第22話 風雷龍の加護と渉の仕事

 22話(著者:ジオ)/ 風雷龍の加護と渉の仕事


 渉は街のラーメン屋で、チャレンジラーメン1杯3キロを、3杯平らげる刹那、ふと異様な魔法の乱れる気を感じ食べる手を止めた。


『おぉおぉ、えらくおかしくなって来たでぇ、、、歪んで来よるわ、、、』

「こりゃ、、、始まっちまったか??、、、もう1杯は行きたかったんだが、、、」

 サブロウが頭の中でフニャフニャなるイメージを送ってくる。

 ラーメン屋で後1杯とつぶやいたせいで、店員に顰蹙を買い始めた所で、1杯分の料金を払うと店を後にする渉。

 本当は時間内制覇で無料だったのだが、最後のスープをレンゲ一杯ほど残してしまったからには、渉には屈辱だったので、料金を払ったのだ。


『おぃおぃおぃ、アレ、、、ごっつうまずいんとちゃうんか??』

「ああ、非常に、凄く、、、とてつもなくな、、、人格者がまた

 コッチに来ちまうってことだ、、、」

 ひょい と頭に出て来たサブロウが、空を見上げて言う渉も頷く。


『それとなぁ、アレ、、、ちゃうん??、、、塔の、、、』

 フラフラと歩いている小さく朧げな人影を見つめて言うサブロウ。


「ん?、、、ああ、アレだな、今回のサブイベントってトコか、、、」

 その人影を凝視して言う渉。


「嬢ちゃん、、、メーネだろ?、、、塔の、、、」

「貴方は、、、ああ、、、そう言うことね、、、」

 長身を屈めてメーネの目線で聞く渉に、下界の三家と解り旧知の様に言うメーネ。


「参ったね、、、見つけて良かったよ、世界が終わるトコだぜ、、、メーネ、、、」

「そうね、、、私もわかってはいるの、、、でも、、、戻れなくなって、、、どうしていいか、、、」

 側から見たら

 変態が少女に悪さしそうな数分前みたいな格好になっている。


「まあ、アレだ、、、邪魔されてたって、天龍のトコ行けば、、、何とでもなる、、、ついてくるか??」

 ふと立ち上がり、手を差し伸べる渉。

「天龍、、、うん、行く、、、行きます、、、」

 少し光明が見えたメーネは渉のジャンパー裾を握って歩き出す。

 ーそしてーーー


 氷矢は彩を一瞥すると、氷矢はガルフリードと共に走り出そうとすると。


「やっぱり、こんな所に居たのか、探したぜぇ、、、あれあれ、面倒な事になってるねぇ、、、」

 美羽の後ろの路地から石を蹴ってつまらなそうに出てくる渉。


『そんな事言うとる場合かいな、アレとコレのせいで皆(精霊)の力もおかしゅうなっとるんやさかい、早よせにゃ、わては知らんけどな〜』

 サブロウがひょっこりと頭から出て、渉の側に佇む少女をさして言う。


『それとなぁ、何も考えなしに突っ走るのは無謀やて思わへんのかいな、ガルやん、、、』

 猫目をより細めてガルフリードを観るサブロウ


「そんなこと言ったって、コイツは」

 氷矢は立ち止まったまま美羽を見据えていた。

「サ、サブロウ!?、キサマ!!」

 ガルフリードも戦闘態勢を解かずにサブロウを見据える。


「ありゃあ〜、塔の再構築始まっちまったみたいだな、残りの塔も影響受けるぜ、、、あんだけの状態だと、コッチの世界も只事じゃあ済まんなぁ、、、」

 ポケットに手を突っ込んだまま、咥えた爪楊枝をヒョコヒョコ動かし空を指して言う。


「まあ、まだ人格のメーネが消えて無いって事は、、、まだ完全じゃぁ無いって事だからな、まだ少し余裕はあるか、、、」

 顎に手を添えてメーネと空を見る渉。


{もしや、、、そうであったのか、、、}

「え?、、、何か、何か変、、、これ、、、天龍?、、、」

 皆の頭に響く龍の声が終わるや否や、彩とメーネの周りに

 契約の魔法陣よりも輝きを増したモノが溢れ出し解け絡まり

 また魔法陣になりを繰り返し、魔法陣で作られたドームの様に

 辺りに広がって行く。


「おお、流石何万年の御大龍は現状を理解して居るみたいだな、俺も仕事しなきゃいけなくなって来るじゃ無いか、、、」

『ほいで、唐辛子犬は下がっときぃ、跳ね飛ばされるでぇ、でぇこの嬢ちゃんは彩嬢のそばに行きぃな、、、』

「砂糖猫の癖に、甘々なおまえに何が出来るって??、、、も、もしや、、、」

 サブロウとガルフリードが言い合う。

 何も意に介さず、彩の傍に歩み寄り、佇むメーネ。


「貴女が、天之風雷御龍、、、天龍の契約者?、、、」

 微笑みも泣き顔も全てが入り混じった上での真顔で言うメーネ。

 すっと、彩の手を小さな手で握って捕まる様にする。


「何を言っているの? 天龍? こんなもの!、、、全部まとめて燃やしてあげるわ!!!、、、?!」

 美羽は掌を上に向けて突き出すと魂焼却の炎を出そうとする。

 だが、その掌には何も起こらなかった。


「無駄だって、龍結界だぜココは、龍の意に反する精霊魔法は龍のタダの餌にしかならない、知らないのか??、、、それに、、、」

 伊達眼鏡を胸ポケットにしまうと、ゆっくり目を閉じる渉、サブロウも頭から引っ込むと、仁王立ちで両腕を開き何かを掴むように顔の前で印を組む様にする渉。


「あの大穴は、精霊の塔がおかしくなったって事だ、だがね

 ぇ、、、」

『そこに居る嬢ちゃんが消滅してないちゅうことは、塔の管理者があっこには居ないっちゅう事は解りよるな?』

 サブロウは精霊の皆を見渡して言う。


「まだ、理(ことわり)は完全に変わって無いってことだ、、、」

 金眼銀眼になった渉が、皆を見て言う。


「それより、いつまで存在を停止してくっついて見てる? 金狼さんよ?」

 ガルフリードを見て渉が疲れた風に呟く。


「ウチのサブロウと同じで、対であるはずのお前さんが居ないのに俺が気が付かないわけがないよなぁ」

 金眼銀眼になった渉が言うと、ガルフリードが小さく震えた。

 ガルフリードの横に、伏せた格好でバツが悪そうな目で現れる金狼。


「あの時からかぁ?、、、アレを使われた時から、そこで待ってたって訳か、、、」

「え?、、、え??」

「やっぱり、バカで助かる、、、」

 氷矢はガルフリードと金狼と渉を交互に見て口をパクパクするばかり。

 ガルフリードはため息混じりに言うと、すまなそうにしている金狼を穏やかな目で見る。


「まあ、そこの精霊の力(魔法ニクス)を使った日之神の嬢ちゃんが全部知ってるだろうけどなぁ、まあ、ソコは後だ後、、、」

 掌をヒラヒラさせながらゆっくりと、美羽に近づく渉。

 こちらは淡々としてポーカーフェイスな表情で渉と金狼を見る刈谷里香。

「でだ、ジャック・オー・ランタン〜は面倒くさいから、一回ご退場願おうかな、、、」

 そう言うと、美羽の肩に手を置く渉。


[何を、、、する、、、き、さ、ま、、、ま、さか、、、]

 カボチャ顔の精霊が美羽からすっぽ抜けた。


「ええ??、、、ジャック、、、」

 引っ張り出されたジャック・オー・ランタンと渉を見る美羽。


「あー説明面倒くさい、、、塔の管理者がココに居るんで、やり方知ってる俺は簡単に精霊の解除出来るんだわ、、、でも、龍結界で霧散は出来ないけどねぇ〜」

 渉に掴み出されたジャック・オー・ランタンは放置され、ただ浮かんで渉を睨んで居るだけになっている。


「さあて、こっからが俺の本当の仕事だ、、、彩ちゃんにメーネ、、、コッチに、、、」

 渉が手招きすると、彩とメーネは小く頷き歩み寄る。


「繋ぐからな、、、あそこへ、、、」

 二人の肩に手を置くと、渉は顎で空を指し、そして二人を観る。

 世界が揺らいだのか、眩しい光なのか、皆の視界が白く細くなって行く。

 刹那か永遠か龍結界が強く眩しいがはっきりと魔法陣が三人を中心に結界ごと全員その場から消え去る。

 そこには、夕暮れ迫る路地と未だに灯りが安定せずチカチカと周りを光と闇を交互に作っているだけであった。


 ーーーーー

 何万年の一瞬が過ぎた、、、様な感覚が消えると。


 皆が次に目にしたのは、色とりどりの魔法陣で書き換えられて居る最中の塔と言われる所の中だった。


「繋がったな、、、コリャ、、、マズイなぁ、、、」

「こ、ココは!?」

 口を開いたのは渉と彩だった。

 そのほんの数歩先か何キロも先かも分からない、朧げで不安定な場所に立つ二つの影だった。


「後は、メーネと彩と氷矢が何とかしてくれや、俺は残りの塔を繋ぐからな、、、そこの嬢ちゃんは、、、まあ何とかしてくれ、、、」

 言い放つと渉は数歩か何万キロか離れた所に歩いて行こうとする。


「繋ぐって、、、まさか、、、あなたは、、、」

 メーネが渉の背中を見て言う。

 無言で後ろを見ずに掌をヒラヒラさせている渉。


『そうや、そのまさかや、嬢ちゃん達、あんじょうやっとくなはれや〜!?、あんじょう行くかは、まあ、知らんけどな〜、、、』

「こ、これ、これを、、、どうしろと、、、」

 渉の頭からひょっこり出てサブロウが言うと、ガルフリードがサブロウを見て狼狽しきって言う。


『あんじょう、ピリッとカラメでのぉー、頼んまっせ〜唐辛子の旦那ぁ〜あ〜金色さんもなぁ〜、ほなな〜』

 意地悪そうな言いぶりで言い放つと、スッと渉の体に引っ込むサブロウ。

「砂糖猫がぁぁ、、、ふぅ、、、」

 牙をむいて歯噛みするガルフリードは未だに伏せてすまなそうな眼差しを向ける金狼は、拍子抜けしたのか金狼の横で犬座りしてしまう。


「れ、蓮??」

 意味不明な会話を尻目に、彩や氷矢達は二つの影に目を凝らす。

 美羽は二つの影を見て、片方をそう呼んだ。


「あ、あっちは、、、り、、、鈴、、、?!?!」

 もう一つの影も分かった美羽は声を上げる。


「どうして、あの、、、あの二人が、、、こんな所に、、、」

 美羽は動揺を隠しもせず、二人を交互に見るばかりだった。


「さて、どうしようか、、、魔法は使えるみたいだな、、、」

 氷矢は、氷の結晶を手に具現させて確認している。


「あ、あれ? 天龍さんは、、、」

 彩は周りを覆っていた魔法陣が消えて居ることに今更気がつく。

{少し時間をくれ、、、繋ぐのに力を出し過ぎた、、、}

 天之風雷御龍は低く響く声で彩の頭で言う。


「どの位??」

 彩はキョロキョロしながら、声に出してしまう。

{腹が減った、、、贄を、、、}

 天之風雷御龍は低くちょっと情けなさそうな感じで伝えて来る。


「渉さんに言われた通り、持ってきてて良かった、、、前は急いでて忘れてたし、、、」

{贄か?、、、}

 彩はウエストポーチから数本の高カロリー携帯食を取り出すと、みるみる口に放り込み、高カロリーゼリー飲料数本で流し込むと、

 再び数本の携帯食を空気の様に平らげる。

 単純計算で5000キロカロリーは越える勢いだ。


{うむ、、、よかろう、、、}

「ちょっと多かった、、、かな、、、」

{まだまだだがな、、、}

「ふ、太っちゃう、、、」

{大丈夫だ、全て龍力で消えていく、、、足らぬ位だ、、、}

「ダイエットしてたのに、、、」

「何やってるんだよ、、、ロリ先輩、、、行くぞ、、、」

「誰が、ロリ先輩ぢゃぁぁ!!」

 異空間でゼロ距離ドロップキックを喰らわせる彩。

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