第2話

「青い、月……」


 普段見ている月ではない、青い月がそこには、たしかにあった。


 これは、夢……?


「って、早く家に帰らないと!」


 空を見上げたまま、立ち尽くしていた私はふと我に帰る。


「え、ちょっと待って……」


 時間を確認しようとスマホを見ると、「8月32日」と表示されていた。しかも、時間が写し出されていない。


 今日は8月31日、8月最後の日。

 8月32日なんていう日付は、そもそも存在しない。これは一体どういうこと?


 親に連絡しようにも、スマホが8月32日と表示されたままで、それ以外、何も出来ない。


 私は空を見上げた。

 やはり、まだ青い月のまま。


「あ、れ?」


 視線を戻すと、目の前には青い街灯がいくつも並んでいる。ここの街灯は青い街灯ではないし、数も少ない。だけど、今はかなりの数だ。


 私はそのまま真っ直ぐ歩くことにした。

 まだ、にわかに信じがたい現実が目の前にはあるけれど、恐怖よりも好奇心のほうが強かった。

 多分、このまま歩いたとしても家には着かない気がする。なんとなくそう感じていた。

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