異世界に到着しました

 心の中でボヤーっとしたジジイの声と会話した後、俺とミツハは生き返った。


 むしろ死んでたと言われても信じられないくらいピンピンとしているな。




 頭上の木々の隙間から覗く太陽の色が、空気の匂いがいつもと違う気がする。




 服は、と見てみればあの日着ていたダークブルーのスリーピースのままだ。


 ふと隣に目を移すと150センチちょっとの身長で、薄いピンクのブラウスにパンツという露出を抑えた服、それでいて出るところはしっかり出ている女の子がいた。ミツハだ。




「なにじろじろ見てるのー? ゴロちゃんのエッチ!」




「いや出るところは出てるなぁって……あぁ! つい声にっ!」




「ふーん…………出るとこに出た方が良さそうだなーなんて」




 ニッコリといった顔でこちらを睨むミツハが怖いです。




「っていうかゴロちゃん……ここどこ?」




 ころっと機嫌を直したミツハ尋ねてくるのでズバっと推理する。


 こういう引きづらないところはいいところだよなぁ。




「まぁ俺の推理が正しければ……森の中といったところかな」




「……。あのお髭のおじいさんの言うとおり、地球じゃない感じがするね。違う世界で……って言ってたのは本当だったんだ」




「ん、ミツハにはじいさんの姿が見えたのか?」




 俺は心の中でボヤーっとじいさんだろうなぁと想像する事しか出来なかったのに。




「うん、見えたよ。ゴロちゃん見えなかったの? 杖を持ってるのがいかにもおじいさんって感じだったけど」




「あ?ああ、見えた見えた。あの杖はさながらカドゥケウスといっても過言じゃなかったな」




「そう?地面に着く部分が四つになってたし、攻撃性より安定性を求めてるって感じしたけど。近所のおじいさんがああいうの使ってるとこ見た事あるよ?」




「そりゃあ近所のじいさんがカドゥケウス使いだったってだけだ」




「うん、そういう事もあるよねー」




 俺の素晴らしい話術で当然のようにミツハは納得したらしい。


 さて、話を進めていくとするか。




「ところでスキルがなんとかって話を聞いたけどどういう事なんだろうな?」




「え、聞いてなかったの? そういえばあの時、やっぱプリンはいいよなぁとか言ってたっけ……もう、ちゃんと聞かないとダメでしょ!ゴロちゃん、めっ!」




 うーむ、先月三十歳になった男が十八歳の娘に「めっ!」されるのは如何なものか。


 悪くない、悪くはないぞ。




「ああ、すまん。でもやっぱプリンじゃなくて、やっぱ不倫は……といったんだ。ミーちゃんのアレを考えてたって事でどうだろうか?」




「どうだろうか?って言われても。それにその言い方だと不倫を肯定してるようになっちゃうし……まぁいいや、じゃあ私が説明するね」






 ミツハが説明してくれたのは、こうだ。


 まずステータスおくれーーっ!!!!!っと心の中で念じる。


 そうすると誰の中にも当然ある心のVR空間に自分の今の状態が投影されるとの事だ。


 もちろんステータス、と念じるだけでもいいそうだが俺は今後も豚に習おうと思っている。




 よし、早速やってみよう。




「ステータスおくれーーっ!!!!!」




「それは不可能だ ほかの願いをいえ」




 隣のミツハがなにか小声で言っているが、俺の心のVR空間には無事ステータスというものが表示された。


 というか何でも知ってるし乗ってくるな、ミツハの奴。




「ふむふむ、おぉ確かにスキルがあるな!確か前世の技能とか過去なんかを参考にするとかなんとか言ってたっけ?」




「確かにそういってた。よく聞いてたね!ゴロちゃんえらいえらい」




 ふ、俺だってやる時はやるのさ、小娘よ!もっと頭を撫でるが良いぞ。




「小むす……じゃなくてミツハはどんなスキルを貰ったんだ? あれか、事務系か?」




「こむすって何なのよ? まぁまた心のVRとやらと会話してたんだろうけど。えっと私は<料理(極)>と<爆裂(極)>だって。んーやっぱりあの時の爆発って……」




 ああ、きっとあの爆発はミツハの仕業だろう。


 ブービートラップでお出迎えとはなかなか粋な事をする子だ。


 でもそんな事はもはやどうだっていい。それより問題なのは……




「りょ……料理が極……だと?解せぬ」




「ん、どうしたの? ちなみにゴロちゃんのスキルは? 予想だと……<狙撃>でしょ。今日もドン喝とかいうゲーム上手かったもんね」




「あ、あぁでも残念ながらそっち方面じゃないみたいだ。でもさすがは俺だな!なんと<推理>だ」




 まぁ推理の後ろに(迷)とついているがこれは特殊なパターンだろう。


 ミツハが嫉妬するといけないからこの事は黙っていたほうがいいはずだ。




「おお、じゃあゴロちゃん一応、前世で推理はしてたんだね!」




「まぁ毎日のようにしていたな。あの子は今日何をするのだろう、とか今日のパンツの色はなにい……」




「ゴロちゃん……?」




 今の俺なら分かる。この笑顔はまずいやつだ。


 まさかこれが<推理>スキルの力か?だとしたらこのスキルはとんでもないな。




「いやっ! 決してサボっていたわけじゃないぞ! たまたま仕事の時間が空いた時に、だなぁ」




「何それ、じゃあいつもって事じゃない。……っていうかあの子って誰なのよ……バカ」




「ん、なんか言ったか?」




「もしかしてゴロちゃんの<推理>ってスキル、性能悪いんじゃないの?」




 おおう、スキルの後ろに余計な一言がついているからか?


 なんでバレるんだ……いやバレてはいないか。心のVR見えてないよな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る