第11話

 その日は何か行事があるわけでもないのに学校全体に浮ついた雰囲気が漂っていたが、特に大きな問題もなく、普段通り平穏無事に一日が終わり、私は帰宅した。

 自宅でも普段通りにサチが出迎えてくれる。私も普段通りサチに餌をやる。

 テレビを点けると流れてくるのはニュース番組。テロップにこの街の名前があって、私はつい二度見する。

 『H市でネコミミ大量殺戮』というテロップが画面の端に表示されている。

『先月より、H市でネコミミが強姦され、殺害されるという異例の事件が多発しています。また、事件が起きた現場の近くでは黒いジャンバーを着た男がよく目撃されており、警察ではその男が事件に深く関わっているとみて、調査を続けています――』

 ニュースキャスターがニュース映像に合わせてニュース原稿を淡々と読み上げる。

 そのニュース映像には私の知っている場所が結構たくさん映っていた。

 あのプリントに書かれたいたことは本当だったんだな、と私は唖然とした。

 本当にネコミミを殺すだけでなく犯すやつなんているのか。しかもこの近所に。

 私は今自分の膝の上で、頭を乗せてすやすやと寝息を立てるサチを見下ろす。

 この子だけは守らなければ。そんな使命感が湧く。

 自分の命に代えて――とまではさすがに言えないが、それでもサチは私の家族だから、死んだ友人の形見だから、絶対に守らないといけない。どんなやつからも、どんなことからも。

 私はサチの頭を撫で、そして起こさないように静かにギュッと抱きしめた。

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