第18話 狂気の理由
18話 狂気の理由(著者/ミステス)
俺が魔法使いになったのは、16歳の時だった。
でも俺は別に魔法使いの家の人間じゃない。普通の家の人間だ。
じゃあなぜ魔法を知ったのかだって?
簡単だ、単純に魔法を見たからだ。
普通の人間には魔法を見ることはできないらしいが、俺は生まれつきそういう能力があったらしい。
初めて魔法の存在を知った時はとても驚いたがとても興奮したのを覚えている。
中二病、とまではいかないがそういったものに憧れがある年頃だったからだ。
魔法のことを知った俺は魔法について調べた。調べるといっても当時の俺が頼れる情報なんてネットか本くらいのものだったが
それでも不思議といくつか魔法のことを知ることができた。
魔法を使うには精霊との契約が必要だということ。精霊と契約するためには召喚魔法たるものを使わなければならないこと。
俺は魔法のことに夢中で、精霊を呼び出す準備を始めた。その方法も調べてあったからだ。
俺は魔法の才能は結構あったらしく、召喚魔法には無事成功した。
「あなたが私を呼び出したのですか?」
「ああ、君が精霊なのか?」
俺は興奮を抑えきれずに尋ねる。
「はい。私は風の精霊エアリアル。あなたの魔法により呼び出されました」
「俺と契約してくれるか?」
「いいでしょう。あなたの魔力はとても心地いい」
「よっしゃ!」
俺は無邪気にガッツポーズをとり、風の精霊エアリアルと契約をした。
エアリアルは風の精霊だから、風を使った魔法が使える。
俺は風に乗って空を飛んでみたり、空気の刃を出したりした。
楽しかった。文字通り自分には特別な力があるということがとにかく嬉しかった。
でもそれも長くは続かなかった。
魔法使いの知り合いがいない俺は、魔法のことを人に話すこともできず家族にももちろん秘密にしていた。
そして高校を卒業するころには、魔法はほとんど使わなくなった。前はとても嬉しかった特別な力が、今は人にばれないようにしなければならないため煩わしくなってきた。
俺自身がそういった特別な力への憧れがなくなってしまったせいもあるだろう。
そして…
「ごめんな…エア…」
俺はエアリアルとの契約を破棄することにした。エアリアルもこんな俺と契約するよりも、もっと他の魔法使いのと契約したほうがいいと思ったからだ。
「そうですか…それは残念ですね…あなたと一緒にいるのはとても楽しかったのですが…」
エアはそういって理由も聞かずに了承してくれた。エアには俺の心情がわかっていたのかもしれない。
「ですが、私はほかの魔法使いと契約するつもりはありません。もし私の力が必要になったらまたいつでも呼んでください」
そういってエアリアルと俺は契約を破棄した。
「さようなら。トオル…」
「いままでありがとう。エア…」
それからの俺はただ平凡に生きていた。
適当な大学に入学して適当に卒業して適当にバイトして。
ただ目標もなく流れていく日々。
それは平和だったけど退屈な日々だった。
だが人生なんてそんなもんだろうと思い、ただただ日々を生きていた。
俺が彼女に出会ったのは、そんな時だった。
俺が住んでいたマンションの玄関の前に、一人の女の子が倒れていたのだ。
雨が降っていたというのに傘もさしていなかったようでずぶ濡れの状態だった。
普通ならそこで救急車を呼ぶなり助けを呼ぶなりするのだろう。
だが彼女からは久しく感じていなかった力を感じた。
そう、魔法の力だ。
そして俺は彼女の顔を見た。
気を失っていたが、ひどく悲しそうな顔をしていた。
そして俺は何を思ったのか女の子を自分の部屋へ連れていった。
一目惚れだったのだろう。
今まで灰色だった自分の人生に色がついて言ったような気がした。
彼女のために何かしたいと思った。
そして目覚めた彼女はやっぱり魔法使いだった。
俺は彼女が使う魔法に目を輝かせていた。
あの初めて魔法の存在を知った時のような気持ちだった。
魔法使いに出会えたことがなぜか無性に嬉しかったのだ。
ほどなくして彼女が自分のことについて話してくれた。
魔法使いの家に生まれたが自分の力は誰にも認められず落ちこぼれ扱いで、弟ばかり評価している家に嫌気がさして、弟の恋人を傷つけて、家を飛び出してきたと。
普通なら許されることのない悪行だろう。
だけど俺はなぜか彼女の気持ちがわかる気がしたのだ。
それとも、俺はすでにこのころからすこしおかしかったのかもしれない。
俺は彼女に協力することにした。
キモイといわれようとも、彼女の役に立ちたかったのだ。
そしてまた魔法を使うために以前使った召喚魔法を使った。
「お久しぶりですね…トオル」
「エア…勝手ですまないが、また力を貸してくれるか?」
「言ったはずです。私の力が必要になったら、いつでも呼んでくださいと」
「ありがとう…エア」
こうして俺はエアともう一度契約をして魔法使いに戻った。
まあ協力するといっても、俺には衣食住を提供するぐらいしかできなかったが。
そしてある時、とある精霊と出会った。
はぐれ精霊で名前をルーというらしい。
光の精霊で姿を消すことができるという。
俺はルーとも契約した。
普通は2つの精霊と契約することは二重契約と呼ばれ、あまりできることではないみたいだが。俺にはできた。どうやら俺にはなかなか魔法の才能が有るらしい。
その力のおかげもあって、美羽を助けることもできた。
気が付けば美羽とであってから1年以上が経過していた。
今では憎まれ口をたたかれながらも。俺のことを好いてくれていると思う。
これからも俺は彼女の家族として、彼女のために生きていこうと思っていた。
だが…
俺はルーと契約してから数日後、おかしな夢を見た。
かなり昔の夢なのだろう。
魔法使いの少年と、少女がでてきた。
多分少年は少女に好意をもっていて、自分の魔法を誇らしげに彼女に見せていた。
だが時がたち、少年たちが住んでいる村に異変が起きたのだ。
空に大きな穴のようなものが空いたのだ。
それを大人たちは神の祟りだと恐れ、神の怒りを鎮めるための生贄を用意するといいだした。
その生贄に選ばれたのが、少年が好意をもっていた少女だったのだ。
しかたがないとすべてを受け入れる少女に少年は必死に説得した。一緒に村を出て逃げようとも言った。だが少女は頑なに首を縦に振ることはなかった。
生贄をささげる儀式までの間、少年は何か方法はないかと必死にさがした。だがその甲斐なく少女は生贄にされてしまった。
その後、少年はすべてを恨み、憎しみ、自ら命を絶った。そしてその魂は不思議な場所にたどり着き、一人の少女と出会う。そしてその少女こそ姿は変わっているが自分が好きだった生贄にされた少女「紗々」だった。魂となった少年に意識はなかったが、そのことだけは理解した。そしてその後はぐれの精霊となり世界を彷徨うこととなる。
そんな夢を俺は毎日毎日みた。
自分が自分でなくなっていく感じがした。
俺はあんなに大切だった美羽への想いを忘れ、夢の中の少女、紗々のことを考えるようになった。
それからのことはもう覚えていない。
俺は自分の意志がなくなってしまった。
「だれか、たすけてほしい…」
かすかに残る意識で呟いたその声は、誰にも届くことはなかった。
―
「とりあえず家に戻ってきたけど…」
僕たちは家に戻ってきていた。武道館にはもう魔力の気配がなく炎も消えていたからだ。
「そして、これからどうするのよ?」
メーネが僕にそう尋ねてくる。
「手がかりがないんじゃ今は動けないよ。氷矢とも連絡がつかないし」
「でもそんなこと言っている場合じゃ…」
「だからとりあえず僕はもう一度精霊の塔にいってみるよ」
僕はそう答えた。
「あなた正気?ただでさえ行くことが危険な精霊の塔なのに、今は異常をきたしてなにが起きるかわからないのよ?」
「ダメだよ!蓮」
サラが必死に僕を止める。
「こっちでできることがない以上、一度塔の様子を見に行くべきだと思うんだ、それに…」
「燃やされた魂は精霊の塔に集まっているんでしょ?なら鈴のことも心配だよ…むしろそっちが本音かな、あはは」
すこし僕はおどけてそう言う。
「あなた、精霊チェスの時も思ったけど、本当にその子のことを大切に思っているのね…あなたがそこまでする人間のことに少し興味があるわ、よかったら聞かせてくれない?」
メーネがそんなことを聞いてきた。
「え?でもいまはそんな場合じゃ…」
「いいからきかせなさい、坂上鈴という存在のことがわかればもしかしたら何か手がかりになるかもしれない」
「そうなの?」
「そうよ」
メーネにそう言われてしまっては仕方がないな…
「鈴と出会ったのはまだ僕が小さいころだった…」
僕は鈴との思い出を語り始める。
―数年前
僕は魔法使いの家、姫神家に生まれた。
幼いころから魔法についていろいろと勉強していた。
魔法の勉強はとても楽しくて、ほかのことはあまりしない子供だった。
小学校には通っていたが、そのころから魔法の研究ばかりしていたのであまり人と接することがなく、親しい友達と呼べる人がいなかった。
ある時、学校帰りに公園で一人泣いている女の子を見つけた。
僕はその子のことが気になって声をかけた。
「どうして泣いているの?」
僕がそう尋ねると
「パパとママが…遠くに行っちゃったの…」
その声は本当に悲しそうで、きいてるととてもつらい気持ちになった。
僕はなんとか彼女を励ましたかったが、これまで人と深くかかわってこなかった僕にはその方法がわからなかった。
「これ、使って」
僕にできることは、涙をふくためのハンカチを差し出すことぐらいだった。
「ありがとう…」
彼女はそういうと涙を拭いた。
そしていくらかの時が流れた。
「ねぇ、帰らないの?」
すると彼女が声をだした。
「今の君を、一人にしないほうがいいと思って…」
我ながらもっと気の利いた言葉はないのかと思った。
それでも彼女は少し笑って。
「君、優しいんだね」
そういった。
「ハンカチありがとう。私そろそろ帰るね」
「うん、それじゃあ」
僕も帰ろうとすると。
「君、名前は?」
「僕は、姫神蓮…」
「れん君だね。私は坂上鈴。私は明日もここにいるから、また会えると嬉しいな」
そういって女の子、坂上鈴さんは帰っていった。
それが、僕と鈴の出会いだった。
その夜。なんとか彼女を励ます方法を考えた。
口下手な僕が彼女を励ます方法…
やっぱり魔法しかなかった。
彼女を笑顔にする魔法…
僕は一晩中その魔法を考えた。
次の日、公園に行くと坂上さんはやっぱり悲しそうな顔でブランコにのっていた。
「坂上さん」
僕は坂上さんに声をかけた。
「れん君。本当に来てくれたんだね」
坂上さんは少しだけ笑顔になるが少し無理をしている感じがする。
「うん…」
そしてまた沈黙の時間が流れる。
「ごめんね」
ふと僕がそう呟く。
「え?」
坂上さんは不思議そうに僕を見た。
「なにかもっと気の利いたことが言えたらいいんだけど。僕、人と話すのが苦手なんだ…」
申し訳なさそうに僕が言うと。
「ううん。こうしてそばにいてくれるだけで私はすごく嬉しいよ…一人でいるといろいろ考えちゃうから…人と話すのが苦手なのに昨日は声をかけてくれたんだね。れん君って本当に優しいんだね」
「坂上さん…」
「あ、私のことは鈴って呼んで?あんまり苗字でよばれるの慣れてないんだ」
「え?じゃあ鈴…さん」
「呼び捨てでいいよ」
「鈴…」
「うん。あ、そろそろ時間だね。またねれん君」
「うん。またね」
そういうと坂上さん…鈴は踵を返した。
それから放課後は公園で鈴と過ごすことが多くなった。
鈴は相変わらず元気がなさそうだけど、僕に会うと少しだけ笑ってくれた。
そして…
「今日は鈴に見せたいものがあるんだ」
僕は鈴にそういった。
鈴を笑顔にできるかもしれない魔法が今日完成したのだ。
「見せたいもの?」
「うんちょっと待っててね」
僕は鈴に魔法を見ることができるようになる魔法をかける。
そして…
パアン!
もう薄暗くなった冬の夕方の公園に小さい花火が打ちあがった。
僕が魔法で作った花火だ。火の魔法を応用したもので普通の人には見ることができない。
こんな季節に花火なんてどうかと思ったが僕にはこれくらいしか思いつかなかったのだ。
「わあ…!」
それでも鈴は夢中になって見てくれていた。
「すごい!すごいよ!れん君。いったいどうやって…」
「その、うちが花火を作ってる仕事をしてるから、小さいのをもらってきたんだよ…」
僕は苦しい言い訳をしたが彼女はあまり気にしていなかった。
「れん君。すごくきれいだよ。ありがとう」
その日みた彼女の笑顔は、今までの少し無理をした感じではなく、本心から笑ってくれていたと思う。
「れん君は、魔法使いみたいだね。私に笑顔をくれる魔法使いだよ」
彼女は笑顔でそういった。
それから彼女は少しずつ元気を取り戻していった。
放課後以外も一緒に遊ぶことも多くなった。
「れん君、もしよかったら私の家に来ない?」
ある時鈴の家に誘われたことがあった。
「いいの?」
「うん。れん君さえよければ来てほしいな」
「わかった。じゃあお邪魔するよ」
そのころの僕は。鈴を通して少しずつ人と話すのにも慣れてきていた。
「お邪魔します」
僕は鈴の家に入った。
すると
「君が姫神蓮君だね」
大人の男の人が僕に話しかけてきた。
「初めまして、今は鈴の従兄弟で保護者代わりの岡村以蔵です。鈴がお世話になってるみたいだね」
「いえ、鈴さんとはお友達ですから」
「そうか…」
「れん君。いらっしゃい」
鈴が玄関まで走ってくる。
「ああ鈴、お前の愛しの蓮君が来てくれたみたいだぞ」
以蔵さんはからかうように鈴にそう言った。
「ちょっと以蔵さん!れん君の前で恥ずかしいこと言わないで!」
鈴は真っ赤になって以蔵さんをぽかぽかと叩く。かわいいな。
「鈴、ちょっと私は蓮君と話したいことがあるからちょっと待っててくれ」
「えーなんで?」
鈴はすこし不満そうだ。
「なに、すぐに済ませるからちょっと蓮君を貸してくれ。なっ」
「もうわかったよ。あ、れん君にさっきみたいに変なこと言わないでよね」
「はは、わかってるよ」
そういって鈴は奥の部屋へいった。
「あの、僕に話とは?」
「ああ、すまない。そんなにたいしたことじゃないんだ」
以蔵さんはそう切り出すと
「蓮君。改めて本当にありがとう。あの子を、鈴を救ってくれて」
「え?どういうことですか?」
鈴を救う?
「言葉通りだよ。あの子の両親のことは知っているね?」
「はい…」
「二人とも重い病気でね…もう助からないことはわかっていたんだ…そして奇しくも二人同時に旅立ってしまったよ…」
「…」
辛そうに語る以蔵さんに僕は何も答えることはできなかった。
「それからのあの子は本当にひどいものだった。誰にも会いたくないといっていつも近くの公園で泣いていたんだ」
「このままではあの子の精神が壊れてしまうかとも思って、なんとかしなくてはいけないと思っていたが私にはどうすることもできなかった…」
「それがある日、いつもより少し元気そうに鈴が返ってきてね。公園で男の子が励ましてくれたと言っていた」
「それから毎日、男の子が会いに来てくれるようになったといって、鈴は少しずつ元気を取り戻していったよ」
「それからしばらくして、とてもうれしそうに、両親が死んでからは見せたことのないような笑顔で君のことを話してくれたよ。れん君は魔法使いだってね」
「今ではすっかり元気を取り戻してくれた。全部君のおかげだ。本当に有難う」
そういって以蔵さんは深く頭をさげた。
「頭を上げてください。僕はたいしたことはしていないです。僕は口下手なのでもっと鈴さんをうまく励ましてあげられたらと思っていました。それに、僕も鈴さんと一緒にいることが楽しかったですから。鈴さんの笑顔を見たかったんです」
「蓮君。これからも鈴と仲良くしてやってくれ」
「もちろんです」
「以蔵さーん、れんくーん。まだー」
部屋の向こうから鈴の声が聞こえてくる。
「おっと、そろそろ鈴が待ちくたびれているね。行こうか蓮君」
「はい」
そういって僕と以蔵さんは鈴のもとへ向かった。
それからも僕と鈴はいつも一緒に過ごしてきた。
同じ中学に通い、毎日一緒に帰っていた。
そんな僕たちがお互い惹かれあっていくのに時間はかからなかった。
ある日、鈴を僕の家に呼んだ時のことだ。
僕は魔法の研究を集中するため、すでに中学から一人暮らしをしていた。
でも、彼女が家に来ることが嬉しくて、僕は一つミスを犯してしまった。
彼女が家にいる間に、研究中だった魔法が暴発してしまったのだ。
僕はサラと一緒に魔法を止めることはできたが、鈴に魔法のことがばれてしまった。
魔法使い以外が魔法の存在を知ることはいいことではない。
なにか事件に巻き込まれてしまうことがあるからだ。
でも鈴にそのことを知られてしまった。
「れん君?今のって…」
「ごめん、鈴…今まで黙ってて」
僕はいけないとはわかっていたのに鈴に魔法のことを話してしまった。もう鈴に隠し事はしたくなかったからだ。それほどまでに僕にとって鈴は大切な存在になっていた。
でも僕は怖かった。このことを知って鈴が僕から離れて行ってしまうかもしれないと思ったから。でもそのほうがいいのかもしれない。魔法使いなんかと関わらないほうが鈴のためかもしれない。
「そうだったんだ…」
鈴は一通り僕の話をきいたあと、そう呟いた。
「黙っててごめん…気味悪いよね…こんな普通じゃないもの」
うつむきながら僕はそう自嘲気味にそういった。すると…
ふと体が温かさに包まれた。
鈴が僕に抱き着いていた。
「ちょっと…鈴!」
「ばかだなあれん君は、たとえどんなだって。れん君はれん君だよ。私がれん君のこと、気味悪いなんて思うわけないじゃない」
「鈴…」
「それにね…れん君が何か特別だってことはなんとなくわかってたよ。覚えてる?あの時の花火。あれも、魔法だったんだよね。あの時は気にしてなかったけど、普通はあんなことできないもん」
「うん。君を笑顔にするために考えた魔法だよ…今思えばあの季節に花火はないと思うけどね」
「私、あの時すごい嬉しかったんだよ。本当に本当に嬉しかった…」
鈴は少し涙を流しながら。
「魔法のことはよくわからないけど。そんなの関係ないよ。私は、私を笑顔にしてくれるそんな優しいれん君のことが…」
「僕も…その明るくて眩しい向日葵のような笑顔の君が…」
そういって僕たちはどちらかともなく唇を重ねた。
こうして僕たちは恋人同士になった。
―
「こんな…感じかな…」
僕はめちゃめちゃ照れながら話を終えた。
「なるほどね。あなたたちは本当にお互い愛し合っているのね」
「う…まあ、そう…かな」
「とういうわけだから、僕は塔に行ってくるよ、じゃあね」
僕は逃げるように自分に魔法をかけて精霊の塔へ向かった。
「おかしい…」
精霊の塔は普段と同じ様子だった。
メーネが下界に落ち、異常をきたしているはずの精霊の塔が僕が3度目までに訪れた様子と同じだった。
僕は不思議に思いながらも、前にメーネがいたところに向かった。
「え?」
メーネがいたところに人影があった。今メーネは下界にいるはずなのにいったい誰が?
「!?」
そして僕はそこで驚くべき人に会った。
「なんで?どうして?」
今僕が一番会いたい人がそこに立っていた。
「り……ん」
「侵入者を確認。排除行動を開始します」
鈴はそういうと僕に衝撃破を飛ばしてくる。
「ぐっ!」
この世界から追い出されそうになるが。なんとか意識を保つ。
「鈴!僕だよ。鈴!」
僕は鈴に必死に声をかける。
すると…
「れん…君?れん君!」
「鈴!」
「れん君…助けて…怖いよ…わたしがわたしじゃなくなっちゃう!」
鈴の悲痛な叫びが僕の心に響く。
「鈴!う…」
ついに限界を迎え僕は意識を失った。
「鈴!」
「うわっ!どうしたの?ずいぶん早かったわね」
「蓮。今回も無事だったんだね」
メーネとサラが目覚めた僕にそう言った。
「はあ…はあ…」
「蓮?大丈夫?すごい汗だけど」
「すまないけどサラ…いつものように水を一杯くれないかい?」
「うん、わかった」
サラは水を取りに行った。
「いったい塔で何がったの?」
「はい、お水」
「ありがとうサラ」
僕は水を一気に煽ると少しだけ落ち着いてきた。
僕は精霊の塔で起きている出来事を二人に話した。
「なるほど…じゃあ私がいなくなったことで新しい贄が選ばれた。それが坂上鈴ということなのね」
メーネがそういった。
「どうすれば…どうしたら鈴を助けられるの!」
僕はメーネに詰め寄った。
「落ち着きなさい。でも早すぎる。新たな贄が選ばれるまでは結構な時間がかかったはずよ。私の時はそうだった。そしてまだ、坂上鈴本来の人格が残っている。まだ助ける方法はあるかもしれないわ」
メーネはそう言った。
「とにかくもう一度武道館に行こう。じっとしてるよりはそのほうがいいと思う」
僕たちはもう一度武道館に向かった。
そして武道館についたその時、
一人の魔法使いが一般人と対峙していた。
あれは…
「以蔵さん!?」
魔法使いは、一般人…以蔵さんにいきなり襲い掛かった。
「くっ!」
僕は炎雷でスピードを上げて以蔵さんを庇い、魔法使いの攻撃を防ぐ。
「蓮君!?」
以蔵さんが驚いた声を出しているが話はあとだ。
「以蔵さん!逃げてください!」
「蓮君。これは一体…」
「いいから早く!話はあとで!」
「あ、ああ。」
以蔵さんは普通ではないと思ったのか下がってくれた。
「ああああああああああああああ」
魔法使いがの攻撃が僕を襲う。
炎雷のおかげでよけるのはたやすいが、この人は一体…
「蓮!」
メーネが僕に向かって叫ぶ。
「そいつよ!精霊の塔への道を閉ざした術者は!」
「本当かい?メーネ」
「間違いないわこいつの魔力が、精霊の塔から感じる」
「メーネ?ああ、僕に会いに来てくれたんだね!メーネ…いや、紗々!」
魔法使いはメーネに向かい走り出した。
「逃げて!メーネ!」
僕はメーネにそう叫んだ。
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