ククク」と笑った。リンは悩み事が無いんじゃなくて、悩み事を作らないのが上手いのだ。
「悩み事、なんてご立派なものじゃないさ。ちょっと疲れたってだけ」
週に六日は夕方から夜中まで働いて、お客様の話を聞いて酒を作って、休みの日はダラダラして映画を観たり美味い飯を食べに行ったり、ゆっくり風呂に浸かったりして、全部自分為の自分の好きな事をしているって言うのに。
なんて言うのかな、たまに、とてつもなく疲れてしまう時があるって言うか。
「そっか」
「だから美味い飯を食べて、温泉に浸かりたかったんだよ。やっていることはいつもと変わらないかもしれないけど」
それでも、綺麗な景色を見たり、腐れ縁の気を一つも使わなくてもいい仲間と飯と酒を楽しんだり、温泉とふわふわの布団に包まれたりしたかったんだ。
「そんなことないわよ」
いつの間にか真横に座ったリンは、両腕を伸ばして俺の頭を自分の身体に寄せた。
「人間だもの、誰だって疲れちゃう時は来るもの。そう言う時はこうするのが一番」
こうする?
「人肌って言うのはそれだけで特別なクスリみたいなものよ」
「そっか・・・でもちょっとこれは」
「いいじゃないの、おっパフは男のロマンでしょ?」
・・・いや、リンだし・・・まぁでも、
「さんきゅ」
「もっと触っとく?」
「ばか」
折角いい感じだったってのに。ま、これがリンだから仕方ないか。
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