第2話  共に

あれ以来、しばらくは自室で絵を描いていた。

海には行っていない・・・

どのくらいかは、時間の感覚がない・・・


海には行きたい、でも邪魔されたくない・・・

心の中では、わかっいた

(もう、あきらめたろう・・・)

でも、やはり怖かった・・・


数日後、僕は近くの山に登った。

それほど高くない山だが、秋の海同様に、人は少ない。


ここも、1人で絵を描くのに、いいかもしれない・・・


周りを確かめる・・・

(少し、人がいるな・・・)

もう少し登ってみる・・・

人はいなかった・・・

(よし、ここにしよう)


海の時同様に、絵を描き始める・・・

ふーっと息をついた・・・


「やっぱり、ここに来た」

(なんだ、なんだ?)

辺りを見回すが、人がいない・・・

「ここよ、ここ、君の上」

見上げると、木の上にあの子がいた。


「ずっと、待ってたんだよ」

彼女が、飛び降りる・・・


(ここもだめか・・・)

イーゼルをしまい、帰る準備をする。

「どこ行くの?」

「帰る」

「どうして?」

(言わせる気か?)


そう思いながらも、下山し始める。

「待ってよ」

「・・・何か用・・・」

「君の絵、見たいなって・・・」

「・・・冷やかしか・・・」

正直、ムッとした・・・


「違うよ。私は好きな人の前にしか、現れないから・・・」

「リャナン・シーか、君は・・・」

「リャナン・シーを知ってるなんて、君、ロマンチスト」

彼女は笑う。


「安心して、私は人間。命を奪ったりしないから・・・」

「・・・どうもね・・・」

「君、変わってるよね?」

「僕に声を掛けてくる、君も変わり者だよ」

(「意図はどうあれ」は、口にしなかった・・・)


「ねえ」

彼女は手を差し出してきた・・・

「せめて、握手しよ」

「・・・ああ・・・」

それくらいならいいだろう・・・

そう思い手を握ろうとする・・・


すると彼女は、僕の手を握らず、手首を握り、手の、指を見た・・・

「君、本当に絵が好きなんだね」

「えっ?」

「筆まめでいっぱい」

そうやって、手を強く握った。

「つっ」

痛みが走る・・・


「実はね・・・」

「・・・うん・・・」

「私も絵を描いてるんだ・・・友達になってよ・・・」

「何で、僕と・・・」

「もう決定!」

あまりに、強引だった・・・

もう観念するしかないか・・・


僕は、頷いた。


「ありがとう。早速だけど、私は、栗須留乃です。君は?」

「僕は・・・」


この日、初めて友達が出来た。僕はそう思ってる・・・

この関係が続くことを願う自分がそこにいた・・・


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