Cotton candy.

カゲトモ

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 急に意識が湧きあがって目蓋を開くと、障子の隙間から差し込んだ月明かりが視界に入った。

 リンの奴、やっぱりちゃんと閉じられてないじゃないか。あんなにちゃんとするからって言っていたのに。

 チッチッチッ、と薄暗い部屋に時計の針が響く。深く息を吸うと特有の畳とクリーニング後のシーツの香りがした。

 俺はこの匂いが好きだ。しっかりとした綿の布団も、ちょっと硬めの枕も。泊まりに来たって感じがするから。

 何度か瞬きをして隣の布団がぺちゃんこになっていることに気付く。もう片方はふっくらと丸くなっていた。

 風呂にでも行ったのか? なんて寝起きにしては覚めた頭で思った。ここは夜中でも貸切風呂があったはずだから。 

 そんなことを思っていると、襖の向こうから鍵を開ける音が聞こえた。あぁやっぱり。

「あら、そうちゃん起きてたの」

「今さっきな。風呂、気持ち良かったか」

「うん。こんな時間だし、ゆっくりさせてもらったわ」

「ったく何度目だよ」

 昨日ここへ来てすぐにも貸切風呂に入っていたし、部屋風呂だってずっと入っていたと言うのに。

「いいじゃないの、あたしはお風呂が好きなのよ」

「つってもそんなに入っていたらふやけるぞ」

 リンは笑うと冷蔵庫から炭酸水を出して口にした。静かに話していたこともあってやけにキャップを開いた音が響く。ミケは微動だにしなかった。

「そうちゃんも飲む?」

「俺は水でいいや」

 布団から出てリンの向かいに腰かけた。風呂上りのリンの肌はしっとりと濡れていてはだけた胸元が色っぽい。裾から覗く組んだ足も魅惑的だ。あぁこれがリンじゃなければなぁ、なんて。

 俺はノーマルの女の子が好きなんだ。第一腐れ縁の男三人で旅行に来ているって言うのにそう言う空気になるなんてあり得ないし。

「ムラムラしない?」

「するわけねぇだろ」

 一緒に風呂に入ったって思わないね。

「そう言えば訊きたかったんだけど、どうして今日旅行に誘ったの?」

「え?」

「だって前から予定していたわけじゃなかったでしょ?」

 まぁそうなんだけどさ。

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